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ごちゃごちゃな一日


その日は一日中慶一の言ったことで頭がいっぱいだった。

どうしちゃったのかしらね。ため息をつきながら帰りの支度をする。

あたしは帰宅部だから学校が終わったらまっすぐ家へ帰る。中学生になってから放課後、友達とおしゃべりをする、なんてやったことがない。夢のまた夢だ。それをするにはまず仲のいい友達を作って普通にしゃべれるようにできるようにしないと。

気を取り直して、最後に筆箱をスクールバックの中に入れ、あたしは下駄箱のほうへ急ぐ。今日はピアノのレッスン日。ゆっくり帰宅しているとレッスンに遅れてしまうのでやや小走りで帰らないとレッスンに間に合わない。大好きなピアノのレッスンを遅刻する訳にはいかないのだ。

校門の前まで来たとき、サッカー部の集団がランニングをしているのが見えた。・・げっ和泉がいる・・・。

あわてて目をそらそうとしたときにはもう遅かった。和泉とばっちり目が合ってしまったのだ。う・・・。アンラッキー・・。あいつはあたしを2秒くらい鋭い目つきでジトっと見た後、ものすごい勢いでふいっと顔をそらした。な・・な・・・何あの態度‼あたしだってねえ別にみたくてみてたわけじゃないのよ‼!?!それが・・何よっ!嫌なかんじ!あたし以外の女子とは普通に笑顔で話してるのに、何!?あたしには笑顔も向けないわけ!?!

イライライライラしながらあたしは家へ帰った。その日は慶一のこともこのこともあって大分まいっており、あたしは大好きなピアノも休んでひたすら寝た。こんなことは初めてだったけどそうするほかに何もなかった。





和泉に初めて話しかけられたのはその三日後。


あたしが教室で読書をしていると、

「あんたってさ、普通の人間っぽいね。」

と言ってきたのだ。急に話しかけられたかつ、第一声がそれだったもんだからあたしはびっくりして目を見開いてしまった。

「し、失礼な!あたしだ、だって、ふ・・普通の人間!・・ですよっ‼!!」

びっくり効果ってすごいな。和泉に対してこんな大口をきけるようになる日があっただなんて。やっぱりちょっとどもっちゃったけどでも我ながらビックリ。

「・・・・いやあだってさ。今まで見たことのある俺のあんたのイメージとしてはさ、なんか・・なんてゆーの。話すとき人の目ぇ見てはなさねーし。下ばっかみてっし。なんかイチイチ猫背だし。でも塩崎と話してるときだけハッキリしてて姿勢もシャキっとしてるから本当に同一人物なのかよ、って。でもなー・・塩崎もカワイソーだよな、ありゃ」

和泉が教室のはしでグダッとしている慶一を指差した。

「相当恥ずかしかったろうな。もう体力使いきってるって感じだ。」

「・・・・い、和泉君。失礼てっ、ですが、な・何のこと言って・・るの?」

あたしがおずおずと聞くと和泉が小さく息を吐き、

「・・お前も鈍感女だな。」

と言ってどこかへ行ってしまった。



その言葉の本当の意味をあたしは4日後に知ることになる・・・・・



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