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サンストーン・カリフェート(詳細)

サンストーン・カリフェート

― 太陽の血を受け継ぎし光と香の帝国 ―

“われらは光の子、闇を焼く炎の民”


一、概説

サンストーン・カリフェートは、広大な砂海の中心に築かれた神殿国家である。

太陽の神を唯一に戴き、その加護を受けて発展した文明は、光、香、そして祈りをもって世界を支配した。


この帝国は、かつて砂漠に沈みかけた幾多の部族を統一し、

“太陽の血”を継ぐ王朝によって秩序と繁栄を築き上げた。

信仰・魔導・商業が三位一体となり、祈りが貨幣と等価の力を持つ国である。


総人口はおよそ三千二百万人。

人々は朝に祈り、昼に働き、夜に香を焚いて太陽への感謝を捧げる。

それがこの国に生きる者の最も基本的な律法であった。


二、社会構成

この国の社会は、太陽神の加護をどれほど受けているかによって厳格に階層化されている。

最上層には、太陽神の血を継ぐとされる聖光貴族が座す。

彼らは王族や神官長、将軍、総督など、国家の統治を司る存在であり、その一言が国法となる。


その下に光導士と呼ばれる者たちがいる。

彼らは魔導士であり、学者であり、祈りを光に変える香光師でもある。

この層は知識と儀式を担い、帝国の精神的支柱として尊ばれた。


さらに、太陽の秩序を守る聖戦士団、サンガードが続く。

彼らは祈りの力で武具を光らせ、戦場においては神々の軍勢と称された。


その下には一般民であるソル民がいる。

彼らは商人や農夫、工匠として日々の糧を得、太陽の恩恵を信じて働く。

多くの者は決して貴族に反逆しないが、祈りの強さでは決して劣らなかった。


最下層に置かれるのは影民と呼ばれる者たちである。

彼らは“黒暦の夜”に生まれた民として忌まれ、地上の光を許されず、

地下街〈影廊〉で密貿易や裏の商業を担う。

だがその闇もまた、太陽の秩序を維持するための均衡として黙認されている。


三、産業と交易

サンストーン・カリフェートの経済は、「光を採り、香を売り、信仰を運ぶ」ことによって成り立っている。

最も重要な産業は、砂漠の深部に眠る聖鉱山〈アレオンクラフト〉から採掘される光石、サンストーンの採取である。

これは太陽のかけらと呼ばれ、魔導動力の源であり、祭祀の象徴でもある。


次に盛んなのは、光石を用いた魔導工匠術である。

光を宿す装具、浮遊橋、神殿機構の動力装置など、

この国の文明を支える多くの発明がこの技術から生まれた。


香光産業もまた、この国を象徴する柱である。

香光師たちは祈りと香料を融合させ、香油や香煙を作り出す。

それはただの嗜好品ではなく、信仰の儀式、魔導治療、さらには外交の贈答にも用いられる。


農業は、砂漠を流れるソルナ河の肥沃な流域で行われている。

ここではソルグレインと呼ばれる黄金色の穀物や、太陽果と呼ばれる光る果実が栽培される。

この恵みこそ、灼熱の地における奇跡と称えられた。


軍需鍛造も重要である。

光脈鋼ルメナイトを素材に用いた武具や鎧は、祈りを通じて発光し、

戦場において兵士たちはまるで炎の軍団のように輝いた。


四、交易品

この国の市場には、他国では見られぬ品々が並ぶ。

もっとも知られるのはソルヴェール織布である。

光の粒子を織り込んだ布は、見る角度によって色が変わり、神官や王侯の衣に用いられた。


また、フレアオイルと呼ばれる発光燃料も有名だ。

これは光石の欠片を溶かして作られ、煙を出さずに長く燃える。

神殿の灯火や浮遊船の動力源として重宝される。


医療の分野では、ルクサ粉末が広く用いられている。

光石を微粉化したもので、肌に塗ると温光を放ち、傷を癒す効果があるとされる。


ソラリアン蜜酒は太陽果から造られる黄金の酒で、飲む者の肌が微かに光ると伝えられる。

祝祭や献酒に欠かせない聖なる飲み物だ。


祈りを封じた香珠、サンハート香珠もまた重要な交易品である。

珠を割ると光と香が立ち上り、婚礼や葬儀、聖典朗読の儀に使われる。


旅人や兵士には光蜜結晶が人気である。

