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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
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第281話 教わったことのない武器

 手を見る。

 魔力を少し放出。

 また、手を見て。握ったり開いたり。


「どうしました?」


 不思議に思ったルフ。


「……私の魔力量と放出速度に、魔腺が耐えられなかったのよね。今後、どうしようかしらって」


 ドラゴン戦の時。

 全力で全開にして戦った。ありったけ、全ての魔力を使い切った。


 戦いの後、魔力を身体に流すと痛みが走るくらい、魔腺を傷付けていたと判明した。


 魔力が魔腺の内側を摩擦して炎症を起こしたり、擦り傷になったりしたのだ。


「たまに、そういう人は居ます。というか、エルルが典型ですね。自身の魔法の才能に、身体が追い付いていない。エルルの場合、魔腺が細く弱いということではありません。魔力量と出力が飛び抜けているのです」


 勿論、普段からそんなに飛ばして魔法は使わないけれど。今後……魔界で戦闘になった際、ドラゴンより強力な敵も現れるだろう。そういう時。

 一瞬躊躇してしまうかもしれない。


「魔腺は鍛えられるのかしら」

「可能でしょう。エルルはまだ成長途中ですから」

「私、もう23よ?」

「ニンゲンならそうですが、エルルは半分エルフですし。可能性はいくらでもありますよ」


 ガタン。ゴトン。

 汽車に揺られて。


 ふと向かいの席を見ると、ジンが寝てしまっていた。寝顔は子供の頃のままだ。


「……今より強くなるには、どうしたら良いかしら」

「ドラゴンの鱗を貫けるなら、もう威力は必要ないレベルですよ」

「なら、その威力を常に大量に出せる継戦能力が必要ね。戦いの度に、敵からの攻撃を受けていないのに自分の魔法で重傷になるのは、もうやめないと」

「…………!」

「えっ?」


 そう言うと、ルフは目を見開いて私を見た。


「エルルがようやく、自愛を……!」

「ちょっ。なによそれ」


 そして、まるで娘が初めて言葉を喋ったかのように嬉しそうな表情をした。


「成長しましたね……!」

「そ、そうなの? 私だっていっつも痛いし苦しいし。仕方のないことだと割り切っていたけれど、魔界の冒険では生き残れないかもしれないじゃない」

「そうなんですよ。エルルはもっと、後先を考えて戦うべきなのです。いつもいつも自殺かと思うほどギリギリまで自分を追い込んで」

「だって、そうでもしないと戦いにならない強い相手ばかりだったもの。スペックの不利を覆す為には、リスクは負うべきなのよ。その考えは変わらないわ」


 言いたかったのだろう。ルフを見てそう思った。もっと自分を大事にしろと。けど、私の覚悟も知っているから。尊重してくれていた。


「どうすれば良いのかしら」

「エルルの戦闘は基本的に魔法ですからね。魔法のエキスパートに訊くのが一番でしょう。もしくは、魔法以外の戦闘技術を身に付けること」

「エキスパート? 魔法以外の戦闘技術?」


 そして。ずっと考えていたからこそ。ルフの中には既に、答えがあったらしい。


「一応シャラーラ殿にも訊くとしても。デーモンとエルフでは勝手が違うかもしれません」

「そうね。古代魔法もよく分からないし」

「だから、エルフィナ様がいらっしゃいます」

「!」


 母から魔法は、実は教わったことが無い。あの頃の母は、私を政治や戦争から遠ざけようとしていたから。


「魔法については言わずもがな。そしてなにより、森林エルフとして外せないのは『弓矢』でしょう。今からでも、修得するべきだと思います」

「弓矢!」


 そうだ。

 森のエルフは弓を使う。なのに私は、一度も触ったこともない。


「ルフは使えるの?」

「いえ。私は草原のエルフですから。習うのはナイフ術です」


 そう言えばレドアンでルヴィにも言われたな。そうか。弓か。確かリーリンも使っていた。訊けば良かったな。

 母に、訊いてみよう。

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