大晦日の大行事-四-
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「それにしても、相変わらずこの時期になると祭りみたいやなぁ~」
「……いつもより……賑やか」
「凄いよね。提灯とか飾っているし」
二人と一匹は商店街の表通りを歩き、見渡しながら言った。
「今日、明日はヤバイぐらい祭り騒ぎになーーーっ!?」
突然、言葉が詰まり何かに対して身構える勇に真司は首を傾げる。
「どうしたのかな?」
「……わからない」
真司と星が話す中、勇は立ち止まはら、ブワッと尻尾の毛を逆立てた。
「な、なんや……ごっつう、嫌な予感がする!」
「「??」」
星と真司は同時に首を傾げる。すると、真司達の後ろからバタバタと走る音が聞こえてきた。
真司達は、その音と共に振り返る。
「ねーこーーーぉ!! いっさみーー♪」
そんな声が聞こたと思ったら、それは風のように現れてはあっという間に勇を抱きしめた。
「にゃぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「ねこねこねこーー♪ 勇、勇~♪」
真司は、あまりの素早さに何が起きたかわからず目を瞬きする。
「えっと……お雪ちゃん?」
お雪は勇をムギュムギュとグリグリとしながら真司を見る。どうやら、真司がいることに今気づいたらしい。
「あ、お兄ちゃん! 星くんもいるー♪」
「にゃ……だ、だずげ………ガクッ」
「あ!」
「……ご臨終」
勇が泡を吹きながら力無く崩れていると、今度は遠くの方からこちらに向かってお雪の名前を呼んでいる声が聞こえてきた。
「雪芽ー」
「あの声は、白雪さん?」
真司がそう言うと、息を切らし小走りで走ってきた白雪が商店街の人混み基、妖怪混みからやって来た。
白雪は手を膝につき、息を整える。
「はぁ、はぁ。きっ、急に走って行くから……何事かと……もう……」
「あの……白雪さん、大丈夫ですか?」
白雪は顔を上げる。余程疲れたのか、白雪の顔色が少し青くなっていた。
「……あら? 真司さん、こんにちは」
「あ、はい。こんにちは。……じゃなくて、大丈夫ですか? すごく顔が青いですけど」
「えぇ、何とか。運動は少々苦手でして――って、雪芽?! その腕の中で気絶しているの、勇さんじゃっ!!」
「そだよ~♪」
すると白雪の顔は更に真っ青になり、慌ててお雪から勇を取り上げた。
「も、もうっ! あれほど、強く抱き締めちゃダメって言っているでしょう?! あぁっ、勇さんっ! 生きていますかっ?!」
勇を抱き上げる白雪は、ユサユサと勇を揺さぶる。
「う、うーん……」
「勇さん、しっかりしてください! 勇さーん!!」
更に強く揺さぶる白雪。気を失っていた勇は目を覚ますが、白雪は勇が目を覚ましたことに気づかなかった。
目を覚ましても、まだ揺さぶられる勇の顔が段々青くなる。
「う、うぷ……酔うから、や、止めて……」
「え? あっ!」
白雪ハッとし、勇が起きたことに気がつくとパッと手を離した。
「す、すみませんっ!」
「ぎにゃっ!」
白雪が手を離し、顔面から勇が落下する。真司はそんな勇を見て思わず苦笑した。
「……痛そう」
「あらら~」
星とお雪がそう言うと、白雪はまた慌てて勇を抱き上げる。
「あぁ! す、すみませんっ! 私ったら!!」
「お、起きてるから、も、もう許して……下ろしてぇ……!」
白雪は、シュンとしながら勇をそっと地面に下ろす。
「す、すみません……」
白雪が謝ると勇は白雪から少し距離を置き、「な、なんちゅう恐ろしい姉妹や……。とりあえず、酒が無事でよっかった……」と、涙目になりながらボソリと呟く。
それをたまたま聞こえていた真司は内心「確かに似ているし、姉妹っていうのも頷けるかも」と、思ったのだった。
それが少しおかしく思いクスクスと笑っていると、真司は勇に猫パンチをお見舞いされた。
「おい、何、笑ってるねん! こっちは大変なんやぞ!」
「あ、ごめんなさい」
一応謝るが、それでもどこか可笑しく思い笑いが止まらない真司だった。




