大晦日の大行事-五-
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「それで、白雪さん達は商店街に何か用事ですか?」
真司が白雪に問うと、白雪はニッコリと微笑んだ。
「はい。今晩と明日の材料を」
「あ、もしかして買い物の途中だったとかですか?」
手ぶらな白雪とお雪を見て、買い物途中だと真司は思った。しかし、白雪は首を横に振る。
「いいえ。お買い物は終わりました」
「え、でも荷物は?」
「あまりにも量が多いので、宅配をしてもらっているんです」
「へぇ〜。宅配できるんですね」
(って、そんなに多いのかな?)
そう思った真司は白雪に尋ねる。
「そんなに量が多いんですか?」
白雪は、またニッコリと微笑む。
「はい。何せ、百鬼夜行が行われますから」
「え?! ひ、百鬼夜行?!」
突拍子もない台詞に真司は驚くと、口をあんぐりと開けた。
真司の様子に勇が真司を見上げ首を傾げた。
「そんな驚くことか?」
「そりゃぁ、驚くよ! だっ、だって、百鬼夜行って妖怪の群れでしょ?!」
「ふふっ。そんなに驚かれるなんて、何だか新鮮だわぁ」
「……お兄ちゃん……人間だから」
頬に手を当てまったりとする白雪と小さく頷いた。
白雪は「ふふっ」と、笑うと話を続けた。
「毎年、この時期なると百鬼夜行という名のお祭り騒ぎをするんです。年の最後を向かえますから、やはり、皆集まって年を越したいのです」
「あのねー、ご飯もすっごーく豪華なんだよ!」
「皆……それぞれ作るから……和洋折衷に……なる」
「へぇ~」
真司が頷いていると、白雪が当然のように「真司さんも参加なされますよね?」と、真司に尋ねた。
「え?! でも、僕は人間ですし――」
「かんけいなーい♪」
「……ん」
「せやせや。真司はもう、この商店街の仲間や!」
真司の言葉を遮るようにお雪が元気よく言い、星も勇も頷いた。
「みんなの言うとおりです」
「…………」
白雪達の言葉に、自分のことを認めてもらえたみたいで真司は少し嬉しく思い、またその反面気恥しくなり頬を掻いた。
「お? なんや、なんや。照れてるんか?」
「なっ!ち、違……わなくはないけど……」
勇に図星をつかれた真司は反論しようとするが、勇の言うことは事実なので否定しようにもできなかった。
「ふふっ」
「お兄ちゃんかわいー♪」
「……ん」
白雪たちの言葉に真司の耳がほんのり赤くなる。
「菖蒲様もきっと同じ事を言うと思いますよ? 参加しないかって」
「言うやろなぁ~。何せ、菖蒲様のお気に入りやからなぁ」
「ええ?!」
「お気に入り♪ お気に入り♪」
「そ、そんな事ないよ!!」
「あらあら、ふふふ」
すっかり顔まで赤くなった真司を見て白雪はクスクスと笑ったのだった。




