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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第11章:実力を示す戦い
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第269話 何もかも出し尽くす戦い

 ドッ。


 地面が無くなった。必死に、探知魔法で状況を把握する。


 どうやらドラゴンは地面を抉りながら、その尻尾で私達の防御ごと空中へ打ち上げたらしい。


 体勢を。早く。整えろ。方向を。


「ブレス!」


 誰かが何か叫んだ気がする。ブレス。ブレスだ。また、あの破壊力を伴った炎の津波が来る。そうか。打ち上げて身動きを取れなくしてから、焼き払うつもりだ。


「るゔっ!」

「――!」


 ルフ、と叫んだつもりだけど。伝わっているか。ふたりで球を作らないと、熱を防げない。


 ドカン。

 何故、ここまで衝撃があるのか。ドラゴンの行動ひとつひとつで、私達は容易く吹き飛ばされる。


 離れてはいけない。風を。ドラゴンをこの場に留めておかなければ。


「……ぇちゃん! エル――ゃん!」

「ぅ…………っ!」


 私達は球の中に居る。だから、バラバラにはなっていない。ドラゴンのブレスと私の風に挟まれて、上へ飛んでいく球の中で、ジンが私の肩を掴んで揺らした。


「…………げほっ! ……だ、大丈夫よ。耳が、よく聴こえないの。ルフは?」

「…………! …………!」


 駄目だ。3人で意思疎通ができないといけないのに。

 ジンはまだ傷も浅く、戦えそうだ。ルフは。


「……あれ?」

「良かった。聴こえますか? 局所的に治癒魔法を掛けました。右の鼓膜はまだ破れていないようで安心しました」


 自由落下が始まる。

 束の間の、作戦会議。


「私はまだ少しは動けます。魔臓加圧(エーテル・ブースト)を全開にすれば、あと2発はドラゴンの攻撃を弾けるでしょう」

「…………良いわ。私も攻撃する。氷柱は溶かされるから、小石ね。あの鱗を穿つ」

「俺の鉄剣と同じくらいの硬さだ。いける?」

「ええ。そんなに多くは撃てないけど。可能よ」


 誰も、リタイアを言い出さない。誰も、お互いに休めと言わない。


 当然だ。ここは、絶対、引けない。逃げない。

 全員まだ、五体満足だ。


 私達はまだ戦える。


「飛ぶつもりだ! こっちへ来る!」

「抑える……!」


 飛ばせてはいけない。この場に縫い留めるのが私達の役目。


 風よ。

 そう。咄嗟に出るのはやっぱり、一番慣れ親しんだ風魔法。

 何もかもを出し尽くせ。


 風の塊を、ぶつける。飛ばせないように。


「…………駄目っ!」

「続けて!」


 強すぎる。私の全力が。ドラゴンに効かない。

 ジンが、私達の球から飛び出した。フォルトゥナで穴を開けたのだ。地面へ向かって急降下。


「ああああああっ!」


 その鉄剣をドラゴンの脚に突き刺して、地面に縫い付けた。


「!!」


 直後に吹き飛ばされるジン。けれど、一瞬、飛ぶのを止められた。


「ふーーっ!」


 もっと、魔力を。もっと風を。


 私は六強の三、エルフィナ・エーデルワイスの娘だ。


 ドラゴンの注意を引く?


 殺せ。私が殺すんだ。


 こいつは私の人生()にとって必ず超えなければならないものだ。


 ここで、ドラゴンの口がこちらへ開いた。


 咆哮だ。殆ど聴こえない。けれど、響いてくる。歯を食いしばって耐える。

 怒りが。憎しみが。私達へ向けられている。


 望む所だ。 

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