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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
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第287話 逃げる訳にはいかない使命

 エデンに帰ってきた。今回は3年振りだ。終わってみれば短い旅だったかもしれない。

 なんというか、冒険はしていたいのだけれど、帰るのも大好きだ。


「姫様……!」

「ルルゥ」


 久し振りの再会で、抱き締め合うのが好きだ。ルルゥは約束通り、私を抱き締めてくれた。冒険や筋肉と無縁の、もちもちの腕、ふわふわの肌。


「ドラゴン討伐、並びにA級昇格、おめでとうございます……!」

「ええ。ありがとう」

「姫様」


 ずっとこうしていたかったけれど、ルルゥの方から離れた。そして、私と目を合わせる。


「長旅でお疲れのことと思いますが、大森殿にて大長老様と女王様がお待ちです。姫様と、ルフ様にお声が掛かっております。ご案内いたします」

「…………そう。分かったわ」


 ここはまだ港だ。別に今日この便で帰るとは伝えていない。手迎えはルフだけ。恐らく彼女は、レンの船の着港日に毎回来ているのだろう。そこまで頻繁でもないから。


「エル姉ちゃん」

「ええ。悪いけど先に家に戻っていて」

「うん……」


 ジンには悪いけれど、恐らくエルフという種族全体の話だから。

 まあ結局、後でジンにも共有すると思うけれど。


「分かってるよ。姉ちゃん達、種族のお姫様だもんな。普通、ただの島の子で、家名も無い冒険者の息子の俺じゃ気軽に謁見もできないくらい、身分が違う」

「そんなこと……」

「良いって。後で、皆で一緒にご飯を食べようよ。母さんもキノも、勿論ルルゥさんも一緒にさ」

「…………ええ。勿論。トヒアとキノにもよろしく言っておいて」


 身分、か。


 私はエルフの姫。


 どこまで行っても、変わらない事実。






◆◆◆






「お怪我やご病気は」

「無いわよ。大丈夫。船内で感染症の確認もしたわ」


 エデンにある森。中心の大森殿。エルフ族の王家が住まう樹の宮殿。

 大長老と謁見する為の広間に、ルエフと母が並んで座っていた。凄い光景だ。

 ルエフの背後に、彼の奥さんが3人居る。それぞれレイゼンガルド、イェリスハート、そしてレドアンからの砂漠のエルフだ。ゲンの事件の後に娶った、他の里のエルフ達。


 そして、その横に私の曾祖叔母(そうそしゅくぼ)であるフェルエナも居る。ルエフの孫で、私の祖母フェルナの母の、妹らしい。


「大長老様。女王様。エルル姫様とルフ姫様をお連れいたしました」


 ルルゥが畏まって、ふたりに告げた。


「ご苦労さまルルゥ。下がってください」

「はい。失礼いたします」


 そして、母のひと言を受けて退室した。


「よく帰ってきた。エルルにルフよ」

「……ええ。おじいちゃん。エルルはまだまだ元気に冒険を楽しんでいるわ」

「エルル。大長老に対してそのような」

「良い。エルフィナ。これはわしからエルルに頼んで呼んで貰っておるのじゃ」

「…………そうですか」


 ルエフと母が並んでいる。魔力量が凄まじい。ふたりとも賢者なのだ。つまりエルフの『到達点』。魔法使いとして、私が目指すべき頂点。


「早速本題に入ります。プレギエーラからの返信、そして招待状が届いています。今の所、プレギエーラはあなた達を歓迎していると言って良いでしょう」

「はい」

「あなた達もパーティとしてA級。つまり魔界入りの資格を得た。全ての準備が整ったと言えます」

「はい」

「ここからミーグ大陸までではありますが、エーデルワイスの使節船で送ります。出港はひと月後。それまで充分に旅の疲れを癒し、英気を養ってください」

「はい。船の手配、ありがとうございます」

「それと。プレギエーラについての詳しい情報と、外交のやり方。そして私達ニンゲン界のエルフが魔界へ伝えたいことを、私の口から直接あなた達に伝えます。同じ温度で、プレギエーラと接して欲しいから」

「はい」

「…………私からは以上です。エルルは後ほど、私の部屋まで来てください」

「はい。お母様」


 本格的に、エルフの姫としての使命が授けられる。私はこれから、逃げてはいけない。

 母は私を自由にさせてくれていて、その範囲内で依頼をしているに過ぎないからだ。

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