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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
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第298話 憧れる次代の後継者達

「エルル」

「ええ」


 私だけ、残るよう言われた。トヒアは自分の席へ戻っていった。


「すまんな。王族の婚礼の儀は準備が必要で、お主らが旅立つまでには間に合わん」

「構わないわよ。そもそも私、エデンの王族という自覚はあまりないし」

「じゃがやるぞ。お主らが魔界から帰って来た時。種族を挙げて」

「……良いの? 私はアーテルフェイスの自覚が無いし、相手はニンゲンなのよ」

「良い。お主はエルフの姫じゃ。誰が何と言おうと。我らエデンとアーテルフェイスは、お主を受け入れる」

「………………ありがとう。この外交を成功させることで、少しは恩を返せるかしら」

「充分じゃ」


 私は感謝しなければならない。あんな事件があったというのに、その娘である私を受け入れてくれたエデンとアーテルフェイスに。


「それと。お主には紹介しておかねばならん。ほれ、お主ら」

「?」


 ルエフに呼ばれて。


 ふたり。男女のエルフが私の目の前にやってきた。

 若い。恐らく10代。ルエフと比べると分かる。見た目こそ若いけれど、ルエフは魔力が違う。このふたりは本当に若いと分かる。


「エイル・アーテルフェイスです」

「……フェリアス・アーテルフェイス」


 森林エルフ王族の所作で、挨拶。ああ、忘れていた。私も習った挨拶だ。額に手を当ててから、お辞儀。


「エイルが14。フェリアスが13じゃ」

「…………彼女が次代の、『エルフの姫』ね」

「そうじゃ。エイルはこれから姫としての教育を行う。フェリアスはわしの後継者として育てる。ふたりが、次世代のエルフを担うことになる」


 エイルの長い髪は白い。恐らくイェリスハートの血。フェリアスの肌の色は濃い。こちらは砂漠エルフの血だろう。つまりどちらもルエフの子。


 混血という意味では、私と同じか。純血のアーテルフェイスは、ルフェルで終わり。彼女もニンゲンの子しか産まない。その姉であるルフも。


 そして、現エルフの姫である私も。


「……会えて良かったわ。これで私は、思い切り冒険ができる」

「エルルお姉さま」

「『お姉さま』?」


 真面目そうなエイルが、私をそう呼んだ。


「はいお姉さま。エイルは外国、魔界に興味があります。お姉さまの姫としての手腕、このエデンの地から、学ばさせてもらいます」

「…………そう」


 家系図的には、私はルエフの来孫(らいそん)だから……。

 私にとってエイルは、高祖叔母(こうそしゅくぼ)

 フェリアスは高祖叔父(こうそしゅくふ)


 寿命の長い種族はこの辺りぐちゃぐちゃになるわね……。

 まあ、年齢的な観点から、お姉さまと呼んでくれているのだろうけれど。


「エルル……お姉さま。僕は魔法に興味があります。今度、時間があればで良いので、他の大陸や魔界の魔法を教えてください」

「…………ええ。分かったわ。今度の旅が終わって、帰ってきたら。約束ね」


 エイルもフェリアスも、私に対して悪感情は感じなかった。

 私の父のせいで、生まれて。私のせいで、使命を受けたと言っても過言ではないのに。


 冒険者であり、エルフの姫である私に、憧れてくれている。


「…………お姉さま、ね」

「はっはっは。仲良くしてやってくれ。アーテルフェイスはこれから大家族に、もう一度なる。お主らが、する。のう」

「……ええ。そうね。帰ってきたら、昆孫(こんそん)を見せてあげるから」

「楽しみじゃのう! 家族が増えることは幸せじゃ! また寿命が延びるわい!」


 確かに、私が会うべきだった。

 会えて良かった。私が途中で死んだ時の代わりということではなくて。


「ま、まだまだあと数十年は、対外的なエルフの姫はお主じゃがの」

「別に、いつでも継いで貰って良いわよ。エイル、私よりしっかりしてそうじゃない」


 次代のエルフ。この子達の為にも、頑張ろうと思えたから。

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