表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの姫  作者: 弓チョコ
第4章:遥かなる冒険の旅へ
80/300

第80話 ルーツを辿る旅の終わり

 ルフの寝室で目が覚めたのは、次の日の夕方だった。私はそれほどに憔悴していたのだ。旅の疲れと同時に出たのだろう。


 大森殿から少し離れた草原の集落。ニンゲンの建築様式にエルフの意匠が施されたハイブリッドな集落だった。


「エルル様。ご体調は」

「…………あまり良くないわ。ごめんなさいねルフ。ベッド、占領してしまって」

「とんでもない。私は海岸に別でパーティの宿屋も取っていますし」

「…………」


 そう言えば、ルフは帯刀していない。この島で会った時からだ。丸腰だ。


「……レン達に、挨拶できなかったわね」

「まあ、また2ヶ月後に来ますから」


 ルフが淹れてくれたハーブティを飲む。暖かい。少し気が楽になる。


「…………どうして、魔封具無しで私を彼に会わせたの」

「えっ」


 私がこんなことを言うなんて。思ってもみなかった。けれど。

 今となっては、この島の危機意識に疑問を抱かざるを得ない。


「……私を、あの樹牢にもう近付けたら駄目よ。いつかきっと、私はあれを壊してしまう」

「…………それは」


 ゲン。そう呼ばれていた。

 私と彼は、会っては駄目だ。強くそう思う。面会が1日5分。ということは、それがエルフの限界なのだ。

 より彼と親和性の高い私は、その5分を存分に使って彼に洗脳されるだろう。母より狡猾で、欲どうしい。彼はずっと、その『5分』の使い方を練習してきた筈だ。ここぞという時の為に。

 私に昨日会って、少し試して。恐らくは最終調整も済んでいる。


 もう会ってはいけない。昨日仕掛けて来なかったのが最後のチャンスだ。


 何よりもう、近付きたくない。あんなしんどい思いをしたくない。あのプレッシャーが無くとも、母を強姦した男などと。


「……あんなに負の、感情的なエルル様は初めて見ました」

「…………でしょうね。私もよ」


 隣に、座ってくれた。もう私とルフの関係は、姫様と護衛ではない。

 親戚のお姉ちゃんだ。護衛の名残で、私を慕ってくれているだけ。私の倍生きている人生の先輩だ。


「よく、捕まえられたわね。彼を」

「…………エルフという種族の、全てを懸けましたから。魔界まで捜索隊を出して。大勢死にました」

「!」


 驚いて彼女を見ると、目が合った。碧い瞳。ああ確かに、こう見るとルフェルと似ているかもしれない。ルフの方がツリ目だ。


「彼は、ニンゲンでありながらエルフの掟をいくつも破ったのです。どれだけ犠牲を払おうと、野放しにしておくことはできません。……大長老様は当時、エルフ達を止められましたが」


 エルフの掟。

 私は知らない。母には教えて貰っていない。


「……聞かせてくれる? その話。全て」

「はい。お話ししましょう」


 ここからだ。

 私が幼い頃から気になっていた父親のことを知る旅。それを通して、自分自身を深く知る為の旅。


 それが今、佳境を迎えている。

 私の人生のひとつの節目が、終わろうとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