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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
283/300

第283話 褒め合う素直で良好な仲

 それから。なんだかんだと旅をして。

 大山脈を越えてから1ヶ月半ほどで、イレンツまで到着した。

 行きほど急いでは居なかったけれど、バドハ経由よりは安全に旅ができたと思う。今度からこっちの道を使うのもアリね。


「おう。A級昇格おめでとう」

「知っているの? ありがとう」

「そりゃ会報廻ってくるしな」


 国境を越える時に利用するギルドも慣れたものだ。キャスタリアでの旅はこれが基本になる。

 イレンツまで来ればもう、帰ってきたような感覚になってしまう。


「イレンツは戦争していないの?」

「今はしていませんね。ですが隣国と睨み合っているのはどこの国も同じですよ。イレンツはキャスタリアの玄関口でもあるので、正面から対立する国は少ないですが」


 シプカ―バトハ経由の道よりも、スムーズに国境を越えることができたように思う。私達が手慣れてきたのか、それとも情勢が関係しているのか。






◆◆◆






 それからラス港まで、1週間。


「わっはっは! 今度は随分早かったの! エルル!」


 例の岬にて。シャラーラが既に屋敷の表に出ていて、大声で歓迎してくれた。

 白いオフショルダーキャミソールにデニムのショートパンツだった。裸じゃない。気まぐれか、私達に気を遣ってくれたのか。

 ちらちらと、恐らく水着が見えている。


「シャラーラ。久し振り。3年振りよね」

「わはは。3年など(やつがれ)にとっては3日と変わらん」

「お久し振りです。シャラーラ殿」

「お久し振り、です」

「わはは。ルフは変わらんがジンは背が伸びたか? 流石ニンゲンであるの」


 相変わらず『火花の岬』として観光地らしく、結構賑わっている。屋台なんかもある。


「さあ入れ。長旅で疲れておるであろ。今年は例年より暑いらしいでの。風呂の用意もある」

「……じゃあ、甘えるわね。もう汗だくで」


 シャラーラは私達が来ることを感知して、食事や風呂の用意をしてくれていた。彼女の魔力探知の範囲はどれくらいあるのだろうか。






◆◆◆






「ああ聞いておる。レンが会報や新聞を定期的に持って来るからの。ファイアードラゴンのメスの、狂化個体か。見事である」


 なんとお風呂上がりに果実汁のドリンクまで。この人、私達を歓迎しすぎじゃないかしら。

 本当に美味しい。初めて味わう果物だけど、甘くてさっぱりしていて、グビグビと飲んでしまう。


 リビングにて。ソファに座って報告をする。ギルドへよりも詳しく報告している気がする。

 狂化個体。あれはそういう名称なのか。


「ドラゴンに気付かれず先に発見したレイゼンガルドと、勇敢な騎士団達のお陰よ。私は余り活躍してないわ」

「そんなことありません。エルルが居なければ勝てませんでした。全滅でしたよ」

「それを言うなら……」

「わっはっは。汝らは良いチームであるの。そうか。男がひとりであるから、『褒め合う』チームになるのだな」

「えっ。そうなの?」

「何も不思議はあるまい。男は常に競争する。褒める時は裏がある時だの」

「…………そうなのかしら。ねえルフ」

「ふむ。一理ありますよ。俺の方が俺の方がと、例えば同じパーティの女性メンバーへアピールすることは。ただまあ、女同士でもマウントの取り合いは日常ですからね。相手を褒めて自分を貶しているように見せ掛けて自慢したり、やり方は男性より陰湿ですが」

「わっはっは。そんなパーティはB級にすら成れぬ。チームの不仲は即、全滅に繋がるからの」

「パーティの内部分裂は少なくありませんからね」


 私達の仲は良好だ。その気遣いは特に心労も無い。普通に、皆が皆を好きだ。


「……恵まれているのね。ありがとう」

「そういうところですよ。素直なエルルが好かれるのです。ねえジン」

「えっ。うん。……まあ」


 多分、ずっとこれからもこうだと思う。


「わっはっは」

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