恋と甘味と勝負事-伍-
「へぇ~、色々なお茶があるんですねぇ。すごいなぁ」
「ふぉふぉふぉっ。東洋から西洋まで、幅広い茶を揃えておるからの~。ブレンドも可能じゃぞ」
「あのね、あのね! 私は、このお茶が好きー♪」
そう言って、お雪が指したアクリルケースには"きゃらめる"と書かれた和紙のシールが貼られていた。
「きゃらめる? あ、キャラメルか。え? これ、本物のキャラメルが入ってる?」
「面白いじゃろ?」
「牛乳を入れるとねー、もっと美味しいんだよ♪」
「僕は……これ」
星が指した物には"みんとてぃー"と書かれていた。
「みんとてぃーって、ミントティーだよね? キャラメルもそうだけど、これも飲んだことがないなぁ~」
「それなら、今度でも飲んでみれ。どれも美味しぞ。ほい、お待たせ。お題は五百円だよ」
「え、安くないですか?!」
袋は中ぐらいのサイズで中身も袋いっぱいに入っているので、その値段の安さに真司は思わず驚いた。
これぐらいの量が入っていれば、人間の世界では1500円ぐらいはしそうだと思ったからだ。
「わしら妖怪は、これといって金を求めて働いているわけではないからのぉ。勿論、金に煩い者もいるがな。ほとんどの妖怪は、皆、笑顔を求めて店を開いとるんだよ。後は、趣味じゃな」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」と、また笑う狸のおばぁさん。
「じゃ、じゃぁ……」
真司は、事前に菖蒲から千円を貰っていたので、それをおばぁさんに手渡した。
(どおりで、貰ったお金が少ないはずだよ)
「ん。確かに受け取った。ほれ、お釣りとおまけじゃ」
真司の手に、お釣りと桜の形をしたクッキーを乗せるおばぁさん。星とお雪の手にもクッキーを乗せると、真司は首を傾げた。
「これは?」
「ブレンドの茶の葉を混ぜた、わし特製クッキーじゃ」
「わーい♪」
「……ありがとう」
お雪と星は嬉しそうな顔をして、おばぁさんにお礼を言うと、真司もハニカミながらもお礼を言った。
「その、ありがとうございます」
「うむうむ。また、きんしゃい」




