表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの姫  作者: 弓チョコ
第4章:遥かなる冒険の旅へ
77/300

第77話 愚かなる冒険の道

 私は少なくとも、このエデンの島に2ヶ月は滞在することに決めた。出る時はレンの船を使うと約束したからだ。いや確約はしていないけれど。


「フェルナはわしの曾孫じゃ。つまりお前はわしの……何じゃ?」

「ええっと。来孫、かしら」

「そうじゃそうじゃ。賢いのう、エルルは」


 森殿で、まず大長老と食事をした。4人掛けのテーブルに私と彼だけ。彼の背後には若い女性のエルフが数人。中には赤ん坊を抱いている人も居る。私の背後には何故かルフ。もう、母に雇われた私の護衛ではないというのに。


「大長老のご年齢は?」

「『おじいちゃん』と呼んでくれんか」

「…………おじいちゃん」

「ふむ。わしは今年で……。何歳じゃ?」

「大長老。2024歳です」

「おおそうか」


 彼の傍らに、あの老エルフが居る。彼女は背後に居るエルフとは違う立ち位置なのだろうか。


「む。紹介がまだじゃったな。ほれ」


 そんなことを考えていると、その魔力を感じ取られたのか、大長老が彼女に促した。


「……フェルエナと申します。大長老補佐をしています。私は姫様の、曾祖叔母(そうそしゅくぼ)に当たります。大長老の孫で、フェルナの母の、妹です」

「…………曾祖叔母」


 もう、よく分からない。とにかく家族なのだろう。私が末の娘なのだ。


「大家族ではないぞ」

「!」


 大長老が、一瞬鋭く私を見た。


「エルフには、2種類が存在する。……ああ、砂漠とか草原とかそういうことではない。寿命の話じゃ。一般的には長寿と言われておるが、それは全てのエルフに言えるようなものではないのじゃ」

「……分からない。知らないわ」


 エルフの寿命は長い。それは教わった。何千年と生きる者も居ると。それがこの大長老や、フェルエナなのだろう。しかし。大家族ではない、とは。


「賢者と。……愚者じゃ」

「!」


 ここで。

 母の教えと繋がった。ずっと、幼い頃から言われてきた。賢者になれと。

 ずっと、自分は違うと思っていた。私は愚者だと。


「わしの子は全員死んだ。孫はこのフェルエナ以外死んだ。曾孫と玄孫も全滅じゃ。残ったフェルナも、娘を産んで死んだそうじゃの。そしてオルスに居るルーフェも……。いつ報せが来るかと怯えておる。あの大陸は怖い。悪いニンゲンの国じゃ」


 エルフの王族であるアーテルフェイスは。これまでの旅で私が出会ったエルフで全員だった。

 彼はそう言っていることになる。


「……後ろの彼女達と、赤ん坊は」

「ああ。ようやく産まれてくれたのじゃ。エルフは長命である為、子が中々できんでの。レイゼンガルドやイェリスハート……他の里から若いメスのエルフを数人分けて貰ったのじゃ。彼女らはわしの最後の妻達。あの子らはわしの最後の子供達じゃ」

「!」

「この島の森に、オスのエルフはわしだけじゃ。草原のエルフのオス達は、メスを奪われると怖がって森へ入りたがらん。……まあ、海岸のギルドにはオスエルフ自体は沢山おるがの。それも皆、冒険に取り憑かれた愚者じゃて、わしを継ごうという者は居らんのじゃ。……ハーレムだというのに、興味も示さん。そんなに良いのかのう。冒険とは」


 大長老は振り返って赤ん坊を撫でながら、口を尖らせた。

 ああ、そうか。


 分かった。


 彼の子孫達は皆、世界各地に散っていって。

 そこで死に絶えたのだ。

 この島に居れば安全だったのに。

 それが冒険。それが愚者。生きることが生物の目的だとしたら、危険な冒険をすることは愚かであると、そういう理論だ。

 危険な男性とニンゲンを締め出して安住の地を作った母は、やはり賢者だったのだ。何故なら、()()()()()()()()


 私は冒険者になる。つまり、愚者への道を行こうとしているのだ。


 望む所だと、思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