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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
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第285話 さらりと渡される重い祈り

「そういえばシャラーラさん。ウチの師匠が訪ねてきた?」

「ああ。カナカナであるの。半年ほど前に来たぞ。よう伝えてくれたの。ジン」


 …………。

 魔力を操るにも私のリソースが……。

 いや、それでも可能なのか?

 寝ている時はどうなる?

 いや……。


「ヴァルキリーの名がここまで来た理由。黒銀がこの世界に存在する理由。……やつがれの友人の、想い。色々と判明した。貴重な会話であった。礼を言おうの」

「…………なら良かった。師匠、あんまりそういう話興味無いと思ってたけど」

「まあ、この世界に来たヴァルキリーもそれから時が経ち、伝承は殆ど途切れておる。だが、それでもなお、残っておったこともあった」

「そう?」

「ああ。顔がの。そっくりであった」

「師匠の顔? 師匠の先祖の、シャラーラさんの友人に?」


 試してみる価値はあるか……。けれど、私の手から離れたら……。うーん……。


「であるの。それだけでも、価値のある出会いであった。性格も似ておる。ヴァルキリーなのは間違いない。わっはっは」






◆◆◆






「エル姉ちゃん」

「わっ。えっ。なに?」


 考え込んでいた。急にジンの顔がぬっと現れて、驚いてしまった。


「さっきからずっと何かぶつぶつ言ってるけど」

「……ええ。シャラーラに言われてから、考えているのよ。私がもっと、魔法を使えるようになるためには」

「……なんだか俺には分からないけどさ。無理しないでくれよ」

「それは……どうかしらね。必要なら何度も無理するわ」

「まあ、姉ちゃんはそういう人だって知ってるけどさ」


 カナカナは、無事にシャラーラと会えたようだ。考えながらも、耳で会話は拾っているのよ。


「もうここを発ったのね」

「行き先は聞いておらぬ。あの者も生来の旅人であるの。まあ、いずれどこかで会えるであろ」

「……うん。もっと俺も成長して、もっともっと進んだ先で、師匠と再会できたら良いな」






◆◆◆






「いよいよ魔界であるの」

「ええ。デーモン捜索の依頼、忘れていないわよ」

「ふむ。ではやつがれが探しておるふたりのデーモンについて、話しておこう」


 確か、現在確認されているデーモンはシャラーラを含めて3人。

 残りふたりというから、全部で5人。

 7人居たけれど、ふたりは既に死亡している。ここまでが私の知っているデーモンの話。


「『光の線のアシェア』。そして、『魔の法のセヘル』。やつがれが探しておるふたりの名である」


 光の線のアシェア。

 魔の法のセヘル。


 シャラーラは火の花だったか。名前の前に付いているのは、その人を表す二つ名だろうか。


「ふたりのそれぞれの特徴は伝えるが、居場所の心当たりは無い。しかし、5000年経とうが簡単に死ぬとは思えぬ。この広い世界のどこかには居る筈である」

「……ええ」


 ゲンの話だと、魔界に居るデーモンはニンゲン界を滅ぼそうとしている明確な敵だ。

 けれど、私はそれを信じない。

 シャラーラの同族だからだ。会ってみないと判断はできないから。ゲンの言葉を真に受ける訳にはいかない。変な先入観は要らない。


「やつがれの遣いだと判断できる物も渡しておこうかの」


 そう言って、シャラーラは私に何かの鱗を渡した。

 私の持っている、ファイアードラゴンの逆鱗と似ている。

 白く光る金色の鱗。光の加減で、虹色にも見える。


「これは?」

「竜王レナリアの鱗――輝竜の雷鱗である」

「!」


 竜王レナリア。

 これから行く、レナリア大陸の名前の由来にもなった九種紀の女王。5000年前の、竜王。


「そんな貴重なもの……」

「良い。既に魔力は尽き、ただの鱗である。というかこの屋敷に他に何枚か保管しておる。1枚持って行くが良い」


 普通に。

 博物館に展示されているような、歴史・考古学的にとても価値のあるとんでもないお宝だ。そんなものを、さらりと。こんなA級成りたての冒険者に。


「これを持っているのはやつがれだけであるからの。デーモンに見せれば、分かるであろ」

「…………分かったわ。あなたの思いとして、大事に持って行くから」

「ああ」


 重い。

 けどそれがまた、私達を高揚させる。

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