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和泉のマジックワード


あたしだってそれくらいは知っている。


恋、というものの存在のこと。


実際に経験したことはないけど、


本がお友達だったから恋については人並みに知っていると自分では思っている。


実際には、本と………慶一が……。


はあ。


ため息がこぼれる。


昨日、和泉の目の前で泣き顔を見せてしまったことに対しても、


慶一の今までのあたしに対しての行動や行為が、


すべてあたしに"異性"としてすきになって欲しかったからだと、分かってしまったからだということに対しても。


すべてをひっくるめたため息だった


今日が土曜日で良かった…。


ほっと、安堵の息をもらすと、


ふと昨日、泣きじゃくっていたあたしに対して言った和泉の言葉が思い出された。




別に、塩崎だってお前に好かれかった一心で、面倒見てたわけじゃないだろうし


まあ、ぜってー好かれたいって下心はあっただろうけど。


それだけじゃ、普通あそこまでやんねーよ。



投げやりにそう呟いた彼の横顔を思い出す。


和泉って…案外…いいひと…?


はっ


ダメダメ!!


こいつは、あたしの大嫌いな、


い ず み !!!なんだから!




そう思いながらも、彼のいうことにも一理あるなと、思ってしまうあたしもあたしだ。


あたしは自分の思いを粉々にするべく、


自分のベッドにダイブした。


人生で初めての経験。


誰かが自分のことを考え、想ってくれているということ。



あれ?これって結構幸せなことなんじゃないのかな?


あたしが慶一に対して、"幼馴染"としかおもっていなくても、


慶一はあたし以上にあたしのことを想ってくれていたってことだよね?


恋ってそういうことだよね?


…だめだ、やっぱり恋愛って経験しなきゃ、わからないみたい


時計の秒針の音が部屋に響いている。


…やっぱり、昨日のことは綺麗さっぱり忘れて、慶一に一から自分から聞いてみよう


本人の口からでないと、分からないことも沢山あるよね。


そう心に決めて、あたしはベッドから勢いよく飛び起き、部屋にある全身鏡の前にたつ。


棒のような足 、くびれのない腰。腰まで伸びた艶のある黒い髪。焦げ茶がかった深くて大きい瞳____は長い前髪で隠れてよく見えない。


髪の毛…切ってみようかな。


悪い気持ちと一緒に。


そうすれば、きっともっとスッキリできるはず。


できる言葉が、慶一から聞けるはず。




沙耶は自分が以前より少しずつ明るく、前向きになっていることに自分では気が付いていなかった。


それが、誰の影響かも、全く。











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