小さな宴-壱-
辺りは暗闇だけだった。そんな中、一人の少女と年配のお爺さんが胡座をかいて座り話しをしていた。
少女の方は少しイライラしている。
「全く、あ奴は来るのが遅い!! いつまで待たせる気なのじゃ!」
プンスカと怒る少女。
立っていたら、今頃は地団駄を踏んでいるだろう。それぐらいイライラしている様子だった。
そして、その隣にいる白髪のお爺さんはそんな少女を宥めていた。
「まぁまぁ、少し落ち着いたらどうですか?」
「ふんっ! これでも落ち着いとる! 全く、今年は例年よりも参拝者が多くて嫌気がさすというやつじゃ!」
「参拝者が多いのは、良い事じゃありませんか」
「何が良い事じゃ。こんな時だけ参拝しに来おって……! 全く、呆れて声も出んわ!」
少女は「はぁ……」と溜息を吐いた。
「それも人間というものですよ。それでも、我々は人を恋しく思う。神の性というやつですねぇ」
「……ふん!」
「そういえば、先程は何処に行かれていたのですか?」
スッカリご機嫌斜めの少女は、お爺さんと目を合わす。
「あぁ……。いやな、菖蒲に似た気配を感じたのでの、直接見に行っていたのじゃ」
「ほぉ」
お爺さんは興味深そうに返事をすると、白く伸びているあごひげを撫でる。少女はそんなお爺さんに話を続けた。
「そこで、面白いものを見つけたぞ」
「と、言いますと?」
「菖蒲の事を知っておる人間を見つけたのじゃ!」
「ほぉ~。それはそれは」
少女は「むふふっ」と、含みのある笑い方をする。案の定、口元はむふむふと動いていた。
「最近はつまらない事だらけじゃったが、面白い人間も中にはいるものよのぉ~。むふふふふっ」
「…………」
目を猫のように細め、むふっと笑う少女の姿にお爺さんはなにかを察した。
(これは……また、変な事を考えているやもしれぬなぁ……)
お爺さんは白い顎髭をまた撫でる。少女の大きな瞳には、意気揚揚とした表情が読み取れた。
お爺さんは楽しそうにしている少女を見て思う。『事は、近々動くだろう』と。
何せ、この少女は面白いものをや気に入ったものには直ぐ目をつけ、即行動を起こす困ったさんだからだ。
(これは何やら嵐が来そうだねぇ)