悪戯は程々に-二-
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真司は、お店の外の入口の隅にある蛇口を捻りバケツに水を入れる。そこそこ水が溜まると店の中に入りバケツを床に置き「うーん」と、唸り腕を組んで考え始めた。
「まず、どこから掃除をしようかな?」
辺りを一通り見回す真司は、とりあえず端から掃除をしよう!と決め、早速行動に出る。まずはハタキで全体的に埃を落とし、大きな壺や置物などを雑巾で丁寧に慎重に拭いていく。
骨董屋なだけあって、中には年代物なのも置いてある。値札は付いていないが、きっと高いに違いない。それを落とさないように、傷がつないように掃除をするには、意外と根性がいるんだな……と、真司は内心思った。
半分近くまで来ると、額に薄らと汗が浮かんでいた。
真司は汗を腕で拭うと「ふぅ」と、息を吐いた。
「普通の掃除よりも大変だなぁ。古い物が多いから落としてしまいそうで怖いし……」
すると、後ろの方からバシャッと何かが溢れる音がした。
「え? ……あ、あぁっ!!」
後ろを振り返ると、真司はその光景に唖然となった。
なにせ、水が入っていたバケツが倒れていたのだから。
「なっ……?! ど、どうして?! いやいや! そうじゃないよ!! あー、もう……床が水浸しだよぉ……」
ガクリと項垂れる真司。倒れた原因は兎も角、真司は水浸しになった床を先に綺麗にする事にした。
せっせっと雑巾で床を綺麗にする。水を吸い取っては絞ってバケツに入れ、また吸い取ってはバケツに入れ……それの繰り返しだった。
後少しで終わるというところまで来ると、再び目を離した隙にバシャッと背後で音がした。
「ま、まさか……」と呟きながら恐る恐る後ろを振り返る。それは、予想していた通りだった。
地道に雑巾で吸い取りバケツに溜めた水は、再び床の上だったのだ。
「……………」
今度は四つん這いになり無言のまま項垂れたのだった。