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英雄列伝

霧想の老導師 ヴァルド=アーキウス

(通称:“世界屈指の大魔道師”)


一、概説

エーテル世界において、魔術理論の礎を築いたとさえ言われる老導師、ヴァルド=アーキウス。

軽妙な話しぶりと飄々とした性格で知られ、本人は常に「たいしたことない」と笑うが、その実力は大陸規模の事件史に幾度も名を残すほどである。


ただし、偉業と同数の「やらかし」も残しており、世界屈指の大魔道師にして世界屈指の問題児という珍しい評価を受けている。


二、外見と気質

一見すると気の抜けた老人で、ぼさぼさの長髪に大きな帽子、腰は少し曲がっている。しかしその瞳だけは常に鋭く、魔力の流れを読み取るかのように揺らいでいる。


性格は飄々としているが、**「気づいたら大魔術の詠唱を始めている」**という危険な癖がある。

本人曰く、


「思いついたら試したくなるじゃろう? 若いうちにしかできんぞ」

と語るが、当時すでに百歳を越えていたため、周囲は聞くたび頭を抱えたという。


三、武勇と失敗談

特筆すべきは、かつての 《霧断の殲滅陣きりだんのせんめつじん》暴走事件 である。


ヴァルドが敵対勢力の大部隊を一掃しようと展開した大規模魔術は、詠唱途中で

「あれ、次なんじゃったかのう?」

と、呪文の一節を忘れたことで術式が崩壊。


膨れ上がった魔素が暴走し、街ひとつを丸ごと呑み込む寸前までいった。

最終的には、その場の即興で新しい魔術理論を編み出して収束させたため被害は最小限で済んだが、帝国魔術院に残る公式記録には次のように書かれている。


「世界はたった一言の詠唱忘れで滅びかけた」


以来、魔道師たちの間では

「術式は書いて持っていけ」の教訓が広まった。


四、後進育成

晩年、ヴァルドは各国を巡り、若い魔道師たちを“ついで”に教え始めた。

彼の授業は自由奔放で、

魔術理論の基礎 → 亜空間論 → 午後は実習(ほぼ爆発)

という破天荒なカリキュラムで知られる。


それでも彼の教えを受けた者からは、数多くの大魔術師・宮廷魔導顧問・禁術研究の権威が育ち、「ヴァルド学派」と総称されるほどの流派となった。


ただし、彼の弟子たちは口を揃えてこう漏らす。


「先生の魔術はすごい。でもあの人の尻拭いはもう二度としたくない」


特に晩年は、教え子が彼の後始末をすることが“卒業試験”扱いとなっていたという。


五、後世への影響

ヴァルドの残した魔術書は、難解な落書きや、途中で話が脱線する講義録、意味のないようで意味がある呟きの断片で構成されており、「読める者が読め」と評されている。


しかし、魔術研究においては決定的な理論を多数提示しており、後世の学者たちは

「大陸史上もっとも天才的で、もっとも迷惑な魔道師」

と結論づけている。

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