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亜人と魔物の境界線に関する比較生理学的研究

聖王国サイラスウッド・コンコード 生態学部報告

研究番号:AR-7821

題目:亜人と魔物の境界線に関する比較生理学的研究

報告者:聖機院生態学区 生命形態研究部門 ロマネスコ・ベルデ


一、序論

 本研究は、長らく議論の的であった「亜人と魔物の分類的境界」を、生理学および魔力循環機構の観点から明確に定義することを目的とする。

 両者は形態的な類似性や一部の文化的共通点から、しばしば同根と見なされてきた。

 しかし、近年の魔力共鳴測定および解剖学的観察によって、両者が本質的に異なる体系に属することが明らかとなった。

 本稿は、その差異を整理し、最終的に「別種としての確立」を報告するものである。


二、体内構造および魔石循環系の差異

 最大の相違点は、体内における魔石の配置と循環経路にある。

 魔物の循環系は「直接循環型」であり、体内核に存在する魔石から魔力が血管に直接流れ出す。

 この仕組みは膨大な出力を即座に生み出す反面、制御機構を欠き、魔力の暴走を常に伴う。

 魔力は生命活動そのものと不可分であり、魔石が損壊すれば個体は即死する。

 彼らの肉体は魔力の通路として設計されており、意識は魔力律動の副産物にすぎない。


 一方、亜人の循環系は「間接循環型」と呼ばれ、魔石核からの魔力は一度心臓を経由し、血液に同化して全身を巡る。

 心臓が魔力の律動と生体リズムを同調させることで、安定した代謝と持続的な知的活動を可能にしている。

 この構造的差異により、亜人は魔力を制御する主体性を持つが、魔物は魔力に支配される。

 生理的に見れば、両者の共通祖先を想定することは極めて困難である。


三、神経および脳機能の比較

 魔物の神経構造は単純で、感覚刺激と運動反応がほぼ直結している。

 脳幹部に魔石からの魔力供給管が直接接続しており、魔力の変動がそのまま行動に影響する。

 これにより反射速度は高いが、抽象思考や言語形成はほとんど見られない。

 意識活動は魔石の振動によって擬似的に発生していると推測され、恒常的な「我」の保持は困難である。


 これに対して亜人は、脳皮質構造を発達させており、記憶、理性、情動を分化して処理する機能を有する。

 魔力供給は心臓経由で緩やかに行われ、思考と感情の整合性を保つ。

 言語中枢の発達もこの遅延循環によって生まれたと考えられる。

 したがって、亜人の知的能力は単なる進化の段階ではなく、体内循環構造そのものが前提条件である。


四、進化的見解

 直接循環型である魔物は、自然発生的な魔力結晶生命体に近い。

 環境中の魔素を吸収し、形を得た段階で一時的な生物的機能を持つが、繁殖や遺伝の形式は生物学的なものではない。

 魔物の「種」は遺伝子によらず、魔力場の再現によってのみ生じる。


 対して亜人は、生殖と遺伝によって世代を重ねる生物群であり、明確な遺伝的系譜を持つ。

 魔石は補助的な器官として存在し、生命活動の根幹は生理的機構に依存する。

 この点で、両者は生命の成り立ちから異なる体系に属する。

 すなわち、魔物は「魔力に生かされた存在」であり、亜人は「魔力を利用する存在」である。


五、結論

 本研究の結果、亜人と魔物は同一進化線上の変種ではなく、根本的に異なる起源を持つ別種であることが確認された。

 亜人は生理機能と魔力循環の統合によって理性と文化を発達させた「生命体」であり、

 魔物は魔石の自己増殖と魔力暴走によって形成される「魔力生命」である。

 両者の境界は曖昧に見えても、体内器官構造、循環系、神経発達のいずれを取っても、交差点は存在しない。


 したがって、両者の混血や転化現象は外見上の擬態か、魔石干渉による疑似的変異にすぎず、

 真の意味での共通種は存在しないと結論する。

 今後の研究課題は、両者を繋ぐ“模倣個体”の発生機構を解明し、魔力場における生命定義の再検討を進めることである。





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