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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第3章:信念を持つ強い者達
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第71話 殺人エルフを狩る者達

「また近くに来ることがあれば寄るが良い。汝の旅の記憶も面白そうである。その()()も依頼の一部としようの」


 私達はそのまま、館で一泊して。翌日の正午の『火花』を見てから、岬を離れた。


「――血は途絶えても、祈りは潰えず、であるの。ラスよ」


 別れてから、ぽつりと溢した言葉を、私の耳が拾った。

 恐らくピュイアには届いていない。


 ラスというのはこの港町の名前だ。もしかしたら、シャラーラの古い友人の名から付けられていたりするのだろうか。






◇◇◇






「連れてきてくれてありがとうピュイア。私のやるべき方向性が定まったわ」

「あははー! 良かったじゃん! その『旅』さ。船も何度も使うでしょ? 是非アーテルフェイス商会とウチの船をご贔屓にー!」

「ふふ。そうね」


 すっきりした。一本、芯が通ったみたいだ。探すべきデーモンについてもシャラーラから聞いた。

 正直わくわくしている。


 今は、現実の、実際の問題を考えたくないほどに。


「ちょっとすいません」

「?」


 声を掛けられた。ああ、見た目で分かる。どの大陸も似たようなものだから。


 警察だ。ニンゲンの男性がふたり。


「何かしら」

「すいません。ちょっとだけ時間良いですか? ちょっと確認したいことがありまして」


 これだ。

 恐らく誰かが私を見て通報したのだろう。オルスの殺人エルフだと。予想はしていたし、今まで気にしていなかった。


「あなた達の思う通り、いかにも私がエルル・アーテルフェイスよ。どうする? 逮捕するのかしら。魔封具をしていないエルフ相手に、ニンゲンのあなた達が?」

「……こいつっ!」


 即座にピュイアが飛び上がり、空へ逃げる。それは追われない。そうだ。彼らの狙いは私だけ。

 やはりフードは必要だっただろうか。いや、レンを疑う訳ではない。広義では彼だって犯罪者なのだ。その認識の差が出ただけ。


「意外とすぐ白状したな。どいてな警官さん。俺達の出番だ」

「!」


 ふたりの警察官を押し退けて。

 耳。


 黒いコートに見を包んだ、大柄で茶髪をした『男性のエルフ』が。


「すぐ捕まえる」

「……っ!」


 私に手を翳した。魔力が溢れ出る。拘束するつもりだ。その視界の先に、縄が過ぎった。ロープを操る魔法。ああいかにも警察向きの。


 私も飛び上がる。飛翔の魔法。久々に使うけれど、鈍ってはいない。


「良いねえ! 楽しませてくれよっ!」


 ドン。

 物凄い音が鳴った。彼が地面を蹴ったのだ。石の床は砕け、粉塵が舞う。空中の私に、高速で追い付いてくる。

 勢いが、エネルギーが違う。これが、『男性の魔法使い』。


「うっ!」

「はっはぁ!」


 なんとか突撃を躱す。服の一部が掠ってしまった私は体勢を崩す。とにかく離れなければならない。風を全開に吹かせる。


「…………!」


 ちらり、視界に船。

 もう出港したらしい。それで良い。私は飛んで、後から合流する。次の行き先と航路は頭に入っている。

 この男性を、どうにかしてから。


「景気良いなあ! 女とは思えねえ魔力量だ!」


 見るとロープはいたるところで空中に漂っていた。近付けば四方八方から襲い来るだろう。力強く精密。魔法の練度では私に分は無い。


「…………ニンゲンに味方するエルフ……!」


 彼は私を捕らえようとしている。ニンゲンの法律に従って。それで給料を得て、ニンゲンの国で生活しているのだろう。

 なるほど、亜人の犯罪者を捉えるには亜人を起用するのが近道だ。それをすることで彼らは、ニンゲンの社会で相応の地位と賃金を貰えているのだろう。


 彼らが決めたことだ。私が否定できることでは無い。今はいかにして、ここを切り抜けるか。


 生理的魔力侵蝕が治まった直後。私の体調は万全だ。

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