表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/93

恋と甘味と勝負事~仲良し~壱(終)

 勝負が終わった後、豆麻と小豆はすっかり仲良しになり、手を握り合ったまま菖蒲の骨董屋へと訪れていた。

 どうやら、お礼とこれまでのお詫びを兼ねた挨拶をしに来たらしい。


「本当に、有難うございます」

「菖蒲様や皆さんにもご迷惑をおかけしました……」


 小豆と豆麻が頭を下げる中、白雪と菖蒲が微笑んだ。


「気にせんでもええ」

「そうですよ」

「これからは、和も洋もこだわらず、お互いの目線と考えを取り入れた菓子を作り(みんな)に振舞いたいと思います」

「美味しいって、笑顔で言ってくれるような幸せなお菓子を作ります!」


 まるで熟年夫婦のように息がぴったりな小豆と豆麻に、菖蒲が笑みをこぼす。


「二人とも、仲睦まじくするのじゃぞ」

「「はいっ!」」


 そう言うと、小豆と豆麻は骨董屋を出て行ったのだった。


 出ていく際、豆麻は真司にあることを言った。


「その……前は、関わるなとか言ってごめん。俺、お前のこと誤解してた。人間のくせにって思っていたのもあったけど……その……今度、店に寄ってくれ! うまい豆腐や菓子をご馳走するよ!」


 真司は謝られると思わなかった。

 何故かというと、そのことについてスッカリ忘れていたからである。でも、悪い気は全然無かった。


(豆麻くんのお店、か……今度、行ってみようかな)


 ✿―✿―✿—✿―✿


 豆麻と小豆が去ると、菖蒲は白雪が淹れてくれたお茶を飲む。そして、息を小さく吐いた。


「やれやれ。やぁ~っと、この喧嘩からもおさらばじゃの」

「ふふふ、お疲れ様です」

「おつかれー♪」

「……ん」

「お疲れ様です、菖蒲さん」


 白雪たちが菖蒲に労いの言葉をかける。


「しかし……やはりと言っていい程、こちらから動かなければあちらも動かなかったの~」

「そうですねぇ」

「え? それってどういう事ですか?」


 真司が菖蒲に聞くと、菖蒲は真司の質問に「うむ」と、言いながら頷くと再びお茶を飲みはじめた。


「実はの、あの勝負は仕組まれているんやよ」

「え?!」

「勿論、仕組んだのは私達ですが♪」


「ふふっ」と、笑う白雪。すると、菖蒲も同様にクスクスと笑い始めた。


「え、ええっ?! でも、いつから?! そもそも一体どこからですか?!」

「うーむ。いやの。最初は、確かに普通の勝負をするつもりやったんや? しかし、途中で星が――」

「ついでに……気持ち……言ったらいい」

「とまぁ、こういうので、白雪とどうすればよいか考えてたのじゃ」


 菖蒲と星の言葉に、真司が納得し頷く。


「それで、折角なのでお菓子で気持ちを伝えたらどうかと案を出したのです」


 白雪が微笑みながら言うと菖蒲も小さく頷いた。


「それで、私も妙案と思い、あれに至るということやの。じゃが、結局、先にお前さんに言われたがね。ふふふ」

「むー。私、知らなかった~ぁ」


 白雪の膝の上で、お餅のように頬を膨らませるお雪。


「雪芽……直ぐ喋りそう……」

「ごめんね、雪芽」

「すまんのぉ」


 謝る白雪と菖蒲に、お雪は頬を膨らませる。


「むー……ぷんぷんだもん……」


 菖蒲はそんなお雪を見て苦笑しながら立ち上がると、棚から醤油煎餅を取り出した。


「これで、許してもらえぬかえ?」

「…………」


 お雪は黙ったままお煎餅を見ている。すると、お雪はニッコリと花のような笑みを浮かべると「いいよ♪」と、言った。


(ですよね。さすが、お雪ちゃん)


 真司はお煎餅を頬張るお雪を見て苦笑した。

 そして、お雪を含めた他全員もお煎餅に手をつける。


 ーーバリボリ バリボリ。


 部屋にお煎餅を食べる音が響き渡った


「なんだかんだあったけれど、平和ですよねぇ」

「ふふふ。まぁ、たまにはあぁいう輩もおらんとな」

「そうですね」

「お菓子を、もっともーっと、食べたかったなー」

「……僕は……もう、いい」


 お煎餅の音と共にクスクスと笑う声も聞こえる骨董屋。

 あやかし商店街は今日も賑やかで、そして平和であった。


(終)

 next story→あやかし商店街 第五幕


 [次回のあらすじ]

 一年の終わりがついに始まった!

 あやかし商店街は、いつもより更に賑やかでお祭り騒ぎだった。

 そして、百鬼夜行を行われると同時に遂に菖蒲の正体も‥‥??

 次回は、あかしや橋のあやかし商店街(五) お楽しみに。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