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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
293/300

第293話 天才の思い付く革命的な魔法

 エデン島の、港のある海岸の、反対側。崖になっており、港にはできなかった側。

 大森殿のある山の、外側をぐるりと回って、一面の平原に出た。こちらには集落も無い。広々とした原っぱ。


「私が魔力侵食になるのは、魔法を使う時。魔力を身体に流す時。魔臓(エーテル)から魔力が放出されている時」


 胸に手を当てる。

 鼓動が聴こえる。


 ルフとジンが、少し離れて見守ってくれている。


「けど、魔法にすらならない程度の魔力放出なら、侵食されて動けなくなるまでの時間は相当延びる。私は普段の日常生活でも小さな魔法や些細な魔力放出はしているから。そんな程度では魔力侵食の症状は出ない。…………月に一度の生理までは」


 結局、魔法を使っても使わなくても、月経とそれに伴う魔力侵食症状は起こる。だから。そこは今は良くて。


「問題は、私の魔力瞬発力……魔法の放出速度。私のこの出力は男性並みらしくて、それが女性である身体に負荷が掛かっている。その上、半分は魔力に耐性の低いニンゲンの身体だから、余計に侵食が進んでいくということ」


 魔臓(エーテル)から、魔腺を流れて、体外に放出される魔力。この過程で魔力侵食が起こる。


 それを、どうにかするには。


「………………」


 イメージする。魔力の流れを。完成の形を。

 目を閉じて。両手で、それを持って支えるように。今からそれを、作り出す……。


「……魔臓疑似生成エーテル・リクリエイト

「えっ!」


 ルフの驚く声。

 目を開けると、そこには()()()()()()


「………………どうかしら」


 目には見えない。そも、魔力というのは目に見えない。

 けれど。ルフの魔力探知は、反応を示しているらしい。


 因みに私の目には見えている。魔力視があるから。


 脇を締めて、上へ向けた両手のひらの上に。


 魔力が溜まっていく、貯蔵庫(タンク)を造ったのだ。


「これは……っ!」

「えっ。えっ? なに? 俺わかんないや」


 ジンには悪いけど。


「…………取り敢えずは、形にはなったかしらね。このタンクは、私の実際の魔臓(エーテル)と魔力の糸で繋がってる。糸は魔腺の役割も兼ねている。このタンクに魔力を、侵食しない程度の出力で少しずつ貯めていくの。そして、魔法を使う時はこのタンクから魔力を引っ張ってくる。タンクから延びる魔腺を使うから、その分の肉体への侵食は無い筈でしょう?」


 そう。

 私は空中に、私の魔臓(エーテル)を疑似的に再現したのだ。


「しかもね。……容量は実際の魔臓(エーテル)より大きくできるのよ。だって心臓も肺も肋骨も、私の肉と皮も無いんだもの。時間を掛けて魔力を貯めたら、私は今よりもっと凄い魔法も使える筈。どうかしら、ルフ」

「………………何度も思いますし、言いますよ」

「ええ」


 ルフの顔は引き攣っていた。私は得意気になった。褒められていると分かると、やはり嬉しいものだ。


「天才です。本当に実用できればですが……」

「ありがとう。今日は一旦、これの維持に努めるわ。何が起こるか分からないものね。大量の魔力を貯める訳だから、暴発の危険性もあるわよね」

「その辺りの検証は必須ですね。付き合いますよ。というか、完成したら私にも教えてください。これ、全ての魔法使い族にとっての革命かもしれません……!」


 魔力は、使えば終わり。効果の終わった魔法は空気中で魔素として分解されて消える。

 けど。これなら魔力を貯められる。筈。


 普段から魔力を少しずつ貯めておいて、戦闘時に解放する。魔力侵食も防げるし、貯めた魔力の量次第では、男性の亜人や魔族とも互角以上に戦える筈。だって、私の出力が男性並みなら、後は魔力量と魔力侵食さえなんとかできればもう、全てが男性並みになる筈だから。


 シャラーラとルルゥのお陰で、思い付いた魔法。

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