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あかしや橋のあやかし商店街① 【続編連載中】  作者: 癒月
第四幕~恋と甘味と勝負事~
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恋と甘味と勝負事-参-

「んとね〜。星ちゃんがね、いっそのこと、見た目と味の勝負したらどう?って言ってるよー♪」

「「「勝負?」」」


 菖蒲達が声を揃えるとお雪がニコリと笑い「うん♪」と、言った。

 すると、その案を出した星がボソリと呟いた。


「……どっちが美味しいか………勝負……」


 ポカンとしていた小豆はグッと拳を握る。


「なるほどっ!! それは、いい案です! 和と洋、どちらが良いかの勝負! 今までは口論と売り上げ勝負でしたけど……早速、果たし状を書いてきますっ!!」


 そう言うと小豆は立ち上がり、慌ただしく骨董屋を出て行ったのだった。

 菖蒲は呆れ半分で溜め息を吐く。


「はぁ……あやつは、何十年経っても変わらんのぉ。全くもって騒々しい……」


 ✿―✿―✿—✿―✿


 小豆が去ったあと、真司は小豆のこと豆腐小僧の豆麻のことを菖蒲に聞いた。


「それで、あの小豆ちゃんという子と豆麻くんという子は、どういった関係なんですか?」

「む? 豆麻のこもを知っているのかえ?」

「私が少しだけ」


 ニコリと白雪は微笑む。


「と言っても、豆麻くんが豆腐小僧ということしか教えていないですが。ふふふ」

「ふむ。まず、小豆じゃが。あやつは小豆洗いの妖怪じゃ」


 真司は「そういえばさっきそんなことを言っていたっけ?」と、思い出す。


「小豆洗いなら僕も少しだけ聞いたことがあります。名前だけですけど……」

「小豆洗いは、または"小豆とぎ"という。まぁ、これといって害の無い妖怪じゃが、各地の伝承に寄っては、小豆洗いは縁起の良い妖怪だったり、その逆で人を(さら)う悪い妖怪だったりするの」

「へぇ〜」

「そして、豆腐小僧じゃが、こやつも害は無い妖怪じゃ」


 菖蒲がそう言うと、今度は白雪が菖蒲に代わって説明を始めた。


「丸いお盆の上に、紅葉の型を押した豆腐を乗せて歩いている童子……それが、豆腐小僧です」


 白雪の説明に菖蒲が小さく頷く。


「そして、豆腐小僧の豆腐を食すと、体中にカビが生えると言われとるが、あれは、昭和以降に子供向けとして考案されたものじゃ」

「よって、豆腐小僧には、そんな力は無いということですね。ふふっ」


 白雪がそう言うと、菖蒲は突然真面目な表情になり「しかし……」と、言う。


「それが人間の間で多く伝われば、豆麻にもその力が宿るかもしれんがな」

「そうなんですか。それが、どうしてあんなに仲が悪いんですか?」

「まぁ、事の発端は小豆が言ったように、どうやら豆麻は豆の方の小豆を馬鹿にしたらしくてのぉ。後、小豆は商店街で和菓子屋を営んでいての」

「豆麻くんのところはね〜、ケーキ屋さんなの!!」


「そうなのです」と、白雪は苦笑する。

 真司は白雪たちの言葉に「なるほど」と、呟きながら頷いた。


「だから、和と洋って言っていたんですか」


 菖蒲は小さく頷くとお茶を飲む。


「和菓子と洋菓子。私は、どちらも好きじゃが……本人達は、そうもいかぬというやつやの」

「私はねぇ、んーとぉ〜、ケーキが好き!! あ、やっぱり和菓子も好き!! 全部好きー♪」

「……僕は……あまり甘くなければ……。でも……和菓子は日本らしさがあって……綺麗で……好き……」

「私も、雪芽(ゆきめ)同様にどちらも好きですね」


 菖蒲たちがそれぞれの好きなものを言うと、真司は、自分はどっちだろう?と、考え始める。


「うーん。和菓子も見た目は綺麗で素朴な味で好きだし、洋菓子も果物を使った物が色々あって僕は好きですし……うーん……」


 結局、真司もどちらも好きかもしれないという結論に至るのだった。


「つまりは、そういうことじゃ。それぞれに良さがあるというのに、やれやれ……あやつらは、昔から争いをしててのぉ」


「困ったものじゃ」と、呟きながら菖蒲がお茶を飲む。そして、お茶が無くなったので新しく淹れようと台所へ向かった。

 しかし、数秒後にはなぜか少し落ち込み気味で帰ってきた。


「どうしました?」

「うむ。茶の葉が、もう無くての……」

「あ。それなら、僕が買って来ましょうか?」


 その言葉に菖蒲の顔は、パァと明るくなる。


「ほんとかえ?! それは助かる!」

「お一人で大丈夫ですか?」

「それなら、私も行くー♪」

「……僕も」


 勢いよく手を上げるお雪と、そろそろと手を上げる星。

 白雪と菖蒲は、お互いにニコリと微笑む。


「二人が一緒だと安心ですね」

「そうじゃの、ふふふ」


(僕って、そんなに頼りないかなぁ……?)


 内心そう思うが、まだ商店街を一人で歩くことができない真司は少し不安だったので、お雪達が一緒だということに、やっぱりどこかホッとし嬉しい気持ちになったのだった。

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