サンストーン・カリフェートを走る馬と走竜
サンストーン・カリフェートにおいて、馬と走竜は共に国の基盤を支える「動く命脈」である。
この国は炎と香光の大地――果てなき砂原と照りつける太陽の下に栄えたため、移動と運搬の技術が文明の中心に据えられてきた。
その中で、馬は民の足、走竜は戦士の翼として発展し、それぞれが異なる用途と文化を築いている。
馬は古来より「陽駆」と呼ばれる。彼らは一般的な家畜として扱われ、交易路の運搬や巡礼者の移動、都市間の郵便・連絡任務に欠かせない存在である。
特に首都から各地のオアシス都市を結ぶ「太陽街道」では、陽駆による中継網が整備されており、
昼夜を問わず荷駄と使者が行き交う。馬の体毛は熱を反射する淡色が好まれ、純白や砂金色の毛並みをもつ馬は「光の祝福を受けたもの」として高値で取引される。
また、陽駆は日中よりも黎明や宵の時間帯に行動することが多く、これは強烈な陽光を避けるだけでなく、太陽への敬意の表れでもある。
彼らの蹄音は祈りのリズムとして音楽にも取り入れられ、馬の存在そのものが文化的象徴として浸透している。
対して走竜は、太古の砂原に棲んだ爬獣の子孫とされ、「砂翼」とも呼ばれる。
大きさは馬と変わらぬが、脚の腱はより強靭で、砂を掻くように走る独特の動きを持つ。
体は細かな鱗で覆われ、乾熱や砂嵐に強く、鼻孔の弁を閉じて砂塵を防ぐこともできる。
そのため走竜は、灼熱の砂漠地帯や岩礫の谷を越える遠征・軍事行動において不可欠な騎獣とされる。
気性はやや警戒心が強いが、主の声や体温を記憶する能力に優れ、調教次第では馬以上の敏捷さを見せる。
軍においては、走竜は「陽刃騎士団」と呼ばれる精鋭部隊の騎獣として知られる。
彼らは砂嵐の中でも隊列を乱さず進むことができ、戦場では主に突撃・偵察・護衛に用いられる。
馬と走竜が混成する「双陽騎隊」は、戦場で最も機動力に優れた部隊であり、
砂上を疾走するその姿は、二つの太陽が並び駆けるようだと詩に詠まれた。
また、王都の祭礼「陽降の儀」では、走竜が金環の飾りを纏い、太陽石の光を反射させながら行進する。
その行列は神々の恩寵を地に映す儀とされ、民衆は光の尾を浴びながら手を合わせる。
走竜の飼育は主に南方の炎砂盆地で行われており、育成を担うのは「ルク=ハーリ族」と呼ばれる専門の血統だ。
彼らは幼体のうちから鳴き声で人との絆を作る独自の調教法を持ち、外地では再現が難しい。
このため走竜の輸出は制限されており、軍や上層貴族のみが正式な所有を許される。
一方、馬は各オアシス都市でも繁殖が盛んで、商人や旅団の所有が一般的である。
こうして馬と走竜は、それぞれの得意とする地で役割を分け合いながら、
サンストーン・カリフェートの移動文化を形づくっている。
馬が人の往来と交易を支え、走竜が国の防衛と威光を担う。
その足跡の延びるところ、香と光の道が続き、太陽の民の文明が息づいてきたのである。




