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不可死の魔王  作者: ネコノ
2部「血塗られた騎士」
29/30

3-1 「運命」




 暗い部屋の一室。隅の方にそっと座り天井をゆっくりと見上げた。特に何かがあるわけではない。ただそうしているだけ。



 窓は閉め切り、カーテンが日の光を遮断していたせいで今が何時なのかさえ分からない。しかし、そんなことはどうでもよかった。僕の時間はあの時から止まった……



 僕はこの手で――



「リア……」


 悲しみと罪悪感で涙があふれてきた。もう何度目だろうか?



 ゆっくりとうずくまる。そしてまた、途方もない時間を後悔する。



 しばらくして、ドアをノックする音。誰が来たのかは直ぐに分かった。

「ツヴァイさん……、大丈夫ですか?」

 シャディの声。ここ2日、数時間おきにシャディとリメリアが立て続けに訪ねてきていた。



 僕は動かず、ただひたすら下を向いていた。


「ツヴァイさん、開けてください」


 彼女の戸を叩く音は次第に強くなっていく。



 関わってほしくなかった。これ以上は……



「お願い……、僕の事は放っておいて……」



 彼女は戸を叩くのをやめ――


「分かりました」



 彼女はそう答え。やがて静かになった――はずが……


 え――!?



 次の瞬間、ドアの隙間から眩しい閃光が漏れ、そして、爆風と共に跡形もなくドアが吹き飛んだ。

 僕はその状況にあっけにとられていた。



「ツヴァイさん!!」

 そこには仁王立ちをするシャディの姿。彼女は勢いよく詰め寄ってきた。



「こんなところにいつまでひきこもっているつもりですか!?」


「放っておいてよ……」



 彼女の言い分は分かる。でも、僕がいなければリアは死ぬことはなかった……。魔王は人を不幸にする。きっとシャディ達も……



「ツヴァイさん……」



 シャディの声を聞いた瞬間、大きな衝撃を頬に受け大きく揺れた。

 彼女の平手……、そして後から来る痛み。僕は彼女に叩かれていた。



「……ざけ…………いでください」

 聞き取れないほど小さな声で彼女は言った。



「えっ……?」



「ふざけないでください!!」



「僕はふざけてなんか――」


「ふざけてます!! そりゃあ、リアさんが亡くなったのが悲しいのは分かります。私だって悲しいです……。でも――、そんなことをリアさんが望んでいると思いますか?」


「僕は魔王だから……、いろんな人を不幸にする……。シャディだって――」

「馬鹿にしないでください!! ツヴァイさんが私たちを不幸にする? 私達がいつ不幸になりましたか? 確かにツヴァイさんは確かに魔王です。でもただそれだけでしょう? うぬぼれないでください……。魔王はツヴァイさんの職業であって人格じゃない」



「でも……、僕はリアを殺してしまった……。僕が出会わなければイベントは起きずに死ぬことはなかったはずなのに……」



「確かに悲しい出来事です……。そんな事になるなんてこのゲームはものすごく残酷です……。でも、少なくとも私と会った時のリアさんはすごく笑顔でしたよ? 会えてよかった、そう言っていました。きっとそれはツヴァイさんが彼女と出会えたおかげです。リアさんはツヴァイさんのせいだなんて一言でも言いましたか?」


「…………」


「それどころかツヴァイさんはリアさんの病気を治すために、危険を承知で奇跡の砂をとりに行ったんでしょう?」


「でも、治せなかった……」



「私は……、あの城の殻に閉じこもって、いつまでも兄の事で感傷に浸っていました……。いつ殺されるかわからない中でただ生きていた。あの時はきっと私も諦めていたのだと思います……。でも!! ツヴァイさんが来て、旅をして、私も頑張ってこの世界を出ようって思いました。ツヴァイさんはここで諦めちゃうんですか? 私やリメリアを連れ出したきっかけを作ったのはあなたですよ!! 無責任すぎます」



「僕は……」


「それに、リアさんはあなたが諦めることを望んでいると思いますか?」

 リアが最後に言った言葉が脳裏によぎった。


『最後に……出会え……て……よかった。ありが……と……う』

 感謝の言葉。そして、彼女はにっこりとした笑顔で微笑んでいた。ねぇ、リア……、僕はどうすればいいと思う?



「僕は……、僕は……、うぅ、うわぁあああああ」

 シャディは泣き崩れる僕をやさしくそっと包んだ。



「私はツヴァイさんのおかげで助かったんです。臆病だけど、一生懸命に誰かを守ろうとするツヴァイさんが、私たちを不幸にするわけがありません」


 彼女手はそっと頭に触れ、やさしく撫でる。



「あまり一人で抱え込まないでください……ね?」



「ごめん……な……さい……、うっ……」

 シャディに抱かれ、号泣した。


私はツヴァイさんの味方です……。何があっても……」



 僕は……、僕は――――


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