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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第4章:遥かなる冒険の旅へ
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第88話 思いやり支え合う旅の仲間

「エルル様」

「ええ。待っていてくれたのね」


 樹牢を出ると、ルフが居た。もう夜遅い。エルフ達は皆寝静まっている。


「大丈夫でしたか」

「ええ。もう何ともないわ。あなたのお陰よ」

「そんな……。私は何もしていません」


 ルフには負い目があるのだろう。私の護衛を途中で投げ出したという。だからこの島で、甲斐甲斐しく私の世話を焼いてくれるのだ。


「……ゲン様は」

「出さないわ。許さないし。けれど、彼を生かすのは私の我儘でしょう? だから、これから冒険者として依頼を受けたりして、その報酬の一部を大森殿に納付することにしたの。大長老にも伝えてきたわ」

「エルル様」


 彼の命を、私が握ること。

 私が自由になる上で、精神的に重要だと考えた。

 彼は私に生かされている。


 『そういう遊び』を、これからするのだ。


「ねえルフ。あなた言っていたわよね。仲間を紹介したいって。それ、あなたのパーティメンバーのことでしょう? 街に居るのかしら」

「……!」


 進むべき方向は明確になった。後は、具体的な道だ。

 考えるべきことは沢山あるけれど、やるべきことはシンプルだ。


「……ええ。紹介しましょう。ニンゲンの男性やドワーフも居ますが、よろしいですね?」

「勿論。あなたの仲間だもの。きっと私も、仲良くできるわ」

「では。恐らく今日も酒場で飲み明かしていると思います。エルル様、お酒は」

「飲んだこと無いわ。オルスでは20歳なのよ。やめておいた方が良いかしら」

「そこは、自己判断ですよ」

「ふふっ。そうね」


 世界を見て回る。それが終われば宇宙へ。

 300年という期限はあるけれど、焦って急ぐ必要は無い。






◆◆◆






 ルフの仲間達は気さくで話しやすく、楽しい人達だった。ニンゲンの男性、ドワーフの男性、ニンゲンの女性の3人だった。


 私はお酒を飲まなかった。自分の身体について、まだ分からないことが多いのだ。変な刺激はしない方が良いと判断した。


「……ルフよ。お前、姫さんと行きてえんだろ」

「!」


 ニンゲンの男性、赤い髪のヒートが切り出した。出会って2軒目の酒場で。


「元々このパーティはヒューイから始まった。お前もヒューイに誘われたクチだろ。……お前だけ抜くと後味悪いから解散しようって話てたんだがよ。この姫さん見たら考え変わったぜ」

「え……」


 ヒューイがパーティリーダーだったらしい。半年前に、魔界で死亡した。その魔界での依頼はなんとか終わらせたみたいだけど、療養と供養の為に、しばらくパーティはこの島に留まっていたのだそうだ。

 何故、その魔界の依頼にルフは同行せず、私の所に来ていたのか。


「俺達はまた、魔界を目指すぜ。良いだろ? ルフ」

「……皆」


 ルフは、魔界入りの資格を持っていないのだ。魔法を使えるエルフより。彼らニンゲンの方が強いと判断されている。


「なあ姫さん。ルフを頼むよ。こいつ、普段は気の強え女なんだがな。しかし脆い。上手く支えてやってくれ。姫さんも冒険者になるんだろ? 組んでやってくれよ。ギルドのことも教われるし、双方に良いだろ」

「…………ルフは、どうなの?」

「私は……」


 分かった。こういう話は、酒の席でしかできないのだ。

 機を窺っていたのだ。皆。


「……エルル様は、これからどうするおつもりですか?」

「私はね。まずニンゲン界を巡ろうと思うの。そこで旅しながら、魔界入りの資格を目指すつもり。それで、ニンゲン界を踏破したら魔界よ。本格的にデーモン探しを始めるわ」

「…………それでは」

「ええ。一緒に頑張らない? 魔界入り」

「……!」


 彼らは遠慮せずに魔界を冒険したい。ルフは気負わずに魔界を目指したい。

 これが最善。


「それに、私は生理があって、ひと月に一度、動けない日があるの。あなたが側に居てくれれば、安心して旅を続けられると思うのだけど。頼って良いかしら」

「…………はいっ」


 確かに、ヒューイを喪って今のルフは不安定な気がする。私が、ゲンのことを吹っ切ったからそう見えるのだろうか。

 支え合えば良い。私が不安定な時、彼女が側に居てくれて嬉しかったから。

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