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戦えない母は赤ちゃん抱いて異世界にいた  作者: くじら


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第12話:王が踏み越えたモノ





王都の門を潜った瞬間、レオとビッツは足が重くなるのを感じた。


外見だけ豪華で煌びやかな王城へ向かわねばならないという事実が、足取りを鈍らせる。


思い出すのは禁足地の澄んだ空気。

一定に保たれた室温。

――あれはきっと、美和の為のものだ。


石畳を踏みしめながら、レオは無意識に懐の袋へ触れた。


――蓮茶。


何も知らなかったビッツに説明するのは簡単だった。

それが貴重なフルポーションだということ。


そのフルポーションを、あれだけがぶ飲みしたビッツは、帰路で青ざめていた。


「お、俺、10杯は……飲んじゃいました……」


苦笑するレオの横で、ビッツは指を折る。


「10杯……金貨10枚以上……。どうりで飲んだ瞬間、身体が軽くなったと思った……」


「あぁ〜勿体ないっ!」


嘆く声が、石畳に虚しく響く。


そんな道中、二人は決めた。


蓮茶の報告はする。

だが、提出はしない。


この王都の上層部が腐っていることなど、とうに知っている。


国家管理級の代物を渡せばどうなるか。


金に変わり、私腹を肥やすだけ。

本当に必要な者の手には渡らない。


(これは……切り札だ)


そう決め、二人は城へ足を踏み入れた。


長く待たされた後、謁見の間へと通される。



「此度の調査、ご苦労であった。表をあげよ」


重厚な声が響く。


「では、冒険者レオ、報告せよ」


レオは顔を上げ、淡々と告げる。


禁足地の異常。

森が鎮められていること。

精霊が常時集結していること。

ログハウスの存在。


そして――


「……国家管理級と推測される蓮茶、別名フルポーションを、そこに居た人物に……提供されました」


ざわり、と空気が揺れた。


普通なら禁足地に居ると言う人物に争点が当たるものの、蓮茶と言うイレギュラーに、その場に居るもの達の思考は飛んで行く。


「なんだと? 真か?」


「獣風情の冒険者にか?」


「惜しげもなく?」


欲と嫉妬の視線が突き刺さる。


レオは奥歯を噛み締める。


一瞬、躊躇った。


美和の存在を――この場に晒していいのか。


だが。


(これは……任務だ)


