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異世界で参謀総長になった話  作者: 膝栗毛


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1/5

転移と混乱

ぜひ、この作品の世界を楽しんで頂けると幸いです


1

「――うわっ、マジで!?」

俺の名前は結城ハルト。十七歳、高校二年生。趣味は戦略ゲームと歴史漫画。特技は人を笑わせることと、テスト前日の一夜漬け。

そんな俺が今、泥だらけの塹壕の中で這いつくばっている。

「ハルト! 伏せろ!」

クラスメイトの声が聞こえた瞬間、頭上を何かが通過した。空気を引き裂く音。次の瞬間、背後で爆発。土煙が舞い上がる。

「な、何これ……砲弾?」

隣にいたのは副委員長の高峰凛。優等生で真面目で、俺のことをいつも「不真面目」って説教してくる奴だ。今はその顔が土まみれで、唇が震えている。

「落ち着け、凛。とりあえず頭下げとけ」

「落ち着けって……あんた何でそんな冷静なのよ!」

冷静? 違う。俺はただ、状況を理解しようと必死なだけだ。

五分前まで、俺たちは教室にいた。

いつも通りの放課後。窓際で友達と雑談して、ノートに落書きして、明日の小テストのことを忘れようとしていた。

それが突然――

視界が白く染まって。

次の瞬間、地面に叩きつけられていた。

2

「全員いるか!?」

声を張り上げたのは学級委員長の桜井大和。体育会系で責任感が強く、こういう時には頼りになる奴だ。

「わ、私はいる……」

「俺も……」

「足怪我した……」

クラスメイトの声が次々と上がる。数えてみると――全員いる。四十二人全員。

「何が起きたんだ……」

誰かが呟いた。

その答えは、すぐに分かった。

塹壕の向こう側に、兵士がいた。

灰色の軍服。鉄兜。ライフル銃を構えた男たちが、こちらを警戒しながら近づいてくる。

「動くな!」

怒鳴り声。銃口がこっちを向く。

「手を上げろ! 全員だ!」

俺たちは従うしかなかった。

両手を上げて、ゆっくりと立ち上がる。クラスメイトたちも同じように。何人かは泣いていた。震えている奴もいた。

兵士たちが近づいてくる。その顔は警戒と困惑が混じっている。

「……子供か?」

「いや、違う。年齢は……十代後半か」

「制服が見たことない様式だ。敵国のスパイか?」

「スパイがこんな大人数で? しかも前線に?」

兵士たちが俺たちを取り囲む。銃を向けられながら、一人ずつ身体検査が始まった。

「武器はないな」

「こいつら、何も持ってない」

そして――ポケットから何かを取り出された。

「これは……IDか?」

兵士の一人が、俺のポケットから取り出したカードを見て目を丸くした。

俺も初めて見た。

手のひらサイズの金属製のプレート。表面には文字が刻まれている。

【氏名:結城ハルト】

【身分:民間人】

【役職:戦略顧問補佐】

【特記事項:参謀適性A / 戦術眼S】

「……は?」

思わず声が出た。

戦略顧問? 参謀適性? 何それ。

「全員持っているのか!?」

兵士たちが慌てて他のクラスメイトのIDを確認し始める。

「こっちは『前線将校』だと!?」

「こいつは『航空技術者』……」

「『宣伝部員』? 何だこれは……」

ざわめきが広がる。

俺は隣の凛のIDを見た。

【氏名:高峰凛】

【身分:文官】

【役職:内務省補佐官】

【特記事項:行政能力A / 法務知識B】

「……嘘、でしょ」

凛が呆然と呟いた。

3

結局、俺たちは全員拘束された。

トラックに押し込まれて、どこかの施設に連れて行かれた。窓のない部屋に閉じ込められて、何時間も待たされた。

その間、クラスメイトたちはパニック状態だった。

