1.1
Side→帽子屋
「あ、ばんびたん!」
コタ兄に街にある合成物の使いを頼まれて、山にある城を抜けて一時間半
あの肩まである黒髪と背後の女の人どこかで見たことあるなー、って思っていたらやっぱりばんびたんだった
名前を挙げて呼ぶけれど、この街の騒音の中じゃ聞こえなかったみたいだ
急いで駆け寄ると、背後の女の人が気づき、ばんびたんに声をかけた
「ぼん!久しぶり!」
ぼん、とは私のことだ
帽子屋と呼ぶのが嫌(長いらしい)だというばんびたんが、私にぼんと名づけたのだ
「久しぶり!ばんびたんとみずほ元気だった?」
みずほはいつもばんびたんの背後に隠れている超綺麗な人で、無口
そういえばあまり声を聞いたことがない
「うん、元気だったよ。みずほのスピーカーの調子が悪くて今鍛冶屋に行こうとしてたのよ」
「そっか・・・、スピーカーがないとあるとで能力の発揮があんまりできないもんね」
「そう、だから鍛冶屋に行こうとしてるんだけど・・・」
「これくらい自分で直せる」
ばんびたんの背後から声がした
ばんびたんの話によると、みずほはどうも鍛冶屋に直してもらうのが屈辱的でずっとああ言ってるらしい
「あ、じゃあさ、コタ兄に直してもらえば?コタ兄なら別に大丈夫でしょ」
「コタ・・・?」
ピクリ、とみずほの眉が動いた
「それいいね、私も久しぶりにコタに会いたいし」
「絶対嫌だ」
「もー、我儘言わないの、みずほ。ゼリー入りアイス買ってあげるから」
やれやれと呆れた表情でばんびたんはみずほを引っ張る
物に釣られたみずほは大人しくなった
「私も食べたい!」
「ぼんにも買ってあげるから」
「オレンジ味・・・」
騒がしい中央広場を抜け、私達はとりあえす駄菓子屋に寄った