冬の訪れと雪女~初雪~
鍋を食べ終えた四人は後片付けしたあと、再び炬燵に入り温かいお茶を飲んでいた。
「そういえば、白雪さんはこれからどうするんですか?」
湯呑をテーブルに置き、真司は白雪に聞く。
「そうですねぇ。当分は、また、ここでお世話になろうと思います」
ニコリと微笑むと、白雪は菖蒲を見る。お茶を飲んでいた菖蒲は、一瞥するように白雪を見ると「私はかまわんよ。ここは、もう、お前さんの第二の家でもあるんやからの」と、白雪に言った。
当然という顔で言った菖蒲に白雪は少しだけ驚いたが、やはり、そう言われると嬉しいのだろう。少し驚いたあと、可憐な花のような笑みを浮かべ菖蒲にお礼を言ったのだった。
「菖蒲様、有難うございます」
白雪と菖蒲を見て真司が微笑んでいると、ふと、白雪がいままでどこで何をしていたのかが気になった。
「あの、白雪さんは今までどこにいたんですか?」
真司の質問に白雪は「ふふっ」と、笑う。
「少し南の方き旅をしていました」
「旅ですか?」
「はい。暖かい地域を転々としていました。人間の世界が昔とどう変化したのか、変わらないものはあるのか気になった……という理由もありますが。本当は早くに戻って来るつもりだったのですが……色々あり、つい、遅くなってしまったんです」
白雪も長く生きているからこそ、自分の知る人間の世界と今の世界がどう変わったのか知りたくなったのに、真司には少しだけその気持ちがわるような気がした。
なにがどう変わったのか、変わらないものがあったのかは真司にはわからない。けれど、白雪の微笑む顔を見ると「きっと、それがなんなのか見つかったんだな」と、真司は思った。
真司は白雪を見て、また、ふとある事が頭に過ぎった。
それは白雪が来る前に現れた白い蝶のことだった。
「そういえば、今は見えないですけど、あの白い蝶は一体なんですか?」
白雪に聞くと、代わりに菖蒲がそれを答えてくれた。
「あれは、白雪を守護する精霊じゃ」
「あれも精霊なんですね」
真司がそう言うと白雪が「はい」と、言った。
「連絡係や人間界で言う保冷剤代わりになります」
「保冷剤? あ……確かに、冷たかったですね」
真司は、あの白い蝶に触れたことを思い出していた。
氷や雪の造形物のように美しい蝶――その蝶に触れた瞬間、氷のような冷たさが指先から伝わったのだ。