表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
286/300

第286話 皆身内みたいなもうひとつの家

 ドン。


 正午の『火花』を見て、私達は出航した。シャラーラからの激励の火花だ。いつ見ても鮮やかで、丁寧で繊細な魔力操作。


「綺麗ですよね。私、毎回楽しみにしてるんです」

「ええ」


 勿論今回も、レンの船だ。彼はラス港へ寄る度に毎回、会報を届けにシャラーラの屋敷を訪ねているようで、それが私達の迎えとなった。


「ルフェル。あなた、もしかしてふたり目?」


 草原エルフでありルフの妹でもある船内娼婦のルフェルは、確か私達が3年前にエデンを出る時にひとり目を妊娠していた筈だ。


「はい。こんな偶然もあるものですね。本来ニンゲンとエルフでは、子は授かりにくい筈ですが」


 そして今も、彼女は先日妊娠が発覚したらしい。このままエデンに戻って、また休養だ。


「いいなー! あたしもそろそろ子供欲しいなー!」

「ピュイア」


 甲板でシャラーラの火花を観覧していると、空からピュイアが降りてきた。胸、また大きくなったんじゃないかしら。


「ではイアちゃんも誰か船員と寝れば良いのでは?」

「いいの? ルフェルの男じゃん」

「別にそういう訳ではありません。というかイアちゃん、私の仕事知らないんですか」

「うん!」

「もう何年やってるんですか……」


 ピュイアは私より4つ上だけれど、出会った時から顔立ちは変わっていない。当時の私より幼く見える。身体も小さい。ハーピーはそういう種族なのだろう。

 もっとも翼を広げれば、誰より大きいけれど。


「えーでも、あたしが産むならレンの子が良いなあ」

「レンさんはニンゲンですよ? それに妻子持ち。諦めましょう」

「えー。ハーピーはそういうの気にしないけどなー」

「あなたが産みたいのなら、相手(ニンゲン)の価値観に合わせましょう」

「確かに!」


 この船も変わらない。どこか安心する。


「よおエルル」

「ルヴィ」


 甲板にルヴィもやってきた。褐色肌で金髪ボブカットの砂漠エルフだ。


「ドラゴン倒してA級になったってな。おめでとう」

「ありがとう。あなた達に教えてもらった砂漠のエルフの魔法、役に立っているわ」

「そんなら良かった。皆で飯食おうぜ。冒険の話聞かせてくれよ」

「ええ。勿論」






◆◆◆






「やあ。久し振りだなエルルさん」

「レン。少し老けた?」

「やめてくれ。俺はまだ29になったばかりだ」

「苦労してるんですよ。イアちゃんやルヴィちゃんの世話で」

「おいルフェル。ピュイアはともかくオレは世話掛からねえだろ」

「どうだか」

「あはは……」


 レンも、亜人の女の子達に囲まれて生活している。けれどハーレムではない。彼にはニンゲンの妻子が居るし、ルヴィは故郷に夫が、ルフェルは船員達との子供が居るからだ。


「姉さん。私もうふたり目ですよ。姉さんはどうなんですか」

「それはめでたいですねルフェル。私のことは心配してくれなくて結構です」

「ねえレンさん。気になってたんだけど、レンさんもアーテルフェイスなんだよね」

「ああ。俺はアーテルフェイスに拾われた孤児だからな。だからまあ、エルルさんとは別に血が繋がってるとかそういうのじゃない」

「ルフェル肉食べたらー?」

「私は食べませんと、10年くらい言い続けてますけど」

「そうだっけー?」

「オレも一度はドラゴンくらい倒してみてーな」

「じゃあ、来年エルックリンに?」

「いやいや、流石にそこまではなあ」


 わいわいと、賑やかな食事。多種多様な種族と性別が交じって。

 この船も、もうひとつの家みたいなものだ。実際ルフとルフェルは姉妹だし、私とレンも一応アーテルフェイスの家族。皆身内みたいなものだ。


 こういうのも、良い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