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おわりに
エーテル世界をめぐる数多の口伝、断片的に残された報告書、そして異なる時代や視点から語られた記憶の記録は、そもそも歪みを含むのが常である。
それは欠落ではなく、この世界の呼吸そのものだ。
語り手が変われば形も変わり、時が移れば解釈も変わる。
その歪みからこそ、新たな物語は生まれつづける。
私は生涯をかけて、それら散逸した記録を掬い上げ、可能な限りの整合と矛盾を抱えたまま一つの「文明記録」としてまとめた。
これらは完成ではなく、あくまで“途上の地図”である。
記録の先に眠る真実を見つけるのは、もはや私ではない。
それを読み解き、繋ぎ、別の形へと紡いでいくのは、あなたたちだ。
この果てしない断片の旅路に、最後まで寄り添ってくれてありがとう。
どうか、ここに残された資料のすべてが、次なる探求者の手で再び息を吹き返し、新たな物語となって歩み出すことを願っている。
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エラリウス・フェイブル




