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旧ロートル城跡夜襲戦

記録名称 月影の奇襲

発行機関 グローバル・ハンターズ・コンソーシアム戦史局

クエスト識別番号 GHC-WR-0746

附属任務 侍女救出(努力目標)


第一章 前提 夜雨の旧城にて

深夜一刻過ぎ。霧をはらんだ雨が降りしきる山城、旧ロートル城跡。

崖と石垣が幾重にも重なり、曲がりくねる通路が要塞のように広がっていた。


そこに潜むは盗賊団「黒煙衆」百五十。

見張り三十名を塔や門に散らし、廃城を拠点にしていた。

士気は平凡、夜の長雨が気を緩ませ、幾人かは焚き火の傍らで舟を漕いでいた。


対するは傭兵団「灰鉄のグレイ・アイアン」五十。

団長は歴戦の将、副団長三名を配す。

包囲殲滅戦を得意とする実戦派であり、夜戦訓練を重ねた精鋭であった。


目的はただひとつ、貴族令嬢の救出。

侍女二名も囚われていたが、その救出は努力目標とされた。


第二章 兵装と魔法

傭兵団は斥候五名、剣士十五名、重装盾兵十名、槍兵十名、弓兵五名、魔法師五名の構成である。

使用魔法は二種。


第一は「炎のファイアアロー」。

詠唱十秒、火矢を放ち、照明と撹乱を兼ねる。

小雨により威力は減じたが、夜戦においては心理的効果が大きい。


第二は「石壁ストーンウォール」。

詠唱十五秒、幅二メートル高さ二メートルの壁を創造する。

防壁、退避、敵遮断に有効であり、再行使は五分後である。


第三章 作戦構成 月影の奇襲

五十の傭兵は四隊に分かれた。

斥候・工作隊五名は裏門の破壊と偵察を担当。副団長Bが指揮を執る。

救出班七名は令嬢と侍女の救出を担当。副団長Aが指揮。

主攻隊二十名は正面突入による陽動。団長直轄。

射撃支援隊十名は弓と魔法による援護射撃を行い、副団長Cが指揮する。

残り八名は伝令および後方警戒に回された。


作戦骨子は単純である。

陽動と潜入を同時に発動し、敵の心を揺らして内側から崩すこと。


第四章 戦の始まり 炎、雨に映えて

時刻は零刻五十分。雨脚が最も強くなった瞬間、傭兵団はそれぞれの持ち場へ散開した。


奇襲の合図は炎の矢だった。

闇を裂く閃光が夜空に走り、見張り塔が燃え上がる。

盗賊たちは驚愕の声を上げ、正門へと殺到した。

裏門の守りは空洞となる。


副団長Bの工作隊が静かに裏門を破壊。

副団長Aの救出班がその裂け目から城内へ潜入した。


第五章 月影の救出劇

潜入から五分後、救出班は薄暗い回廊を進み、捕縛区画を発見する。

鉄格子の奥に令嬢と侍女二名がいた。

一人は足を折り動けず、もう一人は所在不明。


副団長Aは短く命じた。

「令嬢を最優先に救い出せ。侍女は後詰に託す。」


令嬢を抱え、撤退を開始。

槍兵が角を固め、盾兵が追撃を防ぐ。

再び放たれた炎の矢が暗闇を裂き、敵の士気を削いだ。


第六章 殲滅と崩壊

十五分後、団長は高所に立ち、赤旗を掲げて突撃を命じた。

主攻隊が正門を突破。槍と盾が火花を散らし、盗賊の抵抗は崩れ始める。

火は城内に広がり、逃げ惑う盗賊たちは互いに押し潰された。

射撃支援隊の矢が雨のように降り注ぎ、盗賊長が討たれた瞬間、戦況は決した。


第七章 雨の終わり 退避と結末

三十分後、救出班が崖道に帰還。

令嬢は無傷で救出。侍女一名も生還したが、もう一名は炎上した塔の下で死亡が確認された。


副団長Aは瞼を閉じ、静かに言った。

「任務は果たした。」


傭兵たちは石壁を展開し、追撃を遮断。

山道を後退し、雨が火を鎮める頃にはすべてが終わっていた。


第八章 戦果と損害

傭兵団の戦死者は二名、重傷四名、軽傷六名。

盗賊団は戦死百余名、重傷二十余名、投降十名。

生き残った者はほとんどいない。

戦闘時間はおよそ四十五分。結果は灰鉄の盾の戦術的完全勝利である。


人質の結末は、貴族令嬢救出成功、侍女一名救出、一名死亡。

努力目標は部分的に未達ながら、主任務は完全達成された。


第九章 勝因と教訓

勝因は三つ。

第一に、完全なる奇襲。裏門突破によって敵主力を分断した。

第二に、指揮統制の妙。団長と副団長三名の連携に一拍の遅れもなかった。

第三に、魔法の心理効果。炎の矢が敵心を焼き、混乱を誘った。


さらに決定的だったのは冷徹な判断である。

令嬢を優先したことにより、戦力を分散させず任務達成率を最大化した。


第十章 後日譚

夜明けとともに旧ロートル城は静寂を取り戻した。

雨は止み、崖の上に立つ傭兵たちの鎧から湯気が立ち上る。

令嬢は震える声で感謝を述べ、団長はただ一言「任務、完遂」と答えた。


この夜襲戦は後に「月影の奇襲」と呼ばれ、

五十の傭兵が百五十の盗賊を討ち、令嬢を救い出した戦として戦史に刻まれた。

報告はグローバル・ハンターズ・コンソーシアム本部に提出され、

灰鉄の盾は信用評価ランクBプラスからAマイナスへ昇格したと記録に残る。


発行元 グローバル・ハンターズ・コンソーシアム戦史局

記録官 ルシアン・トレイス

承認印章 双剣を握る翼蛇紋章

備考 本記録はGHC中央監査機構アルシウス・コードにより真正と認証済み。

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