「どうなってるんだよ……」

「帰りたい……」

「お母さん……」

泣き出す奴。壁を叩く奴。呆然と座り込む奴。

俺は――冷静に状況を整理していた。

まず、ここはどこか。

兵士たちの装備を見る限り、第二次世界大戦前後の技術レベル。銃はボルトアクション式ライフル。軍服のデザインは……ドイツ国防軍に似ている。

でも、完全に同じじゃない。微妙に違う。

つまり――異世界。

次に、俺たちは何者として扱われているか。

IDに書かれた情報が全て。

俺は「戦略顧問補佐」。凛は「内務省補佐官」。

クラスメイトの中には「前線将校」「戦車兵」「航空技術者」もいた。

つまり、この世界では俺たちは――最初から"役割"を与えられている。

そして最後に、なぜ俺たちはここにいるのか。

これは分からない。

でも、一つだけ確かなことがある。

――この世界は、俺たちを必要としている。

「ハルト」

凛が声をかけてきた。

「あんた、何考えてるの?」

「色々」

「色々って……」

「とりあえず、生き延びる方法」

凛は目を見開いた。

「生き延びるって……殺されるの?」

「分からん。でも、可能性はゼロじゃない」

「そんな……」

その時――扉が開いた。

灰色の軍服を着た将校が入ってくる。肩章を見る限り、中佐クラスだ。

「全員起立」

低い声。クラスメイトたちが慌てて立ち上がる。

将校は俺たちを一人ずつ見回した。その目は冷たい。

「お前たちは、今から尋問を受ける。一人ずつだ。抵抗すれば射殺する。嘘をつけば拷問する。覚悟しろ」

教室が静まり返った。

そして――最初に呼ばれたのは、俺だった。

「結城ハルト。こっちへ来い」

俺は深呼吸をして、歩き出した。

4

尋問室は狭かった。

机と椅子が二つ。壁には何もない。ただ、隅に兵士が二人、銃を持って立っている。

俺は椅子に座らされた。

向かいに座ったのは、さっきの中佐。

「名前は?」

「結城ハルト」

「年齢は?」

「十七」

「出身は?」

「……日本」

中佐の眉が動いた。

「日本? そんな国は知らんな」

やっぱり異世界か。

「どこから来た?」

「分かりません。気づいたら、あの塹壕にいました」

「何の目的で?」

「目的なんてありません。突然転移してきたんです」

「転移?」

「そうです。魔法か何かで」

中佐は鼻で笑った。

「魔法だと? そんなものは存在しない」

「じゃあ何だって言うんですか」

「それを聞いている」

俺は肩をすくめた。

「俺にも分かりません。でも、IDは本物でしょう? これ、偽造できないんですよね?」

中佐は俺のIDを手に取った。じっと見つめる。

「……確かに、これは本物だ。偽造は不可能。だが……」

「だが?」

「お前のIDは異常だ」

「どういう意味ですか?」

「『戦略顧問補佐』。『参謀適性A』。『戦術眼S』」

中佐は俺を睨んだ。

「こんな評価を持つ人間は、帝国全土でも数えるほどしかいない。それが十七の小僧に? ふざけるな」

「俺に言われても」

「お前は何者だ」

「ただの高校生ですよ」

「高校生?」

「学校に通ってる子供です」

中佐は黙った。

そして――懐から地図を取り出した。

テーブルに広げる。

「これを見ろ」

地図には、戦線が描かれていた。赤と青の線。矢印。数字。

「これは現在の前線だ。我が軍は今、敵国との国境で膠着状態にある。どちらも動けない。このままでは消耗戦になる」

中佐は俺を見た。

「お前が本当に『参謀適性A』ならば――答えろ。この状況をどう打開する?」

俺は地図を見た。

地形。部隊配置。補給線。

情報は足りない。でも――

「敵の左翼が薄い」

「何?」

「ここ」

俺は地図の一点を指差した。

「敵は中央に兵力を集中させてる。でも左翼は手薄。ここを突けば、側面から回り込める」