光蜜を乾燥させた携行菓子で、夜でも淡く輝き、食べると体温が上がるという。


最後に、サンアッシュ陶器が挙げられる。

砂と太陽灰を焼き上げて作るこの陶器は、闇の中でもわずかに輝きを放ち、

王宮の食器や神殿の祭具として珍重された。


五、都市とその顔

首都ソレスは「永遠の光に照らされる都市」と呼ばれる。

人口は百八十万に達し、ソルナ河中流の大オアシス地帯に築かれている。

都市の中心には太陽塔〈アレオンサピラ〉がそびえ、

放射状に伸びる街路は“光の道(Path of Radiance)”と呼ばれる浮遊橋によって繋がれている。

夜になっても空が金色に霞むため、“眠らぬ太陽の都”とも称される。

世界最大の市場〈ルクサ・バザール〉には、神殿と商会が並び立ち、

昼夜を問わず祈りと取引の声が響く。


北方にはアストレイルという都市がある。

星読術の都として知られ、夜ごと天文塔群が砂漠の空を照らす。

ここは魔導学派の中心であり、光と星の理を学ぶ学者が集う。


南方のオリッサンは、光蜜や香珠、織布を海外へ送り出す港湾商都である。

“黄金の波止場”とも呼ばれ、交易船の帆が夕陽に染まる光景はこの国の象徴とされた。


オリセアは、かつて光石の採掘地であったが、黒化サンストーンの発生によって封鎖された禁域である。

今では闇市の伝説が囁かれ、影民の秘密都市とも言われている。


砂漠の軍都ヘリオンでは、サンガードの訓練が行われている。

巨大な“炎の競技場”があり、兵士たちは炎と光の試練を経て聖戦士として認められる。


商人の都エレドンは、商会ギルドの本拠地である。

富が政治を動かす都市とも呼ばれ、

一夜で破産し、一夜で億を得る者が現れる。


そしてティル=サエルは、医学と香光術の学術都市であり、

病を癒やす祈りと技が集う聖地である。

この地の医師は「太陽の癒者」として尊敬され、

他国の王侯までもが彼らの施術を求めて訪れる。


六、商会と経済の裏側

この国の経済を支えるのは、いくつもの巨大商会である。


最も古く、影響力を持つのは〈ルミナス交易連合〉である。

第三光帝アレオニスの時代に設立され、太陽塔建設の資金を提供したと伝えられる。

今では大陸最大の香料・光石輸送網を支配し、

各都市に“光支部”を置いて交易路を守る民兵団〈輝衛団〉を擁する。

現当主ザヒル・アレンダは「商もまた祈りである」と語る現実主義者だ。


〈サンキャラバン同盟〉は、砂漠を横断する“光路(Sunroad)”を開拓した旅商連合である。

かつては盗賊と商人の混成集団だったが、光帝サリアン三世の時代に国家認可を受けた。

“太陽の印章”を持つ者だけが商隊に加わることを許され、

夜の砂漠を進む彼らの列は「動く星河」と呼ばれる。


地下の影廊には〈ノクス商環〉と呼ばれる組織がある。

影民出身の商人たちが結成した密貿易組織で、

表向きは医薬商連合を名乗るが、実際には禁制品や闇香を扱う。

彼らは「闇を運ぶ者こそ光の均衡を保つ」と信じ、

ときに貴族たちと密約を結ぶこともある。


また、王宮区には〈アレオン宝飾商会〉があり、

サンストーンを加工した装飾具を王族や神官に納めている。

彼らの作る宝飾品は「神の涙」と呼ばれ、

身に着ける者を呪いや邪気から守ると伝えられる。

弟子入りには“光血の誓い”と呼ばれる儀式が必要であり、その技術は門外不出である。


七、総評

サンストーン・カリフェートは、

信仰が商を導き、商が国を動かす「祈りの商業帝国」である。

この国において光は貨幣であり、香は祈りの言葉であり、

一つひとつの取引が神への捧げ物であった。


だが、太陽の輝きの裏には必ず影がある。

地下の影民たち、禁香商人たち、そして密約に満ちた貴族の宴。

そのすべてが光の秩序を支えるもう一つの柱であった。


この帝国は、光と闇の均衡の上にこそ成り立つ。

太陽が昇る限り、その影は消えない。

そしてその両方を抱くものこそ、真なる「光の民」と呼ばれるのだ。



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