大晦日の大行事-参-
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『さすが菖蒲だ』と、言うべきだろうか? 真司は菖蒲の店に向かう度に、妖怪達から声をかけられ色々な物を貰っていた。
「あら? あんた、菖蒲様のところの人間じゃないか。菖蒲様には色々お世話になっているし、今日はめでたい日やから、これ持って行き」
「おーい! お前、菖蒲様の坊やろう? これ持っていけ。菖蒲様に宜しく言うといてや~」
などなどなことを言う妖怪に真司は色々な物をお裾分けしてもらい、今では真司の両手が塞がる状態になっていた。
そんな真司を見て勇が深く頷く。
「いや~、モテモテやな!」
「菖蒲さんがね……」
「いやいや、真司もモテモテやと俺は思うぞ!」
「そう言われましても……でも……さすがにこの量はちょっと重いかも……。よいしょっと」
真司がそう言うと、勇が何かに気づき勇の足がピタリと止まった。
「お、あれは……」
「え、何?」
胸の前で物を抱えているので、あまり前が見えない真司は勇の声に反応する。
「いやな、あそこにおるの星やないかと思ってな」
「え、星くん?」
すると、勇は大きな声で星の名前を呼んだ。
「おーーーい!! 星ー!!」
星は名前をを呼ばれ真司たちの方を振り向くと、トコトコと歩きながら近づいてきた。
「……勇……真司お兄ちゃん」
「よっ!」
「……ん」
星は勇を見下ろし無表情で小さく頷く。
「こんにちは、星くん」
「……ん」
真司も星に挨拶をすると、星は勇と違い少し照れたように小さく頷いた。
「なんやなんや。俺の時には、そんな恥じらいなかったのに……拗ねるぞ」
「……お好きにどうぞ」
「冷たっ!! 相変わらずクールやなっ!!」
「……それより。その荷物……どうしたの……?」
「って、無視かーいっ!!」
星の足にツッコミを入れる勇だが、それをヒラリと躱す星はジッと真司を見た。
「これ? 菖蒲さんのお店に寄る途中に、色んな人から声をかけられて貰ったんだ」
「……へぇ」
すると、星は真司が抱えていた荷物を少しだけ持った。
真司かキョトンとした表情で星を見る。どうやら荷物持ちを手伝ってくれるらしい。
「……手伝う」
「ありがとう、星くん」
真司が星にお礼を言うと、星は少しハニカミながら黙ったまま頷いた。
「そう言えば、星くんは商店街に何か用事でもあったの?」
「……本屋さん」
「本屋? あぁ、そう言えば、いつも本を読んでいたもんね」
真司のこと勇が二・三度頷いた。
「星は、昔から本が好きやからなぁ~。本の虫というやつやな!」
「……虫じゃない」
また一人同行者が増え、真司たち一行は菖蒲の骨董屋へと向かったのだった。