「それは分かっている。だが、左翼は森林地帯だ。戦車は通れない」

「歩兵ならいける」

「歩兵だけで突破できるか」

「できます。夜間に少数精鋭で潜入。敵の補給線を断つ。同時に中央で陽動。敵が混乱したところで、本隊が中央突破」

中佐は黙った。

「……お前、本当に十七か?」

「そうですけど」

中佐は地図を畳んだ。

「お前を参謀本部に連れて行く」

「は?」

「総統閣下が、お前に会いたいそうだ」

――総統。

その言葉を聞いた瞬間、俺は悟った。

ああ、これ、ヤバい奴だ。

5

参謀本部は、想像以上に威圧的だった。

巨大な石造りの建物。鷲の紋章。武装した衛兵。廊下を歩くたびに、将校たちがこちらを睨んでくる。

俺は中佐に連れられて、その中を進んでいた。

「緊張しているのか?」

「まあ、少しは」

「少し、か」

中佐は呆れたように笑った。

「お前、本当に変わった奴だな。普通、総統閣下に会うとなれば、大人でも震え上がる」

「震えても仕方ないでしょ」

「……その通りだ」

やがて、巨大な扉の前に辿り着いた。

衛兵が敬礼する。扉が開く。

中に入ると――

広い執務室。壁一面に地図。机の上には書類の山。

そして、窓際に立つ一人の男。

黒い軍服。鋭い目。四十代半ばくらいか。背筋が真っ直ぐで、まるで刃物のような存在感。

「総統閣下。結城ハルトを連れて参りました」

中佐が敬礼する。

男――総統は、ゆっくりとこちらを向いた。

「……ほう」

低い声。

「これが、噂の『戦略顧問補佐』か」

総統は俺に近づいてくる。

俺は動けなかった。

理由は分からない。でも、この男からは――何かが出ている。

プレッシャー? いや、違う。

殺気だ。

「結城ハルト。十七歳。突然現れた異邦人」

総統は俺の目を見た。

「お前が、中佐の尋問で見せた戦術案――実に面白かった」

「……ありがとうございます」

「だが、所詮は素人の思いつきだ」

「え?」

「お前の案は、理論上は正しい。だが現実には通用しない」

総統は地図を指差した。

「左翼突破。夜間潜入。補給線断絶。中央突破。全て教科書通りだ。だが――」

総統は俺を睨んだ。

「敵も馬鹿ではない。左翼が手薄なのは、そこが森林地帯だからではない。罠だからだ」

「……罠?」

「そうだ。敵は我が軍がそこを突くことを予測している。だから、わざと手薄に見せている。実際には、森の中に機関銃陣地がある。お前の案通りに動けば、歩兵は全滅する」

俺は息を呑んだ。

「……なるほど」

「それでも、お前の案は悪くない。発想は正しい。だが――情報が足りない」

総統は俺に一歩近づいた。

「参謀にとって最も重要なのは何か分かるか?」

「……情報、ですか?」

「違う」

総統は断言した。

「想像力だ」

「想像力?」

「そうだ。情報は後からついてくる。だが、想像力は――生まれつきのものだ」

総統は窓の外を見た。

「お前には、それがある」

6

その後、俺は参謀本部に配属された。

正式な辞令が出た。

【結城ハルト / 参謀本部付・戦略顧問補佐官】

待遇は――悪くない。

個室が与えられた。食事も出る。クラスメイトたちも、それぞれの「役職」に応じて配属された。

ただし――自由はない。

外出禁止。監視付き。逃亡すれば射殺。

「まあ、当然か」

俺は部屋のベッドに寝転がりながら呟いた。

突然現れた正体不明の集団。国からすれば、警戒するのは当たり前だ。

でも――

「使える」

俺はそう判断した。

この国は、俺たちを使おうとしている。

それなら、こっちも使えばいい。

生き延びるために。

コンコン。

ノックの音。

「入れ」

扉が開いて、凛が入ってきた。

「ハルト、大丈夫?」

「大丈夫も何も、こっちは快適だぞ」

