表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
297/300

第297話 愚かな者を支援する者たち

 本当は、ルーフェとルフェルも呼びたかったのだけど。ルーフェが遠慮したらしいのだ。まあ、流石にもう席は一杯だったから。家もそこまで広くは無いし。


 ということで。


 大森殿。


「あばばば……」

「トヒアあなた、大丈夫?」

「あば……あのねえエルちゃん……。私達庶民にとっては、もはやおとぎ話の世界なんだってばば……」

「ずっと同じ島に住んでるのに」

「だ、大森殿なんて、ギルドマスターくらいしか行かないってば……」


 全員集合だ。

 ルエフにフェルエナ、ルエフの妻達とその子ら。

 ルーフェとルフェル。


 新生ヒューザーズのメンバー達。


 母とメイドに。


 私達トヒア家組。


 流石にアーテルフェイス商会組は来れなかったけれど。


「よう来た! よう集まった! わしがエルフの王、ルエフ・アーテルフェイスじゃ。今宵の酒席は――」


 楽しそうなルエフ。ここは大森殿に用意された巨大な会食場。ニンゲンや他の種族用の食器も並んでいる。

 立食パーティのようだ。まあ、多種多様な人達が集まるし、正式な婚礼の儀でもない。ただのホームパーティの規模を大きくしただけ。


「う……。実感してきた。ウチのアホのジンが、本当にエルフの大事なお姫様を、ふたりも……」

「トヒア。ほら。ルーフェが来たわ」

「はきゃぁ」


 ジンはルフと一緒に、エルフ達に挨拶に回っている。私もそうしたかったけど、この様子のトヒアをひとりにできない。というかトヒア、今日の主役でもあるのに。

 キノは……。ヒューザーズの皆に、ヒューイの話を聞いてるみたい。


「トヒア様。はじめまして。ルフの母のルーフェ・アーテルフェイスと申します」

「ルフの妹のルフェルです」

「は、はじめまして。トヒア……です」


 ルーフェはアーテルフェイスではあるけれど、オルスに居た時も王族であることは隠していたらしい。今も、普通に草原の集落で暮らしている。


「ルフェル。大丈夫なの?」

「今はまだ、多少なら大丈夫ですよ。私も、トヒアさんとキノちゃんにお会いしたかったので。ジン君とは何度か会ったことありますけどね」


 妊娠中のルフェルも来てくれた。流石に、お腹の子の父親候補達は来ていないけれど。

 ……思えばあの水夫さん達とも親族になる可能性があるって、ちょっと変な感じね。


「トヒア。ルーフェは私がオルスから出る時にお世話になったのよ。まあその時は、ルフのお母様だなんて知らなかったけれど」

「そ、そうなんですね……」

「トヒア様。ご子息のジン君は凄いですよ。ルフは結構、恋愛で苦労したみたいで。それが、エルルが認めた相手なんて。これが一番良い結果になったと思います」

「……ただの、貧乏冒険者ですが……」

「何より大事なのは、お互いの信頼です。この3人の間には、それが充分にある。それだけで、ルフの母親としてこんなに嬉しいことはありません」


 最後にルーフェは、私を見た。


「そして、あなた達の仲が良い。良いわね。エルフィナとよりも、親子っぽく見えるわ」

「ふふっ。そうかもしれないわね」

「……エルちゃん……」


 そう。私とトヒアは仲が良い。

 きっとそれは、幸運なのだ。


「父や兄達が居たら、ジン君をどう思ったでしょうね。母さん」

「そうねえ。あなたの仕事も反対していたお父さんは、少なくとも難しい顔をしたでしょうね」


 ルフの父親と兄……ルーフェの夫と息子達は、ゲンを捕らえた際に魔界で亡くなっている。

 できることなら私も会ってみたかった。


「トヒア。ルエフへ挨拶に行きましょう」

「うん……。もうドキドキし過ぎて心臓痛い……」

「大丈夫? 少し休む?」

「……ううん。行く。ジンの母親として、しっかりしないと……」

「私の義母でもあるわよ」

「あはは。そうだねえ」


 よろよろのトヒアを支えながら、ルエフの席を目指す。






◆◆◆






「おじいちゃん」

「おう。よう来たエルル」

「だっ。大長老……さま……。本物……」


 ルエフは相変わらず、姿形は少年エルフだ。2000歳超えとは思えない。きちんと今でも『賢者』なのだろう。


「名は、なんと?」

「……トヒア……です」

「トヒア。冒険者の妻じゃったそうじゃの」

「はい……」


 私はこの時点でルエフが何を言おうとしているのか分かった。

 この人は一生、誰にでもこの話をするのだろう。


「それで喪い、次は息子も冒険に送り出す」

「はい」

「そんな自分を、愚かだと思うか?」

「…………」


 トヒアはもう、ルエフの話の途中からは緊張が抜けていた。きっちりと、妻、あるいは母の顔をしていた。


「思います」

「じゃが、やるのじゃな」

「はい。多分それが、『ニンゲン』です」


 ルエフは当然、笑った。


冒険者(愚者)への支援。それがアーテルフェイスの理念じゃ。愚かな子らを、支えてやってくれ」

「はいっ」


 トヒアも良い返事で返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