4-4 「孤独な世界」
「ツヴァイさん……、ツヴァイさん……」
シャディの何度も呼びかける声が聞こえる。
「落ち着けシャディ!! 彼は生きている」
騒がしい二人のやり取り。僕はどうしたんだっけ……。
気絶する前に――――そうだった。漆黒の煙に包まれた男に向かっていったんだ。
それで吹き飛ばされて……そこから記憶が曖昧だ。
目を開けると、心配そうにのぞきこむ二人の姿が映る。
顔を確認して、ほっとしたの二人の表情が緩んだ。
「まったく、君と言うやつは、無謀と言うか何と言うか……」
「そうです。無茶ばっかりして……」
二人には迷惑をかけてばかりだ。
「二人ともごめん」
「ああ、次から無茶はしてくれるなよ? あの後シャディが取り乱して泣きわめいて大変だったんだぞ?」
え……、シャディが!?
「べ、別に私は取り乱してなんか……。そ、そういうリメリアさんこそどうなんですか?」
「何がだ?」
「ツヴァイさんが目を覚まさないって泣きかけていましたよ?」
「わ、私はべ、別に泣いてなど……」
二人は言葉に詰まり、やがて沈黙した。感無量というか……
「シャディ、リメリア。本当にありがとう」
「「なっ――――!?」」
「そこまで心配してくれて」
「べ、別に泣いてなんか――!!」「私は断じて泣いてない!!」
次の瞬間、二人のすさまじい。シャディの魔法とリメリアの衝撃波が容赦なく襲いかかった。
本当に死んだかも…………。
かなりの傷を負っていた。主に二人によってなんだけど……
「いててて――――。ところであの人たちはどうなったの?」
「それがだな……」
二人は怪訝そうな顔を浮かべていた。
「え―――――!?」
辺りに目をやった瞬間、戦慄した。
無残に飛び散った血痕の後。男達のものだと容易に想像できた。
「これ…………」
「あぁ、あのあと急に苦しみだして、こうなった。」
「おそらく、あの漆黒のパワーに耐えれなかったんだと思います」
漆黒……、あれはいったい何なのだろう……。
「ところで、いつの間に仲直りしたの?」
さきほどまでいがみ合っていた二人が、何事もないかのように隣合い話している。
二人はそれに気づき笑った。
「シャディ、さきほどは決闘などと挑発することを言ってすまなかった。君がいなければ私はやられていた。礼を言わせてくれ」
「いえ……、それに先ほどは私も言い過ぎました。ツヴァイさんを助けてくれていたんですよね? 早とちりしてすみませんでした」
何はともあれ、二人が和解してよかった。
「時にだ、シャディはこれからどうするんだ?」
「これから…………」
シャディはただ連れ戻しに来ただけだった。もともと城を出ることを嫌っていた。彼女にとってかけがえのない場所。それは分かっている。
しかし、決して帰ることはできない。僕がいるとシャディを怖い目にあわせてしまう。「わかりません……」
シャディが連れ戻しに来てくれたことは嬉しかった。でも――――
「来てくれてありがとう。でも、僕は何もせずにただ死ぬのを待ちたくないんだ。だから、フヴェルゲルミルに行く。城へは帰れない」
「そうですか……」
それに、僕は何もせずにあきらめたくはなかった。
「とりあえず、街にもどろう」
街へと足を運ぶ。
「待ってください!! 私も行きます」
彼女の一言に驚愕をした。
―――Unknown―――
少し時間が遡り。森から少し離れた高台。
「あれが次の魔王様ですかい?」
「あぁ、あの程度の力なら、わざわざ力を測るまでもなかったな」
そこには二人の男が立っていた。
「ずいぶんとひどいっすね。あの盗賊達は使い捨てですか?」
「俺は奴らに力を与えただけだ」
「うわー、こわこわ」
「それより例の件だが任せたぞ?」
「人使いが荒いなぁ。まぁ、俺としては金さえ出ればいいんですがね」
男達はその場を去った。