エルドリア帝国の食文化
食文化の理念
エルドリアの民にとって食うことは生き延び、勝ち取ることである。
食事は安らぎではなく、戦いの延長であり、力を示す儀式でもある。
料理とは獲物の魂を己の血肉に変える神聖な行為であり、それは食と戦の境界を曖昧にする文化である。
主食 血穀と黒麺
荒地でも育つ鉄質の黒穀クロガインは帝国の命綱である。
乾燥と保存性に優れ、戦場でも簡易に調理できる。
黒穀炊き
闇鉄鍋ヴォールポットで煮込み、血脂を混ぜる。
濃厚な鉄香と血の旨味を持つ戦士の飯であり、傭兵たちはこれを革袋で持ち歩き、焚き火で再加熱して食べる。
黒麺
闇茸汁で練られた紫黒色の麺。
夜光を反射して妖しく光るため月を食らう糸と呼ばれる。
皇都では儀式食として、野営では乾燥麺として利用される。
肉料理 戦獣の饗宴
戦場は狩場でもある。
彼らは獲物を討ち取りし敵として食し、肉を通じて魂を受け継ぐと信じる。
焦血獣肉
槍串トゥランスパイクで肉を刺し、焚き火で直焼きする。
焦げと血の香が立ち昇ると同時に、戦士たちは勝利の歌を唄う。
竜鱗干し肉
獣脂と黒塩で漬けた飛竜肉を燻した保存食。
噛むほどに金属のような熱が舌に走る。
傭兵たちは鎧の内側に吊るして乾燥させ、戦闘の合間に齧る。
傭兵たちの野戦食 鉄の焚き火、血の携行食
鋼牙戦団や傭兵団は、戦地を渡り歩く生活の中で簡便かつ儀式的な食事法を発展させた。
野営の夜、焚き火を囲みながらの食事は、戦友と死者の魂を繋ぐ聖儀である。
血煙串
最も一般的な野戦食。鉄片や槍の先に肉を刺し、焚き火で炙るだけの単純な料理。
しかし戦士は焼く前に敵将の名を唱え、血を火に落とす。
それが敵の魂を炎に返す浄化の儀式である。
黒穀団子
黒穀と獣脂を叩き潰して丸め、鉄鍋で焼いた硬い携行食。
一個で一日持つほどの高栄養で、兵士はこれを鉄の心臓と呼ぶ。
焦げた表面に自身の氏族印を刻む風習があり、戦死者の識別にも使われた。
灰煮
鍋がないとき、戦士たちは地面に穴を掘り、炭と石を使って即席の炉を作る。
そこに水と肉と灰塩を投げ込み、焚き火で煮立てる粗野なスープ。
味よりも熱と煙が重要で、飲めば心が再び燃えるとされる。
血乾餅
血を混ぜた穀粉を焼いて作る赤黒い薄餅。
乾燥に強く、戦闘中でも噛み砕ける。
傭兵たちはこれを死なぬ糧と呼び、仲間の血を混ぜて作ることもある。これは友情の象徴である。
灰酒
灰と発酵果汁を混ぜて作る即席酒。
鉄臭く、喉を焼くような強烈な味だが、疲労と恐怖を忘れさせる。
飲む前に火に一滴垂らして戦死者への敬礼を捧げる。
儀式食 月影の晩餐
満月の夜にのみ許される神聖な晩餐。
黒月スープや魂花蜜漬けを通じて、死者と闇の精霊ノクトルに祈る。
調理器具と技法
すべてが戦のため、鉄のために造られる。
彼らの調理具には魂が宿ると信じられている。
ヴォールポット 戦場の携行鍋。黒鉄製で、煮た血が腐らない。
トゥランスパイク 槍型の串。敵の名を唱えながら刺す儀式具。
ノクトル板 魔石製の調理台。肉を切ると魔力を吸収して温かくなる。
影煙炉 煙を上げない黒炭炉。暗殺部隊影手の携行具。
携行血瓶 傭兵が血を混ぜて作る儀式酒を保存する瓶。契約や誓いの証。
飲み物 夜酒と血露
夜酒は闇葡萄を月光に晒して発酵させた酒で、銀の香と血の甘みを持つ高級酒。
戦勝宴で飲むとノクトルの祝福を得ると言われる。
血露は闇樹林の葉から滴る紅露を蒸留した強烈な酒で、傷を癒やす霊薬でもあり、死線を越える傭兵の必需品とされる。
食儀と風習
最初の血を捧ぐ。食前に血酒を一滴地に垂らす儀礼であり、これを怠る者はノクトルの加護を失うとされる。
敵を食らう。勝者は敵の心臓を焼き、血を舐めて魂を受け継ぐ。皇や貴族だけでなく、傭兵たちも小規模に模倣する。
戦場の円卓。傭兵たちは夜営で焚き火を囲み、輪を作って食事する。円は闇と絆を意味し、誰かが死ねばその席は空のまま残される。
代表料理一覧
闇穀団子 黒穀を血脂で揚げた携行食。兵士の主食。
灰鱗煮 灰竜の鱗を煮たスープ。防御強化効果がある。
夜心包み 魔獣の心臓を闇葉で包み蒸す婚礼料理。
血煙串 焦げた肉と血の香が漂う戦場屋台食。
灰煮 即席灰スープ。荒野の傭兵の常食。
血乾餅 戦友の血を混ぜて焼く友情の証。
結語 血と鉄の味こそ、我らの命
エルドリアの傭兵たちにとって、食とは補給ではなく誓いである。
彼らは食卓で戦いを思い出し、焚き火の光の下で闇の神へ祈る。
そして再び、血と鉄の匂いの中に消えていく。
肉は戦を語り、血は誓いを刻む。
我らの腹は、永遠に闇を孕む炉である。




