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エルフの姫  作者: 弓チョコ
第10章:克服する心と身体
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第237話 再び対峙する強敵達

 夏の終わり。


 私はまた山の中腹にある広場で、カナカナと対峙している。


「復活早々あたしに再挑戦か。身体鈍ってねえのか?」


 自信満々、余裕が見えるカナカナ。魔導剣は地面に突き刺している。抜く気は無いらしい。

 以前は剣を持ってきてすらいなかった。これは、『もしかしたら使うかもしれない程度には警戒しているけれど、結局使わないだろうな』という彼女の考えだろう。


「………………」


 集中。

 この半年で、何かが確実に変わった。その実感がある。原因も結果も分からないけれど。

 ルフもジンもレインも見に来ている。ルフは、心配そうに私を見ている。


「じゃ、始めるか。いつでも良いぞ」


 カナカナが、黒銀の手袋で構えを見せる。

 私も頷く。


 ドン。


「!」


 カナカナの首が後ろに飛んだ。


「は!?」


 ジンが驚いて叫ぶ。


 魔力の弾。初速はカナカナでも見切られない。それが分かって良かった。


「…………ちっ。なるほどな」


 カナカナは持ち堪えた。鼻血を垂らしながら、姿勢を戻す。構えは顔を防げるようにやや上で。


 ドン。


「うっ!」


 脚。

 弾かれたように彼女の左足が浮く。魔法的足払いだ。体勢が崩れたら畳み掛ける。


「…………へっ」


 崩れない。体幹が凄い。


 だけど。


火の玉(ファイアーボール)

「おう来いよ」


 既に上空に、144個の火の玉を設置し終えた。最高速で、降り注がせる。


俄雨(スコール)!」

「!」


 隙間なく、直上からの爆撃。避けることはできない筈。


「すげ……」


 ジンは驚いてばかりね。

 煙が晴れる――


「!」


 直後、私の目の前に現れた。剣を持っている。これでさっきの火の玉を防いだのだ。ようやく抜かせた。


「次はあたしの番だ!」


 袈裟斬り。魔力を切り裂く剣。魔力強化での防御は期待できない。避けるしか無い。


 試してみたいことがある。


 ガツン。


「んあ!?」


 フーナ直伝、土魔法。地面から柱を作り出してせり上がらせる。剣を弾いて起動を逸らすことに成功した。


 魔力は寸前で供給を止めた。つまり、この土の柱は魔法で作ったのに魔力が通っていない。


「……ほう」


 即座に理解した様子のカナカナが、にやりと笑う。


 柱を6つ生成して彼女へぶつける。けれど、もう見切られた。剣術自体が達人だ。


 ドン。


「ぐっ!」


 魔力弾。腕を上げてガードされる。けれど、その腕には相当なダメージが入った筈。


 続けて風の魔法。私ではなく、彼女を中心に結界を張る。


「おらぁ!」


 瞬間斬り裂かれる。駄目だ。これは通じない。


「っ!」


 隙を晒した。分厚い剣の腹で、視界が覆われた。

 叩き付けられ、吹き飛ぶ。


「エル姉ちゃん!」


 ジンの叫び。


「やぁっと一撃入れさせてもらったぜ」


 カナカナの声。


 全て聴こえている。


 吹き飛びながら、後方へ加速。衝撃を軽減して、反転。手を付いて飛び上がる。


 たらり。額から血。咄嗟にガードした右腕は感覚が無い。全身泥だらけ。


沼生成(スワンプジェネレイト)

「んお!」


 カナカナの立つ場所は私の立っていた場所。水魔法と土魔法の混合魔法。粘度の高い沼が彼女の脚を止める。


 ドン。


「ぐっ」


 魔力弾。


 ドン。ドン。ドン。


「はっ。慣れてきたぜ」


 一斉射撃。カナカナも魔導剣で応戦。いくつかは防がれる。

 これは速度こそ速いけれど、これでノックアウトには至らない。改良が必要か。


 ドン。

 足音。


「!」


 カナカナが、魔力弾の弾幕を対処しながら沼を攻略していた。

 バケモノか。この人。


 再び、目と鼻の先。彼女の剣の間合い。


「また避け――」


 笑っている。楽しいのだろう。戦いが。敵が。強敵が。

 私は彼女にとって、剣を抜くほど強敵足り得た。


 抱き着く。


「!?」


 間合いの内側。ここに剣は振れない。


魔力爆弾(マジック・ボム)


 全身から、威力のある魔力を放出する。


「!」


 私自身が、爆弾となって。

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