「快適って……あんた、状況分かってるの?」

「分かってるよ。異世界転移。全体主義国家。監視下での生活」

俺は起き上がった。

「で、凛は? 内務省補佐官って、何やってんの?」

「……書類整理」

「マジで?」

「マジよ。ひたすら書類。法律文書とか、行政命令とか」

凛は疲れた顔をした。

「でも……分かってきたわ」

「何が?」

「この国の仕組み」

凛は声を潜めた。

「この国は、完全な統制国家。総統が全ての権力を握ってる。議会も司法も、全部形だけ。反対する者は粛清される」

「……やっぱりな」

「あんた、それ知ってて参謀本部に入ったの?」

「知らなかったけど、予想はしてた」

俺は窓の外を見た。

「でも、選択肢はないだろ。従うか、殺されるか」

「それは……」

凛は言葉を詰まらせた。

「……他のみんなは?」

「バラバラよ。前線に送られた子もいる。技術部に配属された子もいる。宣伝部の子は、プロパガンダ映画の脚本を書かされてる」

「クラス委員長の大和は?」

「前線将校として、訓練中」

「……そっか」

俺は拳を握った。

みんな、無事でいてくれ。

7

翌日、俺は初めて参謀本部の会議に参加した。

巨大なテーブル。周囲には将軍たちがずらりと並んでいる。

階級章を見ると、全員が少将以上。

そして、上座には総統。

「全員揃ったな」

総統が口を開いた。

「では、作戦会議を始める」

地図が広げられる。

「現在、我が軍は東部戦線で膠着している。敵国バルトリア王国は、国境線に強固な防衛線を築いている。このままでは冬が来る。冬になれば、攻勢は不可能だ」

総統は将軍たちを見回した。

「諸君、何か案はあるか?」

一人の将軍が立ち上がった。

「総統閣下。私は正面突破を提案します。戦車を集中投入し、一気に敵陣を突破します」

「却下」

即答だった。

「敵の対戦車砲が待ち構えている。正面突破は自殺行為だ」

別の将軍が立ち上がった。

「では、航空支援を増強し、爆撃で敵陣を粉砕してから進軍を」

「それも却下。敵国には対空砲がある。我が軍の航空機は貴重だ。無駄に失うわけにはいかない」

次々と却下される。

将軍たちの顔が曇る。

そして――総統が俺を見た。

「結城ハルト」

「はい」

「お前の意見を聞こう」

室内の空気が凍りついた。

将軍たちが一斉にこちらを見る。

何だこの小僧は、という顔。

俺は立ち上がった。

「総統閣下。質問があります」

「言え」

「敵国バルトリアの補給線は、どこを通っていますか?」

総統は地図を指差した。

「ここだ。鉄道が一本、国境から首都まで繋がっている」

「その鉄道を破壊すれば?」

「不可能だ。鉄道は敵国領内の奥深くにある。そこまで部隊を送れば、補給が続かない」

「空挺部隊は?」

「我が国には空挺部隊はない」

「じゃあ、作りましょう」

「……何?」

俺は地図を指差した。

「空挺部隊を編成します。パラシュート降下で、敵の後方に潜入。鉄道を破壊。敵が混乱している間に、正面から攻勢をかける」

室内が静まり返った。

一人の将軍が立ち上がった。

「馬鹿な! 空挺部隊など、我が国にはない! パラシュート降下など、非現実的だ!」

「非現実的?」

俺は将軍を見た。

「他国では既に実用化されてます。技術的には可能です」

「だが、訓練に時間がかかる!」

「三ヶ月あれば十分です」

「三ヶ月!? そんな時間はない!」

「あります」

俺は地図を指差した。

「冬まであと四ヶ月。三ヶ月で訓練。一ヶ月で作戦実行。ギリギリ間に合います」

将軍は言葉を失った。

総統が口を開いた。

「……面白い」

「総統閣下!?」

「結城ハルトの案を採用する。空挺部隊を編成しろ」

「ですが!」

「命令だ」

将軍たちは黙った。

総統は俺を見た。

