ただの幼馴染
翌朝ー。
小鳥のさえずりで目を覚ます。
チ…チチチチュン チュン
「お元気そうで。」
あたしは目の下にクマを抱いた顔をつまみ、幸せそうな小鳥に声をかけた。
嫌味だな、と思いながらもこればっかりはどうすることもできない。だってこれから1ヶ月間、和泉の隣なんてあたしはどうすればいいの。慶一が同じクラスなのは天のお恵みだけど…
和泉に例え話かけられたとしても、あたしは絶対に緊張して緊張してうまく話せないと思う。そうしたらまた《あいつ、なんかどもってねえ?》って言われて笑われるハメになるんだ…。どうしよう、エンドレスだ。
仮病…使おうかな…。
そう思った時、リリリリリ
携帯電話のベルがなった。 慶一からだ。どうしたんだろう
ピッ
『慶一?どうしたの?』
『仮病を使うのは禁止ですよ、沙耶ちゃん。』
『!!?……なんでばれ!?』
『大体わかんだよ。大丈夫だって!!!いざとなったら俺がガツンといってやるよ』
『でも…恐いんだよ。もし…』
『信じとけ、あと5分したら迎えにいくから』
ガチャ
そう言って彼の電話は途切れた。…どこにあるんだ。そんな根拠。でも慶一、慶一は慶一なりに励ましてくれたつもり…なんだよね。…学校、行こうかな。そうしてあたしは慶一と一緒に学校へ登校したのだった。
1時間目が終わって10分休みになった時、あたしは綺麗で背の高い一人の女の子とショートカットの女の子に声を掛けられた。
「井之原さんだよね。チョット話あんだけど。」
………………え。何?この人たちあたしに何か用があるの?こんな綺麗で恐そうな人とまともに話せる気がしない。
でもちゃんと喋らなきゃ。そうしないとまた変に思われる。あたしはガクガク震える膝を抱えて1階の倉庫前に連れていかれた。
「………あんたさぁ、うちのクラスの塩崎慶一の何なわけ!?去年からずっと思ってんだけど。」
綺麗な女の子に言われてあたしはキョトンとしてしまった。け…慶一の何か!?!?なんでそんな事…
「け…けっ慶一…と…はっ!!!おおお幼馴染…です!!!」
い…言い切った!!!
「じゃあなんで今日一緒に登校してたの?幼馴染ってここまですんの?普通おかしーだろぅよ。」
なんで?一緒に登校しちゃだめなの?言いたいけど喉に突っかかって言葉がでない。
「友美が塩崎の事気になってんだって。だからなるべくこーいうのやめてくんない?友美カワイソーじゃん?あんたも人間だからそんくらいわかるよね?」
ど…どうしよう。どうすれば……。
“信じとけ”
朝の慶一の言葉が頭の中で再生される。でもね慶一、あたしが慶一の事信じちゃったら、あたしこの人たちにひどいことされると思う。慶一の事信じたいけど、ムリだよ。でもあたし慶一しか頼れる人がいないの…。お願い!!だからあたしから慶一を…慶一を。
「何とか言えよ。口あんだろ?!」
「ねえ…あたしのために何かしてくれるよね。」
ショートカットの子にせばまれる。
慶一っ!!!!!
目をつむった瞬間だった。
「修羅場か?」
声の持ち主の方をみると・・・・和泉だった。ああ…もうダメ…。なんでこいつがこんなとこに…
でも和泉は
「あと3分で授業始まんよ。それくらいにしとけな」
といって消えて行った。何?もしかして…今の助けてくれたの?予想外の展開・・
と、その時、
「沙耶ーーーーーーー!」
慶一が息をきらして走ってきた。ああもうこんなとこでなんでくんのよ!!慶一は!!タイミング悪いんだから。
「大丈夫か?おい!おめーら沙耶になんかしてないよな!」
…あんたはあたしの保護者かっての。おもわず笑ってしまう。でも、どんなときでもいっつも助けにきてくれるよね、慶一は。
“大体わかんだよ”
うん、うん。
「塩崎くんっ!なんでこんな地味な女!!!いっつも構って助けてあげて!こいつはただ弱ぶってるだけじゃん!」
「沙耶は俺の……俺」
幼馴染…でしょ?慶一。
「赤い実はじけたはじめての娘なんだよっ!!!!!」
は。




