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あかしや橋のあやかし商店街① 【続編連載中】  作者: 癒月
第一ノ伍幕 ~二度目の訪問~
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二度目の訪問-六-(終)

 お雪の言葉に、真司の頭の中はクエスチョンマークが沢山飛び交っていた。

 それを見かねた菖蒲は、真司の肩に手をポンッと置いた。


「真司や。お前さんが聞こえた声の主はの、全て、ここの骨董達ぞ」

「…………えぇっ?!」

「以前に言ったやろう? 物には生命いのちが宿ると」

「そ、そうですけど……」


 すると、周りの骨董達がクスクスと笑い始めた。

 菖蒲は思い出したかのように両手を合わせる。


「おぉ、そうじゃそうじゃ。これは言うてなかったが、お雪もその一人じゃぞ」

「えぇっ?! お雪ちゃんも?!」

「はーい♪ 私も、ここの皆と同じだよ~♪」


 真司は、元気に手を上げるお雪を見る。失礼なのは承知な上で、お雪の頭のてっぺんから足のつま先までジッと見た。


(どこからどう見ても、人間の女の子に見えるのに?!)


 お雪は真司に見つめられ「えへへ~」と、言いながら照れる。


「そんなに見られると恥ずかしいよ〜」

「妖怪……なんだよね……?」

「うん、そうだよ♪」


 隣にいる菖蒲がカウンターの傍に飾られている陶器を指さす。


「ほれ、真司。あれを見んしゃい」

「へ?」

「あれが、お雪の本体じゃ」

「……これが?」


 真司は菖蒲が指さした物をジッと見る。それは以前、目にしたことのある物だった。

 湯呑みの陶器なのだろうか? 少しだけ端が掛けていたが、相変わらず真っ白で綺麗な陶器だった。

 そして、その陶器には雪兎の絵が描かれている。真司はお雪を再び見る。


(着物も雪兎、髪飾りも雪兎……)


 そして、真司は自分の前髪を留めてある髪留めにそっと触れる。


「確か、これも雪兎……なんだよね? お揃いって言っていたし」

「そうだよー♪」

「ふふっ、納得したかえ?」

「は、はい。と言っても、少しだけですけど……。でも、どうして人の姿に?」

「ふむ。お雪は強い想いから作られ、それと同等の想いから大事にされている。前にも言うたが、年月が経つと生命(いのち)が宿るのじゃ。そして、強い想いから作られた物や大事にされた物は、時には実体化も出来るんよ」


 真司は菖蒲の言うことに、ふと、その妖怪の名前が頭に浮かんだ。

 初めて菖蒲から聞いたときはその名前が浮かばなかったが、今の真司はそのことを考えることも、疑問に思うこともなかった。


「物に生命が宿る妖怪……。それって、もしかして、付喪神(つくもがみ)ですか?」

「うむ。ここにいる物も所謂いわゆる付喪神(つくもがみ)に入るがお雪は別じゃ。あぁ、がしゃ髑髏と同じやねぇ。がしゃ髑髏は、怨念の塊……しかし、お雪はその逆――想いの塊なのじゃ」


 そう言って、菖蒲は優しい眼差しで、他の骨董と楽しそうに話しをしているお雪を見た。


「ふふっ。まだここには人間に化けることが出来る物もおるから、楽しみにしているとええ」

「え、他にもいるんですか?!」


 驚く真司に菖蒲はニコリと笑う。


「何せ、ここは私の店やからねぇ。(えにし)は既に紡がれておるから、自然と他の者にも会えるさ」


 菖蒲はそう言うと、袖口を口元に当てクスクスと笑ったのだった。


(他にもお雪ちゃんみたいなのがいるんだ。なんだか……これからどうなるか想像つかないなぁ。それに少し大変そう……?)


「あ、あははは……」


(終)

 next story→第二幕


[あらすじ]

 秋とは違い冬の匂いが感じる中、菖蒲と真司は鍋の買い出しに行っていた。

 やけに多い量に、真司は菖蒲に理由を聞くと「雪女が帰ってくる」と言われる。

 真司は、まだ見ぬ雪女がどんな(あやか)しなのか少し興味があった。

 あかしや橋のあやかし商店街 第二幕は挿絵付きです‥!!


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