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市場と庶民の日常

――サンストーン・カリフェートの市場に、今日も陽光が降り注ぐ。

白い石畳の上で、金糸の天蓋がきらめき、風に乗って香草の匂いと笑い声が流れる。

人々の声が溶け合い、光そのものが歌っているかのようだった。


「おい、今日のトマ果は太陽が二つ入ってるぞ! 甘さが違う、ほら、噛んでみな!」

「うそだよ、昨日のより皮が固いじゃないか!」

「そりゃ昨日のは光雨ひかりあめを浴びたやつだ、そんなもん比べたら俺が泣く!」

――こんな掛け合いがそこかしこで聞こえる。


貨幣は「ソル金貨」「ルメン銀貨」「シャール銅貨」。

一ソルは十ルメン、百シャールにあたる。

民は稼いだ銅貨を太陽にかざして、「今日も光の恵みにありがとう」と笑うのが習わしだ。


庶民の仕事は多彩だ。

石工、荷運び、香草売り、裁縫師、祈祷補助、給仕娘――

一月の稼ぎは三ルメンから五ルメンほど。

多くは朝焼けから働き、夜の祈りの鐘が鳴るころに帰る。

それでも笑い声が絶えないのは、この国の陽気な気質ゆえだ。


「なあ兄ちゃん、今日も荷台引きかい?」

「おうよ! 昨日より一袋多いが、太陽もまだ元気だからな!」

「ははっ、じゃあ終わったら露店で一杯やろうぜ、冷やし香果汁でな!」


住まいもまた、光に合わせて選ばれる。

一人暮らしの男は下層区の宿屋や共同長屋で暮らし、

月に三百から五百シャールの部屋代を払う。

寝台と机、それに窓辺の壺花があれば十分。

「陽が入るだけで飯がうまくなる」――そう言って笑う者もいる。


一人暮らしの女は、神殿裏や香街の安全な区で暮らす。

月に五百から七百シャール。

部屋は狭いが、花の香と光が満ちている。

「陽を遮る壁は嫌い、朝に光を浴びないと顔の艶が落ちるの」

――そんな冗談を言いながら、鏡に光を映す娘もいる。


家族持ちなら、郊外の土壁の家を借り、

月に一ソルほどの家賃を払う。

子どもが屋根の上で光を浴び、母が香草を干し、父が竜皮の修繕をする――

そんな穏やかな光景が昼下がりの街を飾る。


日用品は、民の暮らしを支える太陽の贈り物だ。

木皿十五シャール、粗布の衣百二十シャール、

香油の小瓶五十シャール、灯油壺八十シャール。

祭りの時期は品が跳ね上がるが、

それもまた“光が多く集まるから”と笑って受け入れる。


武具の露店では、鉄片の短剣が一ソルに満たず、

鋼の剣は五ソル、光鋼の鎧は二十ソルを超える。

「兄ちゃん、この剣、竜の鱗も裂けるぜ!」

「おいおい、そんな竜、俺の財布が裂けるわ!」

「じゃあ鱗は無理でも、奥さんの機嫌ぐらいなら取れるさ!」

――市場の武具商人と冒険者の笑いが響く。


町商人は店を構え、信用で暮らす。

行商人は風と砂を相手に、遠国の香と宝を運ぶ。

「おう、マリム! この前の香油、最高だったぞ!」

「だろ? 砂海越えた甲斐があったさ! 盗賊が二度も出たけどな!」

「命張って仕入れた香りか、そりゃ重みが違うな!」

――そんな風に、彼らは助け合いながら笑って生きる。


町商人は安定の光を、行商人は自由の風を掴む。

利も損も日替わりだが、どちらも太陽の子。

互いが互いを照らし合い、光の循環を作り出す。


夕暮れ、香の煙が立ち昇るころ、

市場の灯がゆっくりと黄金に染まる。

子どもが駆け、商人が笑い、

果物の香りが風に乗る。


誰もが今日を生きたことを誇りに思う。

なぜなら――この国では働くこと、笑うこと、祈ること、

そのすべてが光の証なのだから。


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