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戦えない母は赤ちゃん抱いて異世界にいた  作者: くじら


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第15話:疾走




ビッツは森を全力で駆けていた。


枝が頬を掠める。


肺が焼けるように痛い。


それでも足は止まらない。


「……くそっ」


吐き捨てる。


本当は断りたかった。


あの人間の女のせいで、


レオはあんな目に遭っている。


王都の人間に連れて行かれようと、


放っておけばよかった。


それなのに。


鉄格子の向こうで、


レオは笑って言った。


――頼みがある。


ビッツは歯を食いしばる。


「……ふざけんなよ」



何が頼みだ。



あんな表情



見たこともない。



もう、覚悟を決めた表情。



昔、父親が最後にした表情と被る。


ビッツは舌打ちし、枝から枝へ飛び移る。



身体能力の高い獣人のビッツにしてみれば、地面を走るより遥かに早い。



しかし、それでも遅く感じる体感時間。



「どれくらい走った?」


分からない。


時間の感覚など、とっくに失っていた。


王都の集団より一秒でも早く――


あの場所へ行かなければならない。


焦りが判断を鈍らせていた。


――その代償に気付くのは、もう少し後になる。


ビッツは森の中を走り抜けながら



人化を解いていく。


白い毛に覆われた巨体。


灰色の瞳。



パサリと衣服が落ちる。



しかし回収する暇もなく、ビッツは先を急ぐ。



王都の集団は、まだ遥か前方。


森の奥を回り込み、出会わないように追い越していく。


知らせなければ……。


だが、なんと伝える?


王都の醜悪さを?

レオが捕まった経緯を?


……信じるとも思えない。


それに美和が精霊の愛し子と言えど、レオさんが助かるかも分からない。


精霊は気まぐれで、人間に手など絶対に貸さない。


美和も俺たち獣人の事など、どうでも良いと思うかもしれない。


人間とは醜悪で、欲深い生き物。


それがビッツの認識だった。


美和も例外では無いだろう。


いっその事、王都連中に連れて行かれた方が良いのかもしれない。


もしかしたら、優雅な生活を送れるのかもしれない。


いや、その場合、あの赤子は?


そこまで考え、ビッツは頭を振る



いいや、迷うな。



人間がどうであれ、ビッツはレオの最後の頼みを聞くだけ。


その瞬間。


――ドスッ。


「……ガアッ!」


ビッツの身体が地面に叩きつけられた。


腹に突き刺さる三本の矢。

脚にも一本。


そして最後の一本が――

背中に食い込んでいた。



「よしっ!命中!」


その矢には王都連中の刻印がされていた。


「おい、見ろ。動く的だ」


「ちょうどいい。次、誰が先に当てる?」


ガチャガチャと金属の音を響かせ、鎧に身を包んだ騎士達がビッツに向かって来る。



ビッツはヨロリと身体を揺らしながら起き上がると低く唸りを上げる


しかし、戦うことはせず。


ザッと駆けて行く。


美和の元へ


「……逃げたぞ!追えっ!」


騎士達の怒号が森に響く。


だがビッツは振り返らない。


ただ、走る。


レオの最後の頼みを胸に。





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