「結城ハルト。お前がこの作戦の責任者だ」

「……え?」

「空挺部隊の編成から訓練、作戦立案、全てお前に任せる」

「ちょっと待ってください。俺、まだ補佐官ですよ」

「では、昇進させる」

総統は宣言した。

「結城ハルト。お前を『参謀本部作戦部長』に任命する」

室内がざわついた。

俺は呆然とした。

「さ、作戦部長……?」

「不服か?」

「いや、そういうわけじゃないですけど……」

「ならば、受けろ」

総統は冷たく笑った。

「お前の言った通りにやれ。もし失敗すれば――銃殺刑だ」

8

その日から、俺の地獄が始まった。

空挺部隊の編成。

パラシュートの開発。

降下訓練。

作戦立案。

全て、俺が指揮することになった。

クラスメイトの中に、航空技術者に配属された奴がいた。名前は田中ケンジ。理系でメカオタク。

「ハルト、マジかよ……パラシュート作れって?」

「作れるだろ?」

「理論上はな。でも、実験もしてないのに」

「じゃあ、実験しろ」

「誰が飛ぶんだよ!」

「……俺が飛ぶ」

「は?」

俺は真顔で言った。

「俺が最初に飛ぶ。それで大丈夫なら、他の奴も飛べる」

「お前、死ぬぞ」

「死なないように作ってくれ」

ケンジは頭を抱えた。

「……マジで無茶苦茶だな、お前」

「今更だろ」

三ヶ月後――

俺は本当に飛んだ。

輸送機から飛び降りた。

パラシュートが開く。

風を切る音。

地面が近づいてくる。

着地。

「……生きてる」

俺は笑った。

「ケンジ、お前天才だわ」

無線越しにケンジの声が聞こえた。

『当たり前だろ! お前を殺すわけにいかねえんだよ!』

そして――

空挺部隊が完成した。

総勢五百名。全員が厳しい訓練を乗り越えた精鋭。

作戦決行は、明日。

9

作戦名は『鉄槌作戦』。

深夜零時。

輸送機が離陸する。

俺も乗っていた。

空挺部隊を率いて、敵国領内に降下する。

「緊張してるか?」

隣に座っていたのは、クラスメイトの一人。前線将校に配属された武藤隼人。元サッカー部のエース。

「まあな」

「俺もだ」

隼人は笑った。

「でもさ、ハルト。お前が立てた作戦なら、信じるよ」

「……ありがとな」

やがて――

降下地点に到着。

「全員、準備!」

扉が開く。

風が吹き込む。

「降下開始!」

一人、また一人と飛び降りていく。

そして――俺も飛んだ。

夜空に、パラシュートが花開く。

地上には、敵の鉄道が見えた。

「よし――始めるぞ」

俺たちは着地して、すぐに行動を開始した。

鉄道に爆薬を仕掛ける。

警備兵を無力化する。

そして――

「起爆!」

爆発。

鉄道が吹き飛ぶ。

「成功だ!」

同時刻――

前線では、我が軍が総攻撃を開始していた。

敵は混乱している。

補給が途絶えた敵軍は、次々と撤退を始める。

そして――

勝利。

我が軍は、国境線を突破した。

10

帰還後、俺は総統に呼び出された。

「結城ハルト」

「はい」

総統は俺を見た。

「見事だった」

「ありがとうございます」

「お前は、本物だ」

総統は立ち上がった。

「結城ハルト。お前を『参謀総長』に任命する」

「……は?」

「参謀本部の全てを統括しろ。我が軍の頭脳として」

俺は言葉を失った。

参謀総長――それは、軍の最高位の一つ。

「総統閣下……俺、まだ十七ですよ」

「年齢など関係ない」

総統は断言した。

「お前には才能がある。それだけで十分だ」

そして――

総統は俺の肩に手を置いた。

「結城ハルト。お前は、この国を勝利に導く」

その言葉が――

どれだけ重いか、俺はまだ知らなかった。

続く

引き続きお楽しみください

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