第251話 取り敢えず進んだ一歩
聞けば。
冒険者パーティの内で男女が居ることは別に不思議なことではなくて(危険を冒すなら女性は少ない傾向だが)。
冒険の途中で、衛生面から安全な水場が確保できれば身体を洗うことなど当たり前で。
安全面から、お互いに離れて水浴びをすることは望ましくなくて。
つまり、信頼できる仲間であるなら、裸くらい見慣れていて、特に何もないのだとか。
お互いに日々命を預けているのだ。当然といえば当然か。
これはルフの、ヒューザーズ時代の体験談だけれど、他のパーティでも概ね同じようなものだという。
私はジンを信頼していないのか?
そんなことは無い。あり得ない。
それとこれとは別の話だ。
ではジンは?
彼は私を、私達を。その観点からどう思っているのだろうか。
◇◇◇
「朝です……が。あまり眠れなかったようですね」
「…………ええ」
昨日は興奮した。凄かった。
手を見る。握る。開く。
まだ、あの熱と感触が記憶に強く残っている。
私達は、合計で3回。彼の射精を促すことに成功した。3回とも手で。そして。
彼は私達の胸を触り、揉むことに成功した。
たったそれだけ。だけど、私にとってはとても刺激的な体験だった。
ぶっちゃけて言うと、楽しかったのだ。
「どうでした?」
「……凄かったわ。あれ、どうなっているの?」
「あれが男性です」
「本当に不思議だわ。あんな……。ねえ」
「ふふふ。さあ起きてください。山を降りますよ」
ここは秘湯にある小屋だ。随分人が来ていないらしく荒れていたが、私達の魔法があればすぐに掃除と修復は終わらせられた。
「ん……」
朝日が挿し込んでくる。
部屋もベッドもひとつ。ジンはもうとっくに起きて外に居るようだ。あの興奮のまま一緒のベッドに寝たけれど、彼は眠れたのだろうか。
「……私は男性を克服したわよね」
「あとはセックスですね」
「…………それがあったわね」
「昨日『気持ちよくなった』のはジンだけですよ?」
「あ……」
気付く。
『楽しかった』という感想は、良くないのではないかと。
「ルフにはまた我慢させてしまったのね」
「いえ、最後はエルルがひとりで楽しそうにしごいていたので私も満足といえば満足ですよ」
「…………男性は、少し分かったわ。では女性はどうするの?」
「…………昨日、最中にエルルの股間はどうなっていましたか?」
「……………………どう……?」
ルフの質問に、首を傾げる。顎を摘む。思い出す。思い返す。考える。
…………?
「はぁ。先はまだ長いですね。彼に触られた時、くすぐったがっていましたもんね」
「………………ルフは気持ち良かったのね」
「まあ、慣れない下手な手付きだったのでそこまでですが。ではこれから並行してエルルの開発もしなければなりませんね」
「えっ……」
セックスは知っている。交尾だ。人もそれを行うのだと知ってはいる。
問題は、私に全くその想像がつかないところだ。
セックスは未経験だ。だけど。
私はもう。
「まあ、ゆっくりで。少しずつで良いのです。昨日でかなり進みましたから。しばらくは、ジンの射精を手伝うだけで良いのです」
「…………分かったわ」
「後は、ジンから要望を伝えてくるのを待つことですね。彼は紳士すぎる。もっと欲望に忠実で良いと思いますがね。誰に似たのやら」
取り敢えずは。
一歩、進めたのだ。今はそれで良い。




