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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第12章:託される愛と使命
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第277話 現役女王からの丁寧な手紙

「エルル様。こちら、お預かりしておりますお手紙です」

「ええ。ありがとう」


 最後に、受付に手渡された手紙。これが本題だ。

 母の筆跡で、エルフィナ・エーデルワイスと書かれている。間違いない。


 ドラゴン退治依頼の成功報酬と一緒に受け取って、支部を出た。町へ降りて、宿を取らなくてはならない。


 ここは、エルックリン山脈のクレイス高原という。広い高原に、牧歌的な町がいくつかある。

 宿を取ってすぐに、部屋で手紙を開けた。


「…………去年の夏に、オルス支部に預けたようね」

「9ヶ月ほど前ですか。仕方ありませんよ。エルフィナ様の居るオルスからここまでは、距離がありますから」


 よもや手遅れ、なんてことはないだろうか。少し怖いけれど、内容を確認する。






◆◆◆






 文章は、流石現役の女王というか。娘の私に宛てたものであっても丁寧なものだった。時候の挨拶から、私達の身の心配。エルフというより、オルス人のような文章だ。母もオルス生まれでオルス育ちだから、特別変わっている訳ではないけれど。


「要約すると、4つ。プレギエーラから返信が届いた旨。私達を受け入れてくれるようだという旨。そして、戦争を止める為の交渉材料について。後はミーグ大陸へ着いてからの案内図」


 レナリア大陸へは、ミーグ大陸の大運河を渡って向かう。ミーグ大陸までの船については手紙には無かったけれど、問題ない。アーテルフェイス商会の船に乗せてもらうだけだ。


「期限は大丈夫なのですか?」

「ええ。数年以内なら大丈夫そうよ。まあ、ニンゲン界から魔界へ行く時点で長旅だし、そこは大雑把に見て貰わないとね」

「あー。亜人って寿命長いから時間間隔もゆっくりしてそうだよなー」


 荷物を降ろしたジンが呟いた。確かにそうかも知れない。あまりのんびりはしていられないけれど、焦って急ぐ必要も無いのだ。


「まあ、大氷壁(ここ)から大運河(そこ)まで、つまり私達が今から進む道は、ニンゲン界の端から端までですからね。半年で着けば早い方でしょう。エルルが途中で寄り道しない限りは」

「しないわよ」

「ははっ。姉ちゃん寄り道好きだもんな」

「えっ。そんな風に思われているの?」

「間違いなく寄り道好きですよ。レドアンでの旅の時だって――」


 ともかく、概ね予定通りだ。

 座学の試験については、いつでも受けられるらしいから。

 この町で少し勉強して、とっとと取ってしまおう。






◆◆◆






「ではエルル。今夜はどうしますか?」

「そうね。療養中に思い付いて、やってみたかったことがあるのよ」

「?」


 今夜はどう、とは。つまりジンのことだ。私が完治するまでは、ずっとルフが相手をしてくれていたのだけど。


「姉ちゃん?」


 ベッドに座る彼を押し倒す。

 キスをする。


 なんという分かりやすさ。これだけで彼は期待で膨らんでしまう。


 毎日毎日飽きないのだろうか。

 まあ私だって、飽きないのだけれど。


 ああ。思えば部屋をひとつしか取っていなかった時点で、彼は期待していたのだろう。


 欲を言えば、もう少し自分から来てくれても構わないのだけれど。


「なるほど。まるで幼児のように甘えさせる遊戯ですね」

「そう。好きかなと思って」


 膝に彼の顔を乗せる。彼の所在なさ気な手を取って、私の胸へ。


 もう子供ではないと言うかしら。でも私にとっては、思い返すのはあなたの幼少期。


 この胸だって、無邪気に触っていたじゃないの。


「うっ……」


 早い。

 効果は抜群だったようだ。

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