恋と甘味と勝負事-壱-
「ふんふーん♪ふふーん♪ふふふーんふふーん♪」
菖蒲の骨董屋にて、お雪は畳の上に寝転がりながら紙に何かを書いている。
「お雪ちゃん、何を描いているの?」
「んとね〜、お手紙!」
「手紙?」
真司は首を傾げる。お雪は、そんな真司の顔を見て花のようなかわいらしい笑みを真司に向けた。
「サンタさんにお手紙だよー♪」
すると、炬燵に入りお茶を飲んでいた白雪が「もうすぐクリスマスですものね」と、言った。
隣で同じように紙にお願いごとを書いている星。お雪は星の願い事が気になるのか覗き込むように「ねぇねぇ、星ちゃんは何をお願いするー?」と、星に言った。
「……秘密」
「えー」
ぷくーっと、頬を膨らませて拗ねるお雪は諦めていないのか、コソ~と星が書く紙を見ようとする。すると、星は紙を胸に抱きお雪に見せないように隠した。
「……見ちゃダメ……雪芽」
「ぷー。けちぃ〜」
まるで兄妹みたいに接している星とお雪を見て、菖蒲たち三人は微笑ましそうにクスクスと笑う。もしくは、姉弟かもしれないが。
因みに、星の相方であるルナはというと、炬燵の中でヌクヌクしながら眠っている。付喪神といっても、そこはやはり猫らしい。
――チリリン。
店の扉が開く音に菖蒲たちが気づいた。
「おや、誰だろうねぇ?」
「私が行きます」
そう言うと白雪は炬燵から出て立ち上がり、店頭へと向かった。
「誰でしょうね?」
「ふーむ」と、菖蒲が考えているとお雪が急に顔を上げ「甘い匂いだっ!!!」と言った。
真司は辺りの匂いを嗅ぐ。確かに、お雪の言うようにほんのりと甘い匂いがした。
「本当だ。少し甘い匂いがする」
「ふむ。確かにするの。この匂いは、あやつか」
そう言った途端、障子が開き白雪が居間に入ってきた。
「菖蒲様。菖蒲様にお客様です」
(一体、誰なんだろう……?)




