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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第10章:克服する心と身体
239/300

第239話 楽しくなる魔界の魔法

 翌週から、早速レインに誘われた。


「いや〜。丁度ええ魔法使いがおるやんかと。思ったんよ〜」


 カナカナに勝利して、晴れて合格した私は。ジンの修行を手伝うことになる。


 ルフは欠席だ。何か、私が寝ている間にカナカナと話していたのは知っている。それが関係しているのか。


 道場にて。レインと並んでジンと相対する。


「……姉ちゃん」

「そうね。ジンが強くなる為なら協力は惜しまないわ。何をすれば良いの?」


 魔導術の修行はまだまだ半ばらしい。けれど、彼は今剣を握っている。徒手での魔導術は修めたということだろうか。いずれはカナカナのように、あの肉厚の魔導剣を扱うことを許可されるのだ。


「今やっとるのは、魔界エルフの戦闘用攻撃魔法。見とってな」


 レインが、ジンの方へ右手を翳した。魔力が集まる。これは、何らかの生成魔法の動きと構えだ。火か水か、氷か。


鉄塊擬似生成魔術(アイアンリクリエイト)

「えっ」


 鉄塊が、レインの右手から出現した。


加工(プロセス)――弾丸(バレット)


 塊はみるみる削られていき、20個ほどの小さな弾丸となった。


射撃(シュート)!」

「!」


 射撃魔術。目にも止まらぬ速さで、ジン目掛けて向かっていく。


「うおあっ!」


 それを、なんとか弾いた。


「……とまあ、こんな感じやね」

「………………凄い」


 生成魔法(ジェネレイト)は、高度な魔法だ。まずは空気中の水分を水塊にするところから練習が始まる。

 それを、鉄塊だなんて。


「…………消えたわね」


 ジンが弾いた弾丸を追う。床や壁に当たった後、煙のように魔力の粒子となって消えた。


生成(ジェネレイト)ちゃうねんよ。これは擬似生成(リクリエイト)。魔力で『鉄』を擬似的に再現しとって。やから、うちのコントロールから離れたら消えるんよ〜」


 凄い。

 これも、今までの私には思いもよらなかった魔術だ。こんなこともできるのか。本当の鉄ではなく、術者のコントロール下に限り鉄を再現する魔術。


擬似生成(リクリエイト)。それに、変形(コンバート)ではなかったわね。確か、加工(プロセス)?」

「別に変形(コンバート)でもええねんけどね〜。うちの故郷やと加工(プロセス)なんよ。やりやすい方でええと思うわ〜」


 魔力で。

 擬似的に再現。


「………………」


 同じように手を翳す。鉄。鉄……。


「……すぐにできる気はしないわね。もう一度手本を見せて貰えるかしら」

「はいな」


 魔力の流れを見るのだ。それを再現すれば同じことができる筈。魔法も魔術も、基本的な原理は同じなのだから。


鉄塊擬似生成(アイアンリクリエイト)


 同時に。

 鉄塊を出現させた。


「………………はぁ」


 私の鉄塊を見て、レインが目を丸くした。


「ルフはんから聞いとったけども。ほんに天才やねえ。これ、村の子やと修得に大体4〜5年掛かるんやけど」

「簡単ではないわよ。けど、生成魔法(ジェネレイト)に近い魔術だし、私はもう10年も魔法を使っているし」

「いうても、凄いわぁ。普通は、本物の鉄塊を毎日触ったり眺めたりして『鉄』の感覚を養うもんやねんよ」

「流石エル姉ちゃんだ」


 褒めてくれるのは嬉しいけれど、本番はここからだ。

 擬似的な再現だから、気を抜くと消えてしまう。『鉄』を保ちながら、形を変えなければならない。


「……変形(コンバート)


 いきなり弾丸は無理だ。

 大きな針になった。


「では、撃つわよ」

「えっ。うん!」


 射撃(シュート)


 私の鉄針は、緩やかに飛んでいって。

 ジンに簡単にはたき落とされた。


「……遅い」

「練習が必要ね。変形(コンバート)にも時間掛かってる。ジンの修行の手伝い、まだできそうにないわ」


 というか。

 魔界の魔法の方が楽しくなってしまった。

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