桜花幕府
桜花幕府(Sakura Shogunate)
東方の大陸に広がる桜の国。春には大地全体が薄紅の霧に包まれ、龍が舞うとされる聖域である。政治体制は武家政権「幕府」制を採り、将軍の称号は「将龍」と呼ばれる。
龍人は古代に龍祖の血を引くことで生まれた高貴な種族であり、人の姿を持ちながら背に翼を生やし、額には角、体には鱗の文様を宿す。寿命は長く、五百年を超えても若々しい姿を保つ。
龍人は生まれながらに「龍脈」と呼ばれる魔力の流れを持ち、その流れに応じて異なる「息吹」を吐く。炎龍は炎の息を吐き戦場を紅蓮に染め、氷龍は冷気を放って敵を凍らせ、雷龍は雷鳴を纏って敵を断ち、風龍は風の刃を操り空戦を得意とする。霊龍は幻術や精神干渉を使う神秘の一族である。これらの属性は血脈によって定まり、家格や役職、儀礼にも影響する。
龍士は武芸・忠義・礼法を極めた龍人の戦士階級であり、龍の力を制御するために刀を媒介として戦う。その刀は「龍刀」と呼ばれ、単なる武器ではなく持ち主の魂を映す鏡であり、心と同調する存在である。
龍刀を鍛える鍛冶師は「龍脈を聴く者」と呼ばれる。彼らは炎と魔力を同時に操り、龍の鱗粉と魔鉱石を融合させて刀を生み出す。鍛冶は神聖な儀式であり、七段階の過程を経て完成する。
第一段階「龍哭」では鍛冶師が炉の前で祈り、龍祖に詠唱を捧げる。空に龍の鳴き声が響けば、神が鍛造を許した証とされる。
第二段階「鱗融」では炎龍族の鱗粉を龍火で溶かし、魔鉱石と融合させて「龍鋼」を生成する。
第三段階「魂打」では鍛冶師が自らの魔力と生命力を込め、鉄を打ちながら刀身に魂を刻む。
第四段階「脈刻」では刀身に「龍脈文」を彫り込み、持ち主の魔力に共鳴させる。
第五段階「祈焔」では刀を「龍焔」と呼ばれる特別な炎で焼き入れる。
第六段階「血献」では鍛冶師が自身の血を一滴落とし、刀と契約を結ぶ。刀はこれにより命を得て意思を宿すとされる。
最終段階「魂鳴」では刀が完成の瞬間、鈴のような音を鳴らす。それは刀が自らの名を告げる瞬間であり、名は刀自身が選ぶ。
名刀として知られるものには、炎龍の将・焔龍斎烈炎が佩いた《紅牙・火哭》がある。鍛冶師は自らの魂を炎に投じて刀を鍛え、刀身には赤き龍火が宿った。戦のたびに刀身は紅く燃え上がり、烈炎の怒りと呼応して咆哮を上げたと伝えられる。最期の戦では彼が龍祖の加護を受け、敵軍五万を焼き尽くしたのち、燃え盛る刀を胸に抱いて炎の中に消えた。その後、空を翔ける赤龍が目撃され、烈炎は龍祖に還ったと語り継がれている。今も紅牙・火哭は炎龍一族の聖堂「赤燼殿」に封印され、祭礼の日には刀身から炎の音が微かに響くという。
《氷霞・白露》は氷龍の姫君・霜華が使った細身の刀である。刃は白銀に輝き、抜けば周囲の空気が凍る。彼女の死後も墓前の氷柱の中で刀身が光を放ち続け、「真の継承者が現れるまで眠り続ける」と伝えられている。
《雷閃・蒼牙》は雷龍族の英雄・蒼迅の太刀であり、振るえば稲妻が走り、空を裂くほどの速さで敵を斬った。彼は最期の戦で主と共に天へ昇り、雷雲と一体化したという。嵐の夜、山頂に立てば蒼牙の刃音が雷鳴に混じって響くと伝えられる。
《霊影・朧月》は霊龍の僧・妙蓮が鍛えた儀式刀で、幻のように揺らぎ、魂を切ることができるとされる。実体を持たぬ敵をも斬る唯一の刀であり、今は寺院「龍塔院」の聖櫃に封じられている。
桜花幕府における最大の刑罰は「首落とし」である。これは名誉を守りつつ罪を償う最終の儀礼であり、罪人は自らの罪を詫び、潔く首を差し出す。介錯を務める龍士は最も信頼された者が選ばれ、一刀のもとに断てば魂は龍祖のもとへ導かれると信じられている。
龍人たちは「龍祖」を最高神として崇め、龍祖の加護を受けた者がこの世と天を繋ぐ「龍門」を開くと信じる。寺院には「龍塔」が建てられ、龍僧たちが四属性の祈りを捧げる。春には「花霊祭」が行われ、桜の花びらを龍火で燃やして龍祖へ捧げる神聖な儀式が催される。
建築は黒瓦と紅柱の城郭、無数の鳥居、山肌を覆う桜林が特徴である。空には龍人の守護兵「天空衆」が舞い、夜には龍火の灯が天へ昇る。風に舞う花びらは龍の鱗に喩えられ、国を護る神気の象徴とされる。
桜花幕府は、将龍を頂点とする龍士政権であり、龍人が統治する国である。彼らは飛行能力と属性ブレスを操り、龍刀を手に戦う。龍刀は龍鋼と魔鉱を融合して鍛えられ、鍛冶師は魂と血によってそれを生み出す。刑罰には首落としがあり、信仰は龍祖と龍脈を崇めるもの。文化は桜、茶、舞、儀、美学、そして龍火の祭礼を中心に形成されている。




