1.3
「獣!?」
そう、化学側でも魔術側でもなかった
「ガルルルッ・・・」
「主は?!」
「いなさそうよ・・・」
獣は、獣使いと契約され、誕生する
獣使いは獣の主とされ、獣と共に一生を過ごすハズ・・・
「最近増えてきてるって知ってる?」
「なにが?」
「言うことを聞かない、役に立たない、懐かない、そんな理由で獣を捨てる獣使いが増えてきてるってことを・・・」
「え・・・?でも、獣は主の言うことは絶対的なんじゃ・・・」
「飼い方がよほど酷くない場合はそうなんだけどね・・・、行くよ、ぼん」
「なにそれ・・・獣が可哀相じゃん・・・、殺すの・・・?」
「ううん、傷を治してから街のギルドへ送るわ。ギルドなら一人や二人獣使いはいるでしょうし。だから動きを止めてくれる?みずほのスピーカーがあればなにもしないで傷を治せるんだけど、生憎故障中だから」
「うん、まかせて」
ばんびたんの合図に合わせて獣の後ろに回る
「ガルルルッ!」
私に向けて鋭い牙が振り下ろされる
「甘いよっ!」
それを横にサッと避けて、ジャンプする
そして、獣の上に跨り、ロープで動きを止める
「すばやさだけは抜群なんだからね」
「ぼん、そのままジッとしててね」
少ししてから、ばんびたんの透き通った綺麗な声が聞こえてきた
獣を包み込むような歌だ
獣は大人しくなり、歌っているばんびたんをジッと見る
傷が癒えていくのが不思議なのか、はたまたばんびたんの歌声に聞き入っているかはわからないけれど
「・・・はい、おしまい。もう傷治ったでしょ?」
「・・あ、ほんとだ。もう大丈夫かな」
ロープを外して、獣から降りる
「もう大丈夫だよ、ここを真っ直ぐ降りていけば街のギルドがあるからそこに行きなさい。仲間がいるかもだし。気をつけて行くんだよ」
そう言って、獣を置いて城へと向かった
無論、馬車は壊れて歩きだけど
「うはー・・・疲れたー・・・」
「山登りとか何年ぶりかな・・・」
「・・・」
「さすがみずほ・・・、体力だけはあるのね・・・」
城に着いたのは、日が暮れそうな時間だった
キィー・・・
古い木の扉が音を立てて開いた
「コタ兄ー?帰ってきたよー?」
いつもなら大広間にいるコタ兄がいない
「コタ兄探してくるね」
そう言ってコタ兄の寝室に入った
「コタ兄、まだ寝てるの?ばんびたんとみずほ来てるよ?」
すると、布団の中から声がした
「ばんびと・・・みずほが・・・?」
いきなり点いた電気によって、目を細めて寝ぼけ声で私に問いかけるコタ兄
はっきり言うと、コタ兄はかっこいい
そこらへんの男より女より美形だ
少しパーマがかった茶色の髪とか、スラッとした鼻とか
「うん、だから・・・」
ただ、問題は性格だ
「まじ!?ばんびとみずほの血ってすっげー興奮するんだよなー!着替えたら行くって言っといて!」
そう、変態尚且つ変人
まぁ、吸血鬼だから血を見て興奮するのはいいんだけどね
言い方ってもんがあるじゃん?
「・・・うん、その格好で出ない方がいいよ。二人には言っておくから」
パンイチだし