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戦えない母は赤ちゃん抱いて異世界にいた  作者: くじら


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第4話:森の奥で見つけた、暮らせる場所





小さな光の帯に導かれ、私たちは森の奥へ進んだ。


昨日とは違い、視界が開けた場所に出る。

そこには、木で作られた小さなログハウスがぽつんと立っていた。


「……森を管理している人の小屋かな……?」


ログハウスの周りには、簡単な柵がぐるりと巡らされ、家庭菜園や小さな井戸まで見える。

誰かが普通に生活しているような雰囲気。

でも、人気の気配はない。


恐る恐る、柵の扉を手で押す。

小さく「きー」と音を立てながらも、簡単に開いた。


「すみません……誰かいますか……?」


返事はない。

緊張で少し声が震える。


すると、光の帯がふわりと私の周りを舞った。

そしてログハウスの扉の前でパッと消える。


「……入れってことよね……?」


勇気を振り絞り、扉の取っ手を回すと、あっさり開いた。

「お邪魔します……」


シーンと鎮まる室内。

息を飲みながら一歩足を踏み入れると、そこには予想以上の光景が広がっていた。


室内は木のぬくもりに包まれ、整然としている。

木の床、無垢材の壁と天井。

まるで誰かが大切に使ってきた家のようだった。


右手には簡素なキッチン。

木のシンクには水が溜まっており、蛇口をひねると澄んだ水が流れた。

水は冷たく、口に含むとすっきりと美味しい。


「……すごい……ちゃんと使える……」


隣には薪置き場があり、鉄の鍋やフライパンが整然と置かれている。

コンロはないが、薪で調理する仕組みらしい。


左手には清潔なトイレのドア。

中には小さな洗面台もあり、生活に必要な設備が揃っていることが分かる。


奥には寝室。

布団や毛布が整然と並べられ、窓から差し込む朝の光が柔らかく部屋を照らしている。


「……え、ここ……すぐに住めるじゃん……」


マザーズバッグを下ろし、遥斗を抱き直す。

息子はまだ眠っている。小さな寝息が、私の胸をさらに落ち着かせる。


窓際の床には、小さなランタンが置かれ、灯すと柔らかな光が部屋全体を包む。

木の香りと温かさに、自然と肩の力が抜けた。


「……ここで、しばらく過ごせそうね……」


外を見ると、ログハウスを囲む柵の向こうで、昨日の光より少し青みがかった精霊の光が漂っている。

森の中にぽつんと立つこの小屋が、まるで私たちを守ってくれるようだった。


「ありがとう……って、言うべきなのかな……?」


小さく呟き、私は遥斗を寝室に寝かせる。

布団に優しく置くと、安心したように眠り続けた。


「……まずは、ここで生活の拠点を確保しないとね」


キッチンの水を触って確認し、薪の準備を少しだけ整える。

明日の食事のことも少し考えた。

この森にどう暮らすか、まだ分からないことだらけだけど、少なくともここは安全だった。


小さなログハウス――

それは、私たち親子にとって、異世界で初めて見つけた「暮らせる場所」。


胸の奥に小さな安心が灯る。

森はまだ謎に包まれているけれど、この瞬間だけは、守られている。


「ハルくん、ママが守るからね……ここで一緒に頑張ろう」


柔らかな光の中、そう誓いながら、私は眠る遥斗を抱き寄せた。

今日から私たち親子の、森の生活が本格的に始まる――



――その頃、王都では――


街は騒然としていた。


魔の森から、次々と魔物たちが飛び出してきたのだ。


高位の魔物、中位の魔物、魔獣たちが一斉に散らばり、城下町は混乱の渦に包まれる。


聖教会は二日前、魔の森の中央から発せられた凄まじい波動を感知していた。

司祭たちは緊急警報を発し、人々は恐怖に震える。


「……あの森で、いったい何が……」


だが、森の奥――ログハウスで静かに眠る親子は、まだその危機に気づいていない。


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