ダンジョン ― 生態・社会・法体系総合資料
■ 1. ダンジョン生成理論
大気中の魔素が雨水に溶け込み、石灰質地層へ浸透することで侵食が進み、多層構造の洞窟網が形成される。
石灰層は濾過機能を持ち、有機汚染物質を除去しつつ内部に純粋魔力が蓄積される。
これによりダンジョン内部は、自然界とは隔絶した魔力環境を持つ独立生態圏となる。
■ 2. 独立生態系の成立
蓄積魔力に反応して微生物が発生・突然変異し、これが魔力循環の基盤となる。
外部から迷入した生物が魔力適応を強いられ、種分化・変異・共存/淘汰が繰り返される。
洞内は層ごとに魔力濃度・湿度・暗度・地熱が異なり、階層別生態境界が成立する。
■ 3. ダンジョン階層構造と生態
ダンジョンは上層から下層に向かうほど魔力濃度が高まり、外界との共通性が失われていく構造となっている。
まず地表にもっとも近い**「第零層(地表接触帯)」**は、まだ外界の光がわずかに届き、湿り気のある地帯であるため、外から迷い込んだ生物の姿が見られる。ここではまだ自然界の生態系と地続きであり、侵入者の観察や物色程度の危険性に留まる。
次に**「第一層(淡魔力層)」**に入ると、魔力が微量ながら漂い始め、小型生物や群れで行動する魔物が縄張りを形成し、浅層生態系が確立される。苔や菌に類する存在が広がり、探索者との最初の接触が起きやすい階層である。
さらに進むと**「第二層(漏斗圧層)」**へ至り、魔力が濃くなるにつれて鉱物性の析出物が増え、体表の硬質化や感覚器官の変容を行った魔物が多く棲む。ここでは物理的な攻撃力よりも環境適応力が重要になる。
**「第三層(深層飽和帯)」**では視界がほぼ意味をなさなくなり、魔力霧が常在するため、魔物は視覚以外の感覚で行動する。ここからは生存難易度が跳ね上がり、群知や共感覚に近い認識能力を持つ上位種が現れる。
**「第四層(原核領域)」**に到達すると、魔力はほとんど液化した滴となって天井から落ち、魔力依存を完全に果たした存在だけが生息可能となる。この環境では繁殖方法や生体構造さえ外界とは異なる独自体系へと変化している。
最終的に、**「最下層(核泉域/禁層)」**が存在し、ここは地脈そのものと魔力泉源に直結する領域である。存在そのものが不明瞭で、観測と帰還に成功した記録はほとんど残されていない。この階層への干渉は、都市法により厳重に禁じられている。
■ 4. 崩落と魔物流出現象
洞窟は成長と崩壊を繰り返し、内部構造変動により生息域の喪失が起こると、魔物が外部に大量流出する。
本現象は**「スタンピード」**と呼称され、都市や国家に対する大規模自然災害として扱われる。
■ 5. 宝箱自然生成サイクル
内部で死亡した冒険者の遺品が特定魔物に取り込まれ、その死後に硬質殻として遺留し宝箱状の構造物となる。
人工再現はほぼ不可能であるため、高値で取引される貴重天然資源と認識されている。
■ 6. ダンジョン都市の成立と階層区画
都市は探索者、学術者、商人の集積地として成長し、やがて多層的な生活圏を持つ独立都市へと発展する。
表層には宿舎、解析所、ギルド、鍛冶・魔道具工房が並び、中腹商圏には訓練場や情報取引所、補給施設が広がる。
さらに深部の安全地帯には人々が住み着き、独立した居住文化と地下社会が形成されていく。
■ 7. 都市法体系
都市では資源保護・生態均衡・国家安全保障の観点から、以下の基本法条が制定されている。
無許可潜行禁止
遺品および宝箱の私的占有は重罪
最下層介入の全面禁令
魔物捕獲は登録制
鑑定士の証明なき物品流通禁止
罰則は抑止よりも均衡維持に重点が置かれ、資源循環と危険抑制が根本理念となっている。
■ 8. 黒市場構造
表社会が規制する裏側で、地下都市には未鑑定遺物や禁制魔道具などが取引される非合法市場が存在する。
身元の消去依頼や遺品の出所改竄、禁層由来素材の密売が行われ、そこには「影奉行」と呼ばれる調整者が君臨している。
彼らは治安維持と闇経済の制御を兼任し、表裏均衡の象徴でもある。
■ 9. 地下都市の文化体系
地下居住者は外界から排除された者たちが基盤になったため、地上とは異なる規範を持つ。
光量が少ない環境から時間感覚は水滴周期で測定され、身体より技能を尊重する能力主義社会が成立。
経済基準は貨幣より魔力量に依存し、子育ては共同託児制度が採られ、生存優先の価値観が根付いている。
■ 10. 鑑定士制度
鑑定士はダンジョン文明を支える中心職であり、物品の危険度、価値、年代、魔力残留情報などを解析し、安全な循環利用を可能とする専門家である。
鑑定士には段階的な階級が存在し、最初に認められる者は浅層物品の見分けを担当する基礎的な鑑定士である。
そこから知識と経験を蓄積した者は中層物品の鑑定権を得て、魔力組成や素材由来を判断できるようになる。
さらに高位へ進むと、生態・歴史背景・術式残留情報まで読み解き、危険物の封鎖判断や流通許可を担うようになる。
最上位に到達した鑑定士は「真視官」と呼ばれ、禁層由来物や未記録物に対する法的裁定権すら有し、半ば司法機関に相当する権威を持つ。




