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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第10章:克服する心と身体
244/300

第244話 頑なに強い謎の技

 朝食後、ペルソナの待つ道場へ皆で向かう。


「まあ理由はなんでも良い。丁度良いから稽古付けてもらえ。親バカで悪いが、『ニンゲン界最強のニンゲン』だ」

「……!」


 ガラリ。扉を開ける。

 ペルソナは既に道着に着替えていて、汗をかいていた。ウォームアップも済んでいる。


 緊張感が張り詰める。


「……ペルソナさん」


 ジンが彼の向いに立つ。


「ああ。俺はニンゲンにして六強まで上り詰めたが、レインひとりに振り向いて貰えない。なのに君はまだ修行中の身なのにあんな綺麗なエルフさんを、ふたりも! それは許せん! だから腹いせに決闘だ!」

「…………」

「…………」

「…………」


 ペルソナが高らかに決闘を宣言した。


「……そういうとこなんよねえ」


 レインがぼそり。


「うん、まあ。……まあ、理由は何でも良い。ほら、てめえらこれ使え」


 カナカナがふたりに竹刀を投げた。それぞれ受け取って。構える。

 同じ構え。


「母よ! 魔導術は使っても良いのか!?」

「えっ。俺ニンゲンだよ?」


 変なことを言った。魔導とは、対魔法の戦闘手段。つまり対魔法使い、対亜人の戦闘手段だ。相手が魔法を使わなければ発揮されない。

 ニンゲン同士の戦いには発揮されない。


「……ああ。教えてやれ」


 けれど、カナカナは不敵に笑っていた。


「よし! 掛かってこい!」

「……分かった」


 まず、ジンが仕掛ける。単純な剣術勝負なら、体格の差でジンが有利な筈だ。


「ふんっ!」

「!?」


 筈だけど。


 ペルソナは、虚空を斬った。全く当たっていない。隙が出来た。罠かと疑う程の隙。勿論狙うジン。


 次の瞬間。


 ジンが体勢を崩してたたらを踏んだ。


「うおっ!?」

「ふんふん!!」


 残った右足を刈る。すると面白いように回転。


「うはっ!」


 空中で身動きが取れなくなったジンに。


「せいっ!!」

「!!」


 横薙ぎ、一閃。

 盛大に吹き飛び、道場の壁を突き破って境内に弾き飛ばされた。


「ジン!」


 追い掛ける。彼は気絶していた。あの丈夫なジンが。


「…………なんだ、これだけ弱くともふたりの美人エルフさんに……。くそう。母よ! ジンの修行、遅れていないか!?」


 私がジンの所へ着いた時、ペルソナは尚も悔しそうにしていた。

 彼は強い。誰が見ても明らかだ。けれど。彼が望むのは強さではなく、ひとりの女性なのだろう。


「…………遅れてねえよ。寧ろ早い方だ。ジンがここへ来たのは14の時だぞ。生まれてからずっと魔導に触れてきたてめえと一緒にしてやるな」

「だがこれでは叩き足りない!」

「そもそも嫉妬の言い掛かりの逆恨みだろ」

「それはそうだが!」

「自覚あんのか」


 何だったのだ、あれは。

 最初にジンを崩した技。ジンに触れてすらいなかったのに。

 何も見えなかった。何も感知できなかった。魔法ではないのは確かだ。


「…………じゃあ、ペルソナ。次は私とよ」

「!」


 眠るジンをひと撫でして、立ち上がる。彼が負けたのだ。では私が仇を取らなければならないだろう。私はジンの、パーティリーダーなのだから。

 それに、気になる。あの謎の技をもう一度見たい。観測したい。受けてみたい。


 カナカナに効いた魔力弾は、ペルソナにも効くだろうか。試したい。


「駄目だ! 俺は女性とは戦わん!」

「はっ?」


 のに。

 出鼻を挫かれた。ペルソナは竹刀を置き、両手を使って胸の前で大きく(バッテン)を作った。


「どうして? 私はジンより強いわ」

「関係無い! 俺は女性とは戦わん! これは絶対だ!」

「怪我しても誰も何も言わないわよ。私は冒険者。そしてエルフ。あなたはニンゲン。私を女として扱わないで良いわよ」

「俺は! エルフさんが好きだし! 女性とは戦わん!」

「………………」


 頑なに。

 (バッテン)を崩さない。大声で。全く戦意を感じない。本当に戦う気が無い。話にならない。


「カナカナ」

「ああ。諦めろ。こいつはマジでこうだ。無理矢理殴りかかっても絶対に抵抗しないぞ。時間の無駄だ」

「………………」


 無理らしい。ならばどうやって。

 私は、『六強の六』の実力をきちんと、もっと、この目で見たいのよ。


「まあ、ペルソナよ。これじゃエルルが可哀想だ。あれだけもう一度見せてやれ。指導なら良いだろ」

「む。母が言うのなら。ではエルルさん、こちらへ」

「?」

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