報告は義務。

感情は不要。


目を閉じ、そして開く。


「そのログハウスに……精霊の愛し子が居ました」


その瞬間、場の空気が変わった。


そして、そこに居る全ての者が愛し子の存在に打算的な想像を巡らす。


ザワザワと騒がしくなる室内。


ある者は自身の欲の為。


ある者は自身の見栄のために。


それぞれが動き出す。


そんな貴族達を


「えぇい、皆の者!黙れ! そこの冒険者! そ、それはまことか!? 愛し子とな!」


王冠を戴く男が声を張り上げ黙らせる。


「……はい、真実です」


レオは奥歯を噛み締め、美和の笑顔を思い浮かべる。


王は一瞬考える素振りを見せ、ニヤリと笑った。


「……して、それは女か?」


レオは一度、唇を結ぶ。


そして何度も自身に言い聞かす


我慢だ。


我慢しろ。


手を出して困るのは俺だけでは無い。


レオは感情と言う感情をグッと胸の奥に押しやり、歪む顔をなんとか調え、絞り出すように言葉を呟く。


「……はい」


「おぉ! 女か! ……ふむ」


沈黙。


だがそれはただの沈黙ではない。


獲物を前にした獣の光が、上座から漏れる。



レオの葛藤を知りながら


会議の隅で、ビッツは黙って立っていた。


その場の空気のように溶け込み、自身に矛先が来ないように気配を消してた。


だが、そんな努力も虚しく王の醜悪な感情が向く。


「して、もう一人の冒険者よ」


王の欲に塗れた瞳を見ながら、ビッツは感情を落とし口を開く。


「……はい」


「そなたの歳はいくつだ?」


「……人間で言う16になりました」


「獣は16で成人だったな」


「王よ、成人ではなく成獣です」


「分かっておる!」


苛立ちを隠さぬ声に場は静まり返る。


「して、その女はお主より若いのか?女は若ければ若いほど良い」


その言葉にレオの眉が寄る。


飛び掛かりたい衝動を必死に押さえる。


「……恐らく、同じ位かと」


感情のない声。


「赤子の方は、まだ話も出来ない様子でした」


その言葉に王が反応する。


「何っ! 赤子!? 愛し子は婚姻済か!?」


「........父親の姿は見当たりませんでした」


事実だけを、淡々と。


王は顎に手を当てる。


「ふむ、高位貴族に娶らせるか……いや、力の均等が崩れるかもしれん。やはり余が....」


1人で勝手に呟き結論を出したらしい王がにこやかに声を張上げる。


「その方、その女の容姿を申せ」


「王よ! 愛し子に容姿は関係――」


「黙れ! 余はソレに聞いておる!」


レオの声は怒声に掻き消える。


今ほど、自分の無力さを思い知ったことはない。


ビッツはそんな王とレオを横目に息を吐く。


「黒目黒髪で……私より少し低い身長。綺麗というより、可愛い方かと」


感情を殺してビッツは言い聞かす。


思い出すな。感情を殺す事など簡単だろ。


何も考えるな。


笑顔も温かさも。アレは俺には関係の無い生き物だ。


「王よ!1つご提案があります。赤子に私は興味が――」


発言した貴族は、最後まで言えなかった。


突然倒れ、運び出される。


誰も気に留めない。


だけど、それは偶然では無く


精霊によるもの


だが、その場にいる者の中で

精霊の姿が見えているのはレオとビッツだけだった。


「軟弱な者め」


王は嫌そうに手を振り、話は続く。


(あれは……精霊......いつの間に......)


喉まで出かかった言葉を飲み込む。


目で精霊を追いながらも口をゆっくり開く


ここで解答を間違えたら詰む。


「あれは……ただの赤ん坊っす」


心の中で何度も唱える。考えるなと。


王は何も気付かず


「女は金と宝石を与えれば従う。。心を開くのも早かろう?まずは籠絡するとしよう」


下卑た笑い。王の言葉に続くように貴族の1人がオロオロと話し出す。


「赤子は如何なさいますか?」


一瞬の沈黙。


「余は愛し子が欲しいのであって、煩い赤子は不要だ」


軽い声。


「不必要なモノは排除するのが一番よかろう?それか.....うむ.....


愛し子の実の子供なら、高く売れるやもしれん。珍しい血だ。欲しがる国もあろう。」


空気が凍る。


レオの拳が、わずかに震えた。


「王よ!それはあまりにも.....」



その頃、禁足地。


王都の事など知る由もなく、森は静かだった。


美和は籠を持ち、野いちごを摘んでいる。


「わぁ、いっぱい」


遥斗はご機嫌だ。


棘が触れそうになった瞬間、枝が消え、実はより甘く赤く色づく。


精霊がフワリ舞い上がる。


美和は気づかない。


遥斗は、くしゃりと笑った。精霊も嬉しそうに美和の周りをクルクルと周り漂う


しかし、ふと思い出すのはレオ達の事だった。


「レオさん達、大丈夫かなぁ」


不安気な面持ちで呟くのを遥斗はその瞳で見上げていた。


そして美和の過敏な気持ちを汲み取ったのか


その一言で、遥斗の表情が徐々に曇る。


精霊がざわめき、空気がゆっくり重くなる。


それは風に乗り、王都へ届く。


魔術塔の結界が波打つ。


「禁足地方面から魔力波動! 等級……測定不能!」


レオはそれを地下牢の狭い空間で微かに見える格子越しの空を見つめ呟いた


「.......これは」



その翌日。地下牢でレオは膝を付き聞かされてた。


「勅命である!」


「愛し子の迎えの護衛団に冒険者レオを案内役とする!よって、今回の冒涜罪は不問とする」


「さらに愛し子を速やかに確保し、連行せよ!」


「赤子は不要。愛し子のみ連行!」


血の気が引くとはこの事。レオは青い顔のまま呆然とその言葉を聞く。


「愛し子美和を王の側妻とする!」


そして嘲笑。レオは笑わずに居られなかった。俯き震えながら笑うのを我慢するレオ


そのレオを痛ましく見る勅命官


「無事、愛し子を届けた歳、褒美を与える以上!」


レオは思わず顔を上げる。



―――褒美?


そんなモノ


誰が欲しいと思うか


胸の奥で何かが軋む。


(……間違えたか)


だが。


あの異常な精霊の数。


そう簡単に事は進まない。


――これは想像でもなく、確信。





下衆い!!!とことん下衆い!書いててムカムカしました!

最後まで読んでくれてありがとうございます!!!

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